梁石日の傑作長編小説を、日韓合同チームにより完全映画化した『夜を賭けて』が、今月末より正月映画の先陣を切ってロードショー公開される。58年の大阪、兵器工場跡地に忍び込み鉄屑を運び出し売り払うタフな連中“アパッチ”の姿を描いた本作で、がむしゃらに生きる在日に扮した個性的な日本の役者陣と共に、朝鮮戦争で孤児となり大阪にやってきた初子に扮し、山本太郎演じる義男に対する一途な想いを凛とした存在感で演じて見せてくれたのが、本作が本格的な映画初主演となる、ユー・ヒョンギョンだ。
 作品の劇場公開を目前に控えた11月、キャンペーンのため来日した彼女にインタビューをする機会を得た。本作のリハーサルのために初来日してから、取材・録音などで今回が5度目の来日となる。素顔の彼女は、映画の中の初子に比べいたって華奢な印象だ。「撮影から1年ほど経って、あの頃より痩せましたから」と笑顔で答え、好きな俳優として窪塚洋介の名前をあげ目を輝かせる様は、まさに自然体の19歳の女の子。しかしそのギャップこそ、彼女の役者としての資質の証に他ならない。本作を機に、日本でも幅広い人気を得るであろう彼女の声をお届けしよう。

$navy ☆『夜を賭けて』は、2002年11月30日(土)よりシブヤシネ・アミューズ&新宿武蔵野館にて熱血ロードショー!!$







Q.本作にはオーディションを受けて参加されたそうですが、その際この作品をやってみたいと思われたポイントは?
——日本に住む在日の人の暮らしというのを、全く知らなかったので、それを知ることができるいい経験だということと、自分が映画に出ることによってそうしたことを皆さんにお伝えできたらいいなと思いました。在日の方については、テレビのドキュメンタリー等で見たことはありましたが、同い年くらいの世代では、その存在も知らない人が多いです。ですから、こういう機会は本当に大切なことだと思いますよ。それと同時に、映画の中で描かれる一途な愛に関しても、皆さんに見てもらいたいと思いました。

Q.初の主演作品が、日本と韓国との合作となったわけですが、コミュニケーションや台詞で大変だったことはありますか。作品を見ていても、大阪弁の台詞が堂に入っているのに感心させられたのですが。
——スタッフとの意思の疎通がしづらいというのは、やはり大変なことですし苦労しましたが、一つの作品を追及し作り上げていくということがあったので、できたのだと思います。
大阪弁の台詞は、録音してもらったものを繰り返し聞いて、イントネーションをまる覚えしたんですよ。

Q.まる覚えですか!すごく感情がこもっていましたよ。今回の撮影は韓国に組まれたセットで、合宿のように共同生活をされながらの撮影だったそうですが、いかがでしたか?
——辛かったということは無かったですよ。地面がぬかるんでいたりと、普段生活している環境とは違いましたから、最初は慣れない部分もありましたが、当時の時代の人間として生活していくことで慣れていきましたから。

Q.今回演じられた初子というキャラクターに関して、ご自身と共通するまた共感した部分や、自分とは異なる部分などありましたらお聞かせください
——初子はすごく意志の強い女性で魅力的ですが、私はそんなには強くないですが、監督と話し、撮影をすすめていくうちに、初子というキャラクターを理解することが出来ました。共通する部分は、初子も私も一生懸命生きるということだと思います。

Q.金守珍監督の演技指導は、いかがでしたか?
——監督はリハーサルの段階から、強い女性としての初子を理解できるように沢山話してれましたし、話ではわかりづらい部分は直接監督御自身が演じ、どういった女性だったかを私から引き出す手助けをしてくれたのです。

Q.共演された役者さんとのことをお聞かせください。中盤で、風吹ジュンさん演じる敬子と、世代の異なる女性同士語り合う場面がよかったですね。
——風吹ジュンさんは、自己管理を徹底される女優さんで、その面ですごいと思いましたし、私に対しても演技に対する助言を沢山してくれる素敵な方でしたよ。








Q.それでは、初子に想いを寄せる二人の男、初子にとっての一途な想いの対象となる義男役の山本太郎さん、健一役の山田純大さんは?
——山本さんは、普段はとてもひょうきんで面白い方ですけど、演技になるとガラッと変わって真剣に取り組まれていて、その姿が見ていて気持ちがよかったです。
山田さんは英語が上手いので英語で会話が出来、またさらに英語を教えてくれたりしましたので、友人同士みたいに冗談を言い合ったりと、楽しく過ごさせていただきましたね。

Q.今回の作品で、特に見て欲しい場面はどの場面でしょうか。
——初子が健一の情婦と女同士の殴り合いをする場面がありますが、そこは初子の強さを見れるよいシーンだと思いますし、最後の方で義男と別れる場面で最後に“サラゲヨ(愛してる)”と一言いう場面も、別れの辛さや悲しみが出ていて感動的だと思います。そして、一番最後に韓国の民族衣装を着て、一人で歩いていく場面も強い意思を感じるシーンです。

Q.その殴り合いの場面や、クライマックスの火災の場面等、実に迫力がありましたが、演じられていて危険なことなどは…
——リハーサルを積みましたから、危険なことは無かったですけど、やはり撮影が終わった時には、身体がボロボロでしたね(笑)。

Q.お好きな俳優さん、監督さんは?
——ニホンデ?窪塚洋介サンガダイスキデス(笑)。岩井俊二監督の作品が好きですね。韓国の監督では『八月のクリスマス』のホ・ジノ監督。それと、ミシェル・ファイファーが好きです。

Q.今後、演じていきたい役柄をお聞かせください
——子役から演ってますから、様々な役を演じてきました。ですから、特にこれはというものはないのですが、どんな役でも自然にこなせるようになりたいですね。そう、やはり強いイメージの女性をこれからも演っていきたいですし、ドラマに限らずアクションも演ってみたいと思いますね。身体を動かすことが好きで、ジムにも通ってるんですよ。

Q.それは是非とも、楽しみにしたいですね。それでは最後に、これから作品を見る日本のファンにメッセージをお願いします
——ファンガイマスカ!(笑)ニホンゴヲイッショウケンメイベンキョウシマス。キタイシテクダサイ!

ありがとうございました

執筆者

宮田晴夫

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