アメリカの小さな町に住むごくごく普通の家族がみまわれた、息子の死という悲劇。喪失の悲しみで歯車の狂った家族は、葛藤の末互いに真の自分達をぶつけあい新たな関係を築こうとするが、そこに辿り着くには更に重く苦い決断が待っていた。
 演技派俳優の絶妙なアンサンブルによる真摯なドラマが、様々な映画賞で高い評価を得た『イン・ザ・ベッドルーム』。『いとこのビニー』で92年度アカデミー賞助演女優賞に輝き、本作では、望むと望まざるに関わらず悲劇の糸口となってしまう人妻ナタリーを演じたマリサ・トメイさんが、6月に映画のキャンペーンとしては初の来日を果たし、6月6日帝国ホテルにて来日記者会見が開催された。
 ちょっと鼻にかかった声がなんともチャーミングなマリサさん、日本人のお友達もいるそうで今回はキャンペーンの前に、しばらくプライベートで観光も楽しみ、日本文化に親しむ機会も持ったそうだ。日本食では豆腐料理、寿司、刺身、等が好きで、中でも居酒屋の雰囲気がとても気に入ったと明るく答えるマリサさん、その素顔をのぞかせた会見の模様をお伝えしよう。

$navy ☆『イン・ザ・ベッドルーム』は、2002年7月、日比谷シャンテにてロードショー公開!$









Q.明るくコミカルな役柄が多かったですが、今回ナタリーを演じた感想と役の魅力をお願いします。
——『いとこのビニー』でオスカーをもらったこともあって、その直後の『忘れられない人』のようなドラマ性の高いものもやってるけど、どうしてもコメディが多い印象があるみたいね。ナタリーのような役は珍しい役だわ。というのは、いくら素晴らしい映画でも、悲劇性が高いものはプロデューサーが避けたがる傾向があるの。この機会に恵まれたことはとても嬉しいわ。

Q.この映画で観客に一番感じて欲しい点、そしてご自身が一番共感する部分はなんでしょうか?
——この映画は、観客それぞれの方の受け止め方があっていいと思うわ。非常に深い悲しみというテーマがあり、それぞれ個人の感じ方でとらえてもらえればいいと思うの。共感できる部分に関しては、幸せな家族が一つの出来事から悲しみのどん底に落ちていくところね。

Q.深刻な社会問題である家庭内暴力が一つのテーマとして描かれていますが、この問題をどのように感じますか?
——これは果たして今多くなっているのか、たまたま伏せられていたっことが今でてきたのか、と思うの。私自身も暴力から女性を守る組織のチャリティをしていたりするけど、やはり一人一人が優しさを持つことが大事だと思うし、今ここで解決策を話し合うと終わらなくなってしまうわね(笑)。

Q.マリサさん同様、シシー・スペイセクさん、トム・ウィルキンソンさんが素晴らしい演技を見せていますが、お二人との共演で感じられたこと得られたことを教えてください。
——偉大な俳優と共演が出来て本当にラッキーだわ。確かに映画の題材は緊迫感のあるものなんですが、現場は調和が取れていて仕事がしやすい現場だった。得たものは二人の題材へのアプローチね。題材を尊重し、演技にとても真剣に取り組むという姿勢を学んだわ。献身的な仕事ぶりで、シーンのためならどんな努力を惜しまない、それは一緒に仕事をするだけで感じたわ。例えば、シシーはどうも舞台となった家の居心地がイマイチだと感じ、セット・デザイナーの人と一緒になって装飾等をやる徹底振りだったの。トムは外見はとっつきにくく堅い感じなんだけど、ソフトでウィットがある人で、周りをケアしてくれる優しい人。その演技力の秘密を訊ねてみたら、数日間はただ脚本をひたすら読み込んで、後は一切脚本は見ないというやり方なんですって。そこまでは、判ったわ。









Q.トッド・フィールド監督との仕事はいかがでしたか?
——初めての監督とはこれまでも仕事をしてたけど、毎回いい経験をしているわ。初めての監督のよさは、新鮮なアイデアとオープン性ね。トッド監督は、ひじょうによく準備をしていて、私達が現場に入ると俳優達の演技を重視してくれたわ。彼自身も俳優なので、俳優の気持ちや考え方を理解してくれるの。今回は母親役、私には子供はいませんが、監督には3人いるということで、子供の抱き方等のアドバイスを受けたし、町のことも熟知していたわ。その上で監督は私達を信頼して、任せてくれたの。

Q.この役はかなり感情移入が難しかったと思いますが、マリサさんのアプローチはいかがでしたか。
——一つはリサーチ、一つは想像力、一つは実体験、そうしたものをミックスして臨むの。今回はメイン州のカムデンという町が舞台なので、まずそこの方言を勉強したことで、その町の生活や人生観を身近なものにしたわ。

Q.女優という仕事を選んでよかったことを教えてください。
——まず自分が必要としている部分で自己表現が出来ると言うことと、色々なキャラクターになれ色々なロケ地に行って違う視点から世界を見れるという点で、色々な意味でオープンになれるし、人生自体が豊かになるということね。

Q.ナタリーは映画の中で自分で意識せずに男性を虜にしていきますが、それはなんでしょうか?
——かなり型破りなところとか、働く女性で一生懸命やっているけどひじょうに視野が広いとか、単なる外見上のことかもね(笑)。

Q.出演作は何に拘って選びますか?
——あまり選択肢が無いときはある中で一番いいものを選ぶのだけど、もう少し恵まれた状況ではまず監督が誰かを気にするわ。それから脚本がよく書けているかどうか、共演者は誰か、そして私にとってチャレンジになるかどうかというのも重要ね。

Q.インディペンデント作品や舞台等、仕事の幅もますます広がって充実されてますね。
——レッテルを貼るのが好きなハリウッドで、映画も仕事もやれ本当にそういう意味では充実してるわ。一時期映画で成功した後、映画スターだからと芝居の話が来なくなった時期があったけれど、映画も演劇もやりたいと開拓する努力をしていったのよ。

執筆者

宮田晴夫

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