メグ・ライアン演ずるバリバリのキャリアウーマン・ケイトと現代のニューヨークにタイムスリップして来てしまった19世紀の優雅な貴族レオポルドの素敵な恋を描いた『ニューヨークの恋人』。レオポルドを演じたヒュー・ジャックマンの来日記者会見が都内で開催されました。
ヒュー・ジャックマンは『X-メン』に続き、2年ぶりの来日。前回の来日では日本に大変良い印象を持ったそうで、記者会見冒頭には「コンニチハ」と日本語で挨拶もしてくれました。
何事においても礼儀正しく、時には文字通り”白馬に乗った王子さま”としてケイトを助けてくれる今回の役は、『X-メン』の鋼鉄の爪で何でも切り裂く野性的なウルヴァリンとは180度違う役柄。ターザンがグレイストーク卿になった以上に吃驚する変貌ぶりです。
素顔の彼は、グレイのスーツにブルーのシャツの首のボタンははずしていたってラフな雰囲気。会見中は手を額にかざして質問者を見たりと、ひょうきんな面ものぞかせていました。
グラビアやTV、映画、最近ではプロレスのマスコットとしても活躍中の乙葉さんも駆けつけ、レオポルドにふさわしい白い上品なカサブランカの花束を贈呈しました。乙葉さんは『ニューヨークの恋人』をイメージしたという黒のドレスで、いつもとは違う大人びた雰囲気。けれども背伸びした分、踵の高い靴によろめくのもご愛嬌。映画の感想を聞かれ「ロマンティストな映画でした」とかなり気に入った様子で答えていました。ヒュー・ジャックマンも「レオポルドならこうする」と、片膝をついて花束を乙葉さんに捧げるポーズを見せてくれました。











ニューヨークでとても好きな場所があったら教えて下さい。

監督のジェームズ・マンゴールドは、この映画は「ニューヨークへのラブレター」としてもいい位、ニューヨークの素晴らしさを描き出したいと言っていた。特に1876年のニューヨークをそのまま描き出す事が出来るという、ある意味、非常に僕達は恵まれていたんだ。何故なら、たとえば乗馬のシーンを撮影する時は、周辺のちょっとしたビルボードやポスターを外すだけで、そのまま使える位、昔の由緒ある建物が保存されているんだ。
今回、友人のジョン・トラボルタに「ニューヨークで一番良い所を見たかったら、ロックフェラープラザのレインボーラウンジがある、そこは絶対行くべきだ」と言われた。たまたま撮影中に僕と妻は結婚5周年を迎え、トラボルタご推薦のレインボーラウンジへ行った。そこはテーブルが全部ダンスフロアに向って置かれ、85歳の男性が奥さんと結婚60周年の記念で来ていて、その男性が立ち上がって奥さんに心をこめて歌を歌ったというのに出くわしたんだ。それがニューヨークの素敵な所、僕がニューヨークで一番好きなのはそこなんだ。

この映画の中で、レオポルドはシェークスピア俳優と間違えられますが、お好きなシェークスピア劇がありましたら教えて下さい。

今なら「ヘンリー5世」。ただし不思議に自分が歳をとるに連れて、シェークスピアの作品の中で好むものも変わって行くので、今現時点で聞かれた場合だけれど。

ニューヨークは昨年の9月に悲しい出来事が起こりましたが、ニューヨークが舞台の映画にご出演されて、これについてどう思われましたか。

凄くショックだった。僕はニューヨークに住んでいるわけではないけれど、映画の撮影の期間中は一時期ニューヨークにいたから。そして、こんな野蛮な行為が行われた事について、怒りを感じたんだ。この事件をきっかけに、人間の心の癒しについて考えるようになった。世界には色々な国、文化、習慣があり、その中で色々なギャップがある。そのギャップを個人々々が努力してどう縮めていかれるかという事、相手の立場に立ってもっと相手を理解する人間が、自分自身を含めて一人でも多くなった時に、そのギャップがなんとか縮まってくれるのではないかと。

この所、オーストラリアから出てくる役者がハリウッドで脚光を浴びていますが、それについてはいかがですか。

その事はいつも聞かれるんだ。15通り位の回答を用意している。真実に近いものとしては、これはハリウッド業界には漏らして欲しくないんだけれど・・要はオーストラリアの役者の方がギャラが安いから(笑)それとたぶん、オーストラリアの役者がアメリカに行きやすいのは、メル・ギブソンやニコール・キッドマンがフロンティアとして道を作ってくれたからだと思う。彼等のおかげで、ハリウッドからも探しに来てくれる。もうひとつは、オーストラリア人は一般には良く遊ぶと思われているが、沢山遊ぶ分、沢山仕事もするんだ。それに開拓精神、チャレンジ精神が旺盛なんだ。役者だけではなく、フィルムメーカーとしても先輩達がアメリカで実績をつくってくれたのも、理由のひとつかもしれない。











映画の中でレオポルドは大変にロマンチィックな人間ですが、ジャックマンさんが恋人や奥さんにしたいロマンティックな事はありますか。

アハ・・レオポルドを演じてから、非常に困った事があるんだ。良く妻に「なんでレオポルドみたいでないのよ」と愚痴られるんだ。「レオポルド、ちゃんと便器のシートを下ろして下さいよ」とか。そういう時は僕の名前が”レオポルド”に変わるんだ。僕もロマンティックな人間だけれど、レオポルドはいつもロマンティックで、僕は時々ロマンティックな男なんだ。
男友達にも言われるんだ。「こんな映画を作ってくれたから、俺がいくら頑張ったって、必ずレオポルドと比べられて、いい迷惑だ」とね。この映画を見ていない人に僕から忠告をしておくよ。彼女と見に行くなら、見に行く前にロマンティックな事をしておくんだ。そうすれば大丈夫(笑)

レオポルド理想的な男性ですが、貴方にとって理想的な女性とはどんな人ですか。

客観的に見て、レオポルドはかっこいいと思う。ロマンティックというとやたら女性っぽくてねちっこい感じがするけれど、彼は芯の強さ、力強さ、情熱的に自信を持って自分の意見をちゃんと言う。それに非常にシンプルだ。それがロマンティックなのだと思う。クールとは違う。
ケイトはレオポルドから見ると、自分が来た19世紀の女性が静かで言いたい事も言えないというのとうって変わって、非常にエネルギッシュで、自分の感情をしっかり持って必ず出す。なのに鎧を着ているようだ。働く女性というのは現実において、そうやって自分をガードしないとやっていけない。まだまだ現代の職場では、女性にはハードルがあったりストレスがあったりする。その中で女性であろうと男性であろうと自分をしっかりと持っている人間はセクシーだと思う・・質問が深い哲学的な質問だったのに、僕の答えが浅いようでごめんね。

日本の男性は昔に比べて軟弱になったと言われています。それについてどう思われますか。

僕は助言出来る立場ではないと思うけれど、この10年間は日本だけではなく世界が複雑に、政治だけではなく社会全体の構造が流動的に変わっていって、ある意味、男性はこうでなくては、女性はこうでなくてはという価値観が移り変わっていると思う。
だとえば、10年前は女性の為にドアを開けると失礼になるとか一時期そういう事もあった。大切なのはこの世の中は男と女しかいないのだから、男というものは照れていても女性をどう喜ばせようかと考えているはずなんだ。男性も女性も、自分らしく、物事をシンプルにした時に、真に人間の強さが出てくる。人生の目標をしっかり持っているという事が大切なのだと思う。特に男性は女性が何を言おうとしているのか、耳を傾ける事も必要だと思う。これは、僕は1回結婚して素晴らしい妻がいて、その妻との接点での話しか出来ないので、それが一般的かどうかわからないけれど。

執筆者

鈴木奈美子

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