「これまでのように派手でロマンティックなシーンはない。戦争の悲惨さをもっと現実的に伝えたかったんだ」(ジョン・ウー)。待望の新作「ウインドトーカーズ」をひっさげ、ジョン・ウー監督と主演のニコラス・ケイジが来日した。「フェイス/オフ」に続き2度目のコンビとなる彼らは公的にも私的にも信頼を寄せているようで、友情を語った本作に重なる部分がちらほら。「ニコラス・ケイジはアイデアの尽きない俳優」と監督が言えば、ニコラス・ケイジは「ジョン・ウーは俳優のクリエイティブな部分を引きだすのが上手」と返す。去る6月27日に行われた記者会見を一部中継しよう。なお、ニコラス・ケイジからは「日本の皆さん全員を愛してます」とものすごいリップサービスも。

 








ーー監督に。第二次世界対戦を描くにあたり、留意した点は?
ジョン・ウー これまでの作品は派手でロマンテックなアクションシーンを取り入れてきた。言ってみればバレエのようなアクションシーンだ。けれど、今回は実話ということもあって、従来とは似ても似つかない演出をしてみた。観客に兵士が感じた恐怖を実感して欲しかったから、ドキュメンタリータッチの映像にしたんだよ。
 正直なところ、この作品を撮る作業はエンジョイできるものではなかった。悲しいことに戦争はいまも世界の何処かで行われている。戦争は誰のためにもならないんだと、映画を通してそれを伝えたかったんだ。

 ーーニコラス・ケイジという役者について。
ジョン・ウー  彼らから学んだもの、それは素晴らしい演技とはこういうものだ、ってことだ。あるシーンで彼が泣けば僕も泣くし、彼が笑えば僕も笑う。「ウインドトーカーズ」の脚本を読んでいる最中、ページをめくるたびに浮かんだのは彼の顔だったんだよ。エンダーズの役は当初、アイルランド系だったがニコラス・ケイジにやってもらいたくて、わざわざイタリア系に書き換えてもらったほどだ。
 現場で僕らはほとんど口を聞かなかった。挨拶を交わす程度のシンプルな関係だったが、逆に言えば言葉などは必要がなかったんだ。必要とあれば彼はどんどんアイデアを出してくれる、常に謙虚で決して声を荒げることもしない、すごくハートフルな人間なんだよ。

 ーーでは、ニコラス・ケイジに。監督ジョン・ウーの魅力を教えてください。
ニコラス・ケイジ 自分のビジュアルを明確に把握している人だ。これだけビッグバジェットの映画になると、誰しも自分のスタイルを出すのが怖くなってしまうものだと思う。失敗を恐れてね。でも、彼は必ずサインを残すんだ。ウーというサインをね。
 また、彼自身が俳優だったこともあって役者とのコミニュケーションがずば抜けてうまい。彼の演出にかかると、役者たちに自信が生まれ、クリエィティブな表現も湧き出してくるんだ。







ーーあなたはかつて役作りのために、ゴキブリを食べたり、抜歯したりしましたね。今回のエンダース役では特別なことはしましたか。
ニコラス・ケイジ 役者としての僕には第一部と第二部があるんだ(笑)。前半第一部はメソッドアクティブーー歯を抜いたり、ゴキブリを食べたり、実生活もその役にどっぷりと浸かってしまうようなね。
後半第二部ではーー今がそうなんだけど役を実生活に持ちこむことはやめてしまった。もちろん、セットでは役に入りこむけれど、そこから出て家に帰ったら素の自分に戻るようにしているんだ。

 ーー日本語の台詞を話すシーンがありますよね。
ニコラス・ケイジ 小学校4年生の時、カルフォルニアにある日本の学校に通っていたことがあるんだよ。なぜかっていうと、当時の僕は日本語をマスターしたかったんだ。でも、その試みは失敗し、結局、話すことは出来ずに終った。だけど、日本語を聞くと懐かしい気分になる。日本語の音調ってシロヤマ、イシアカ(?)、そんな感じがする。
 で、話を映画に戻すとサイパンの少年に薬をあげるシーンで、日本語で言ったらどうかと提案したのは僕なんだ。日本語の先生をセットに呼んで言葉を教えてもらった時、やっぱり懐かしい感じがした。

ジョン・ウー あのシーンについては何も聞かされてなかった(笑)。カメラを回し始めたら、彼がいきなり日本語を話し始めたから、びっくりした。だけど、エンダースの人間性がよく表れているいいシーンになったと思う。彼って役者は常に事前に言ってくれないんだが、映画のためによりよいパフォーマーを見せてくれるんだよ。

執筆者

寺島まりこ

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