サンダンス・NHK国際映像作家賞2002受賞作『ミラーを拭く男』製作発表記者会見開催!
定年間近に起こしてしまった交通事故をきっかけに、長年勤めた会社を辞め、家族に黙って家を出て全国のカーブ・ミラーを拭く男とその家族を描く『ミラーを拭く男』の製作発表記者会見が、6月11日主要スタッフ、キャストの出席で開催された。
本作は、これまでも『セントラルステーション』『ピーピー兄弟』など多くの秀作を輩出しているサンダンス・NHK国際映像作家賞2002の受賞作で、自主映画出身でこれまでビデオ作品や現在公開待機中の“発禁本カストリシネマ”シリーズ3作品等を監督した梶田征則氏が脚本・監督を担当し、緒方拳さん、栗原小巻さん、大滝秀治さんら実力・キャリアを誇る俳優陣が出演する。撮影は今年の8月に北海道での夏ロケと、また10・11月にかけて全国で秋から冬にかけてのロケと二次に渡って行われ、3年間にわたる物語における四季折々の光景がフィルムに収められる予定だ。
2002年の12月の完成を目差し、翌03年のサンダンス映画祭でのワールドプレミアが予定されている。フレッシュなスタッフ陣と、ベテラン演技者陣の作品への思いを、会見からお伝えしよう。
$navy ☆『ミラーを拭く男』は、2003年初夏より全国ロードショー公開予定!$
大橋孝史プロデューサー——監督とは5・6年前からの付き合いですが、3年位前に家族や夫婦をテーマにした作品を撮りたいという話がありました。私がこの作品をやりたいと思ったのは、監督の才能に惚れ込んでいたということと、監督そして自分の家庭環境の中で、家族を見る部分が似ていて自分達が思っている気持ちや思いを表現できたらと思って、ここまで頑張ってきました。これから実際に、緒方さんをはじめ諸先輩方の協力をいただいていい作品を作りたいと思います。
キャスティングに関しては、監督と自分が父親像、母親像という部分で一致した部分からり、出てくれないだろうが何も言わずに終えるより、言ってみないとわからないからという部分でお話し、駄目元でお願いしました
梶田征則監督——1年前に父親が定年で仕事を辞めて家族が混乱したことがありました。それまでは何も無い父親でしたが、会社を辞めるということが家族にとっては大きな事件で、色々脚本は書いていますが今ちゃんと書けるのはこれかなと思いこれを書きました。お蔭様で賞をいただきまして、映画化にこぎつけました。ただここは出発点であり、映画は結果だと思ってますので、いいものが作れたらと思っています。
自分は絵から作品の題材をとることが多く、今回も定期的にカーブミラーを磨く初老の男の人を見かけ、それがずっと頭の中に残っていたのです。それに自分の父親の実体験が入ってきて、混ぜられたら面白いのではないかという中で生まれました。
自主制作映画出身なのですが、豪華なキャストに緊張はありますが、自分のやりたいことをやるというスタンスは変わりません。ビデオから映画に変わってもそれは変わらないし、面白いものを撮っていきたいと思います
緒方拳さん(皆川勤役)—— 『ミラーを拭く男』という脚本が送られて来たとき、「ホラー映画かな…」と思って放っておいたら、読んだか、読んだかと電話が掛かってきてね。うるせえな…と思いつつ、横になって読み始めたら終いには正座をしていて、「いい脚本ありがとう」って、そんな感じ。ミラーに視点が行ったのがすごく面白いし、実際に監督にお目にかかり、声高でない人柄・作風に惹かれた。何気ない笑いみたいなものが、出るかで無いかみたいなところが決めてかな。
栗原小巻さん——(皆川紀子役)人生色々なことの積み重ね。苦労も喜びも。この皆川紀子役、心を込めて演じたいと思います。役との出逢い、新しい時代の若い才能豊かな監督、プロデューサーとの出逢い、そして敬愛する緒方さん、大滝さんと久しぶりの再会にクランク・インをとても楽しみにしております。この4月に北京で栗原小巻映画作品展というのを開いていただき、懐かしい自分の作品を久しぶりに観まして映画の仕事をしたいという気持ちが蘇ってきたところです。
NHKで放映された梶田監督の受賞についての番組を見て、映画会社が映画を作らない時代にこういう所から新しい才能が生まれ映画が作られていることを知りました。そうして興味を持っていたところで脚本をいただき、私達の世代が描かれた作品で是非やりたいと思ったんです。
大滝秀治さん——(熊代秀治役)3年前に孫娘を事故で亡くした老人役を演ります。家に訪ねてきた皆川に当時のことを話すわけですが、この話がきっかけになり皆川はミラーを吹き続けることを考える、この脚本の芯になる話だと思います。人事だと思えない、身につまされる話なので、大事に手抜かり無く丁寧に役をやりたいと思います。
数年前に甥が交通事故で亡くなり、その事件に関わった時に加害者がいつのまにか被害者になり被害者が加害者扱いされる理不尽な状況を目の当たりにしました。身につまされたというのはそのことで、私は1シーンしか出ませんが「轢いたほうも轢かれたほうも家族がばらばらになる」というのは実感で、脚本にリアリティを感じました。
上田信さん(サンダンス・NHK国際映像作家賞プロデューサー)——梶田監督、おめでとうございます。緒方さんはじめ、こんなに素晴らしい大先輩の方々が集まって素晴らしいですね。梶田ワールドを楽しみに待っております。期待しております。
私どもNHKでは二つの映画プロジェクトを行っており、NHKアジア・フィルム・フェスティバルではアジアの映画監督との共同製作を行い、梶田監督が受賞したサンダンス・NHK国際映像作家賞は世界の4地域から受賞者を選び、これまで24名の受賞者がおります。今回は梶田監督が素晴らしいものを作っていただいて、続々と才能ある監督が巣立っていってくれて、そのお手伝いができればありがたいと思っておりまして、今回直接製作には絡んでおりませんが、この場を設けさせていただきました。
執筆者
宮田晴夫