ベストセラー・シリーズ“犯罪心理捜査官アレックス・クロス”シリーズの、『コレクター』に続く映画化作品第2弾で、全米で8週連続興収トップ10入りを果たした『スパイダー』。そのクオリティと人気を受けて早くも第3弾の製作も決定したというシリーズで、前作に続き主人公アレックス・クロスを演じ、本作では製作総指揮にも名を連ねる(この件は、本文を)モーガン・フリーマンが3年ぶり、3度目の来日を果たし、3月28日に帝国ホテルにて記者会見が開催された。
 「他の国でもこうして支持をしてくれる方がいてくれて、本当に嬉しい。日本語が話せないことが残念でならないよ」と来日の感想を語るフリーマンさん。その挨拶や質疑の最中に、時にはひょうひょうとおどけてみせる姿には、その長いキャリアに裏打ちされたサービス精神を垣間見せてくれる。
 なお、この日の会見はTOKYO FMをキー局に全国19局で放送中の『Kampo アーバンウィークエンド』が演出に協力し、番組のパーソナリティをつとめる女優で、本作の“知能が高い者同士が繰り広げる闘い”に魅了されたという真中瞳さんが、会場で作品紹介の朗読を行い、また前半のインタビュアー役をつとめた。

$navy ☆『スパイダー』は、2002年初夏、日比谷みゆき座ほか全国東宝洋画系にてロードショー公開!$










Q.同じ役は二度やらないということを公言されていましたが、何故再度アレックス・クロス役を演じようと思ったのでしょうか?
——僕は兼ねがね同じ役を再度演じることは、決して悪いことではないと思っていたよ。ただ、一つの役を演じてそれがあたり役になってしまうと、様々な脚本家から「貴方を念頭において書いた」という脚本を書いてくる。でもそれは、俳優としての僕ではなくて、僕が演じたキャラクターを念頭において脚本を書いているんだ。確かに外見はちょっと違うかもしれないけど、内面的には同じとか…そういうのがいやなんだ。例えば、007シリーズで何度もジェームス・ボンドを演じるというのはありだと思うけど、医者の役でありながら病院でアクションを演じるみたいなパターンには違和感を覚える。だから、同じ役所を演じたくはないけれど、同じキャラクターを演じるのは嫌ではないよ。

Q.今回は製作総指揮も兼任されていますが、それが演技をする上で何か影響はありましたか?
——影響はなかったです。ここだけの話しだけど、映画の製作総指揮という肩書きは、実際には何もやらないんだよ(笑)。仕事じゃなくて、肩書きで僕を釣り上げるための餌に過ぎないんだ。映画がヒットしたとしても、俳優はそのヒットによる収益分をなかなか手にすることはできないのだけど、プロデューサーは大ヒットした時には収益を手にすることができるようになっている。それが餌なんだよ。これはあくまで内緒だからね(笑)。

Q.ご自身の作品で一番印象に残っている作品はなんでしょうか?
——かって僕は『グローリー』という印象深い作品に出たが、それは史実に基づいた南北戦争中の黒人一個中隊の物語だが、この映画が公開されるまでは残念ながらそんな史実があったことを知らない人がほとんどだったんだよ。

Q.俳優を目指す若者にメッセージをお願いします。
——よく言われることなんだけど、僕が言えることはたった一つだけだ。何故なら俳優への近道は無いからね。とにかく諦めずに続けることだよ。俳優への道は厳しく、まさに狭き門へ大勢の者がむらがっているような状況なんだ。だから根気よく、夢を追って努力を続ければそれが門の中に入れる道で、それに参加しなければ勝てることはないんだ。

Q.『コレクター』『スパイダー』と犯罪心理捜査官の役を演じられましたが、実際に犯罪心理に興味をもたれたりしましたか?
——いや(笑)、誰もがミステリーや推理小説は好きだと思うし、僕も大好きだ。それはパズルを組み立てることが楽しいからで、特に優れた作品の場合は最後の最後に自分の予想を裏切ってくれるからだ。また俳優として人間の心理には興味を持っているけれど、特に犯罪心理に興味を持っているかといえばそうでもないね。










Q.今回二度目のアレックス・クロス役ですが、監督がリー・タマホリ監督に変わったことで、役に対するアプローチの変化などありましたか?また、ちょっと話題が作品から外れますが、先日発表されたアカデミー賞でデンゼル・ワシントンが男優賞を、ハル・ベリーが主演女優賞を受賞されたことをどう思いますか?
——それじゃ、アカデミー賞のことから答えよう。その後、覚えてたら最初の質問ってことでね(笑)。私の感想は大半のアメリカ人も同じだと思うけど、嬉しかったよ。映画業界がやっと一つの到達点に達したような感じだね。これまでシドニー・ポワチエが主演男優賞を授賞しただけで、主演女優賞にいたっては黒人の受賞者が無く、そこにはやはり差別があるのではないかという批判を越えたような今回の授賞は、私達黒人に限らず全アメリカ人が嬉しく思っているよ。
最初の質問に戻るが、基本的に答えはノーだね。アプローチは変わっていない。ただそうは言っても、一部変わってるところはあるがね。僕の中では、アレックス・クロスという意味では同じだが、キャラクターは全く違っているんだ。『コレクター』の時はすごく自信に満ちていて、格好よく成功しているキャラクターだったが、今回は自分の過ちからパートナーを失ったことの自責の念に駆られ停職中という、自信を失い精神的にも老いた印象の強いキャラクターになっている。そうした部分から、アプローチを変えてみたんだ。それにおっしゃるとおり、監督も違えば衣装デザイナーも変わっているから、そうした点でも確かに違いはあるね。

Q.長いキャリアの中で、モチベーションをあげてきた秘訣などありましたらお話ください。
——ここまで来れたらの、友人と運命のおかげだと思うよ。俳優になることを諦めようと思ったことは何度もあるけれど、そうした時には友人が勇気づけてくれたり、丁度端役だけど役がついたりとか何かが起きたんだ。それで続けて来れたんだ。僕は縁や運命を信じるタイプでそうしたものが重なってここまでこれたんだ。

Q.これまで様々な役を演じてこられてますが、そうした役から学んだことや影響を受けたことはあったのでしょうか?また、今回のアレックス・クロスから学んだことがあれば教えてください。
——人生長く生きていると、どんなことからも学ぶことはあると思うんだ。これまでの役からも様々なことを学んだと思うが、それを具体的に挙げるのは難しいね。蓄積というものがあるのだから。強いて言えば様々な役を演じ、それを通し様々な国に行くことが出来たし、様々な人とも出会ってきた。そういうことの蓄積から、学んでいくわけだよ。ただ、アレックスからは特には無いね。

Q.これから作品を観るファンにメッセージをお願いします
——僕の作品に限らず、よくこの映画を観てどう思うかとか聞かれるけど、映画の料金分は楽しめたなと思ってもらえれば嬉しいね。

執筆者

宮田晴夫

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