第15回の記念大会となった東京国際映画祭。リニューアルで誕生した新部門“アジアの風”は、ホラーオムニバス「Three」で幕を開けた。
「Three」は、タイトルから察する通り異なる国の3人の監督によるもの。『ラヴソング』などのヒットで90年代後半の香港映画界をリードしたピーター・チャン。1999年の東京国際映画祭コンペティションにも参加した『ナン・ナーク』の本国での大ヒットでタイ映画界のリーダーとなったノンスィー・ニミブット。そして、日本でもリメイクされた『クワイエット・ファミリー』や『反則王』で知られる韓国の奇才キム・ジウン。このアジアでいずれも注目される3人が、“死の向こう側にあるもの”というテーマで、三人三様の短編を持ち寄ったものだ。
 今回は、チャン監督、ニミブット監督、そして韓国からはプロデューサーのオ・ジョンワン女史が撮影で多忙な監督の代わりに来日し、ティーチインのステージに立った。






 夢のかなう場所と名付けられたニュータウンでの夫婦の悲劇を描いたキム・ジウン監督“Memories”、伝統芸能の人形劇を題材にしたニミブット監督“The Wheel”、死んだ妻の蘇生を信じて遺体の世話を続ける男の物語チャン監督“Going Home”と三者三様のオムニバス。
 アジア各国が協力することでアメリカ映画に勝てるような映画が作れるようになるのだろうか、というインドネシアの記者から質問に対し、オ女史は、
「この映画は、まったく個人的な友情から始まった話だった。アジアの映画は目覚しい発展を遂げ、世界の中でも注目されるものになった。が、私たちが同じアジアに住んでいながら、あまりにもお互いの国のことを知らないのではないかと思った。いつか映画の仕事を一緒にとピーターと話すなかで、危険かもしれないけれどオムニバス映画を撮るというアイデアが浮かんだ」と、ニミブット監督も
「こういうチャンスをずっと待っていた。4年前にピーターからこの話が持ち込まれた。これは別にどこの国に勝とうという映画ではないが、私たちの友情をベースにしたアジア映画の協力と将来への発展を願った映画だ」と語ったが、チャン監督は
「最近10年を見ると、ハリウッド映画の占有率はアジアでも高く、そのことはアジアの映画産業を不健康な状態にしている。アジアは各国で人口が限られているが、アメリカは2億人いるので資金力もあり、いい映画を作ることができる。それに対抗して、ヨーロッパは経済的に統合し、ECで国々も統合しようとしている。アジアは、いま、文化的経済的にこれから協力できる体制ができてきたと思う。だから、このようなコラボレーションで、アジアの映画産業を引っ張っていけるのではないか」と、欧米を意識しながらアジア映画の未来を見ていることを言明した。
 今回3人の監督になったが、チャン監督は
「四ツ谷怪談に寄せて、4つの監督で作るホラーにしたかった。日本の監督も交えてやりたかったのだが、なかなかパートナーを見つけられなかった。将来は、ぜひ4人で。このジャンルは日本は強いはずだし」と今後の希望を述べていた。

執筆者

みくに杏子

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