わずか15ページのシナリオでプロデューサーからGOサインをもらい、制作された『スズメバチ』。今最も有望な若手俳優が勢ぞろいしたこの作品は、西部劇やパニック映画などにインスパイアされたフレンチ・アクション。4分間におよぶ銃撃戦は壮絶だ。このアクション大作をひっさげて来日したのが、37歳に見えない若々しい容貌のフローラン=エミリオ・シリ監督。日本初配給であり、監督自身にとっても長編第2作目となるこの作品ををひっさげての来日。
カメラの撮影タイムにはいると、「ガンはキライなんだよ。」と言いつつも、劇中で使われたモデルガンを手に「ジェームス・ポンド」と言ってポーズをとったり、「マッスル・マン」と言って両手で銃をかかげるなどのパフォーマンスで会場を沸かせてくれた。次はどんな新作を届けてくれるかとても楽しみなフローラン=エミリオ・シリ監督だった。

$navy ☆『スズメバチ』は2002年 秋 渋谷東急3ほか全国ロードショー!$









Q.全体的に西部劇をモチーフにしたことが感じられますが、いかがですか?
A:監督.西部劇や1970年代までのアメリカのアクション映画が好きなんだ。だからもちろんそういったものの影響を受けた作りになっているね。ジョン・フォード、クリント・イーストウッド、『アラモ』、『リオ・ブラボー』などを彷彿させる、ウエスタンコードをたくさん使ったんだ。ウィスキーもその一つだね。でもこの作品にはパニック、ファンタジーといったコードも使われているんだよ。いろいろインスパイアされたけれど、それに新たに自分の感覚を織り交ぜて作ったんだ。

Q.アクション映画を作る際に大変だったことや難しかったことは?
A:監督.アクションを撮るには時間がかかるので、バジェット(費用)もたくさん必要になる。でもハリウッドのようにはいかないから、撮影で工夫をしたよ。10シーンになるところを1シーンで収めるようにとかね。役者達の方はどうかというと、ブノワ・マジメルの言葉をかりると「(今回のアクションが)今まで撮った中で一番難しかった」ということになる。ブノワにとってこの作品で肉体で表現すること、心理的緊張感を持続されることが大変難しかったようだ。おまけに撮影も夜中だったしね。

Q.アメリカ映画の影響、脚本、日本でも知られているフランス人俳優のキャスティングの経緯などについて教えて下さい。
A:監督.(アメリカ映画の影響について)これは女性を主人公にしたフレンチ・アクションなんだよ。マッチョな男性が主人公ではなくね。東ヨーロッパの売春のことなど、映画全体で女性をモチーフにしているんだ。そして登場人物のヒューマンな部分、心の動き、葛藤を丹念に描いたんだ。なんといってもこの作品では意味のないバイオレンスはないからね。

(脚本について)脚本はブノワを念頭において15ページシナリオを作った。この15ページをみてオーケーしてくれたプロデューサーは相当勇気が必要だったと思うね(笑)。倉庫での展開が決まったらすぐロケハンを組んで、じっくりと倉庫を見ながら残りの脚本を練ったよ。

(キャスティング)僕の長編は1本目がブノワ、そして2本目となるこの作品もブノワだった。3本目もブノワだろう。 日本でも知られているフランス人俳優のキャスティングについてだけど、知名度で選んだわけではないんだ。イタリアでとても人気のある俳優も参加しているしね。今回のキャストは、お互いに共演したことがないメンバーを集めたんだ。お互いに共演したことがないけど、共演したいと思っているメンバーを集めたんだよ。だからこのメンバーが集まったことはとてもマジカルであるし、メンバーたちにとっても刺激になったと思う。






Q.タイトルの由来は?
A:監督.この作品では、観客たちにも八方塞がりの中で、攻撃を受けざるえない状況を感じてもらいたかった。オープニングのスズメバチのドキュメンタリーも意識して見てもらいたかった。
また、スズメバチの刺すという行為は銃弾が身を貫くということであり、レーザーの照準はスズメバチが狙いを定めている様子を彷彿させる。 マフィアのマスクもスズメバチを意識している。 そこでこのスズメバチがタイトルになったんだ。

Q.ブノワが銃のトラウマから解放されていく過程に、監督が描きたかったものはなんだったのでしょう?
A:監督.ブノワは最初、武器を使うことを怖がっていた。人を殺すことは難しいことだ。激しい心の葛藤があったと思う。この葛藤をまず描きたかった。そしてそのブノワが武器を手にしたのは、サミー・ナセリが演じるナセールに怪我をさせた責任からと生き残るための本能からなんだ。最初はナイフで敵を倒していたけど、彼の中でなにかがふっきれて、ナセールを守るためにも銃を手にする。本来はリーダーであるナセールがヒーローになるはずだった。でも彼はケガをしてしまう。そこでこれまで守られていたブノワが戦わざるえなくなった。立場が逆転してしまったんだよ。
ここで彼らがもっている本来の人間性が浮き彫りになる。弱い部分やこれまでみせたことなかった一面。自分との葛藤。生き残るためにはどうすればいいのか。生きることを見つめることになるんだ。そんなふうに短い時間の中で人が成長していく姿を描きたかったんだ。

Q.セットではなくロケの撮影の苦労はいかがでしたか?失敗が許されないシーンもあったのでは?
A:監督.シナリオの80%を絵コンテにした。とても緻密な絵コンテをね。そしてその絵コンテを基に撮影を進めていった。だから最初から編集もできていたようなもんだったね。また特殊技術のおかげで、失敗が許されないようなシーンもうまくとることができたよ。

執筆者

斉賀美香

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