暴力団同士の抗争で街を追われることになったチェギュとその子分達は、人里離れた山奥の古寺に逃げ込んだ。来るものは拒まぬと住職に1週間の滞在を認められたのをいいことに、行く場も無く、寺でのうのうと過ごす暴力団一味にシビレを切らした修行僧は、彼らに様々な対決を挑み、即刻寺から追い出そうとするのだが…。
 コリアンシネマウィーク2002で上映された『達磨よ、遊ぼう』は、全く異なる価値観を持った二つの集団が、衝突を繰り返しながら調和へといたる姿を、コミカルかつちょっと感動的に描いた作品だ。今回の上映に合わせて来日したパク・チョルグァン監督は、『カル』などの作品の演出部として経験を積み、本作が劇場用映画デビュー作となる。インタビューを終えると、上映中の劇場に入り、日本の観客の反応を見ていたパク監督だが、多数の観客とストレートな反応に、満足気に眼鏡越しの瞳を細めていたのが印象的。





Q.今回の作品はお坊さんと暴力団という対立構造が面白いですが、このような作品を作られた経緯は?
——シナリオ自体は私が書いたものではなく、数人のライターの合同によるものです。映画の中では、お坊さんと暴力団と言う二つの対立を描いてますけど、たまたまこの二つの集団になっただけで、それは他のものでもよかったのです。韓国の話というより、日本やアメリカなどどこでも起こりうるような、二つの異質の集団が対立を経て一つに融合していくという、人間的な温かさを描きたかったのです。そういう意味では、ヒューマン・コメディといったタイプの作品だと思います。

Q.日本でもお坊さんの生活を扱った、周防正行監督の『ファンシイダンス』という作品がありますが、ご覧になられてますか?
——『ファンシイダンス』の存在は知っていましたが、実際に作品を観たのは『達磨よ遊ぼう』の撮了後のことです。確かにどちらも、お坊さんを題材にはしていますが、方向性はどちらも違うと思います。私の作品は、お坊さんを素材にしたというよりも、二つの集団の対抗意識から、いかに理解し一つになっていくのかを描きたかったのです。勿論『ファンシイダンス』も優れた作品だと思います。私の映画はどちらかというと、ハリウッド的な娯楽要素の入った作品ですけど、『ファンシイダンス』は芸術的な要素が強い作品だと思います。

Q.暴力団の兄貴分チェギュ役に、パク・シニャンさんを起用された理由は?
——パクさんはチェギュ役に最も似合っている役者さんだと思いましたし、素顔でも重なる部分が多かったのでキャスティングしました。

Q.主役に限らず、お坊さん達にしろ暴力団の人達にしろ、非常に個性的な面々が揃っていたと思いますが、キャスティングで注意された点は?
——一番気をつけた点は、二つの集団があるわけですけど、暴力団、僧侶ともそれぞれその集団がそれらしく見え、マッチしているかどうか、また役柄を越えた部分でも一つになっていけるかどうかといった部分ですね。その結果は、いい結果が出たと思っております。

Q.先程ご自身の作品は、ハリウッド的な娯楽要素の作品だとおっしゃられましたが、お好きなコメディ等はありますか?また、この作品はハリウッドでリメイクされるそうですが?
——先程の話はハリウッド娯楽作品的な要素が詰まっているという意味で言ったので、個人的にはヒューマニズム的なコメディというものを目指しています。作品で言えば『ソナチネ』という作品が、そうしたジャンルの作品だと思いますし、気に入っております。アメリカでのリメイクは、『天使にラブソングを』作ったスタッフが、MGMスタジオでシナリオを進めているようです。ハリウッド俳優による、リメイクになるそうです。






Q.劇中、僧侶と暴力団が競い合う場面の一つで、潜水競争がありましたが、ここで競い合う二人が共に海兵隊出身で、互いの年次が判明すると態度がガラッと変わるのが可笑しかったのですが、このあたりの年上を敬う感覚は、韓国では実際にかなり強いのでしょうか?
——韓国では非常に強いですよ。学校であれ、軍隊であれ先輩後輩の関係は、それが規律化されているかのように厳しいですし、それを守っていく風潮はありますね。

Q.やはり競い合う場面で、数を数えるゲームがありましたが、あれも韓国では一般的にはやっているものなのですか。また、役者さんたちも、ノリノリな感じでしたが、撮影現場はいかがでしたか?
——あれは韓国で特に酒席等でよく行われるゲームで、負けた人にドンドン飲ませるみたいな感じでやってますね。ですのでこの場面のために、ちょっとした会食等があったときには、練習の意味を含めて楽しく遊んでみたりしましたが、実際の撮影でも日常生活の延長のような感覚で楽しく撮れましたね。

Q.この作品で一番お気に入りの場面はどこですか?また、次回作の予定等はいかがですか?また、今後一緒に仕事をしていきたい役者さんは、どなたでしょうか?
——一番好きな場面は暴力団のリーダー、チェギュと修行僧のリーダー格チョンミョンが台所でふざけあいながら、互いを理解し友人になっていく場面です。
次回作は義賊を主人公にしたヒーローものを作ってみたいと思っています。“イルチメ(一枝梅)”という、韓国の伝説のヒーローの現代版で、シナリオを執筆中です。一緒にやってみたい俳優さんは、今回と同じくパク・シニャンさんと、もう一度仕事をしたいと思っています。

Q.最近韓国では、暴力団を素材にした映画が増え、ジャンルとして確立されたようにも思いますが、今後もこの流れは続くと思いますか?
——商業的な目的で暴力団を素材にしているというよりは、面白い部分を引き出せるという意味で、素材にしている監督が多いのだと思います。ハリウッドの場合は、ギャング映画というものが、一つの素材として確立されていますし、そういう役が専門のイメージの役者さんも増えています。韓国でもそうした傾向は出てくるかと思いますよ。あまり偏りすぎる傾向はよくないかもしれませんが、一つの暴力団の映画が一つのジャンルとして一般化されることは、個人的にはいいことだと思います。

執筆者

宮田晴夫

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