1月21日、『キリング・ミー・ソフトリー』の監督・陳凱歌と主演女優ヘザー・グラハムの来日記者会見が、新宿パークハイアットで行われた。
『さらば、わが愛/覇王別姫』などの監督として知られる陳凱歌は今回『キリング・ミー・ソフトリー』で初めてハリウッドに挑む。ヘザー・グラハムはこの作品で、日常から非日常の官能世界へ落ちていく女性を大胆に演じ、話題となっている。

$darkred ☆『キリング・ミー・ソフトリー』は2月23日(土)より、日比谷スカラ座他、全国東宝洋画系にてロードショー!!$






 記者会見での質疑応答をご紹介(抜粋)
−−陳監督に質問。英語圏で映画を作ることと中国語本土で映画を作ることには、どんな違いがありますか?
「特に違いは感じません。もちろん違う言葉を話すわけですが。映画を作る時には三つ必要なものがあります。役者とカメラと監督。それらは全て満たされていたので、今回も楽しくやらせていただいたし、いいものが作れる自信もありました。
 そうは言っても多少の差はありましたね。中国で撮影している時は“ちょっと時間が押しているのでお昼抜きでやろうか”と、お弁当をワッと急いで食べて作業することもままあるんです。けれど今回はイギリスで撮影しておりまして。時間になるとスタッフが“お昼です”と必ず言うんですね。そして一時間 は昼食タイム。それを聞くたびに気が狂うんじゃないかと思いました(笑)。
 しかも場所がイギリスだったので、午後4時30分になると必ずティータイムも入ってくる。なかなか難しいものがありました」








−−ヘザーさんに質問。今回は愛のシーンが濃厚に描かれていますが、それらは入念にリハーサルをなさったんでしょうか。それとも本番でアドリブでなさったんでしょうか。
ヘザー「監督があまりリハーサルをお好きではないので、本番で作り上げました。もちろん話し合いは入念に重ねましたが“どういうポーズで”というのはいっさい決めずにやりました。監督は演出なさる時、とても美しい詩的な言葉でお話になるんです。たとえば“部屋に入ります。その部屋はとても暗い。暗いから、心が重圧から開放されます”という風な言い方をしてくださる。それによってムードが作られて、演技がしやすくなるということはありました」
−−ヘザーさんに質問。共演のジョセフ・ファインズについて、どう思われましたか?
ヘザー「とてもステキな方。セクシーで、それでいて信頼がおける。“色っぽいシーンに乗じて何かをするような方ではない”という信頼を置いていました」
−−陳監督とヘザーさんに質問。この企画に惹かれたのはなぜですか?
「人間の関係…この一言につきます。このストーリーはどこにでも起こりうる話。特に東京・ニューヨーク・ロンドン・パリ…といった大都会で起こりえる話です。
 今、我々はとてもモダンな時代に生きていると感じています。何でも手に入るし、友人に連絡を取りたければ携帯電話でもファックスでもメールでも送ることができる。そんな中にあり、お互いを理解しあうことが非常にむずかしくなっていると思うんですね。それは社会的な問題だと感じています。そういうテーマに触れる作品だと思ったので、この作品を選びました。
 また女性は、実は心から信頼していない人と恋に落ちることが多い…そこが悲劇的なんだけれど、興味深いテーマですよね」
ヘザー「とにかく陳監督とお仕事をしてみたかったんです。それに監督とお会いした時、脚本を読んでストーリーの描き方にも感銘を受けました。テーマとしての“人間の関係”。そこに介在するセクシャリティに深く惹かれました。
 タイトルにもありますけれど、深く情熱的に愛し、その愛情があまりに強いがゆえにある種の力が生まれ、その力で自分が殺される危惧を抱く…。そういうことって、あると思うんです。たとえばとても愛していると思っている男性とステキなセックスをした翌朝、ふと“でも、この人は誰なんだろう”と思い始めた時の恐怖。そういうものにとても興味を覚え、この作品に参加することにしました」








−−陳監督に質問。この映画を見てヒッチコック作品を思い出したのですが、ヒッチコックを意識してこれを撮ったということはあるのでしょうか?
「ヒッチコックのことを質問していただいて大変うれしく思います。やはりこういう映画を撮る場合は、誰でもヒッチコックの映画からインスピレーションを得るのではないでしょうか。で、彼の映画の特徴は、人間の恐怖心を描く時“必ずその恐怖は人の内部から起こる恐怖であって、外的原因から起こる恐怖ではない”ということですね」
−−ヘザーさんに質問。ヘザーさんというと『オースティン・パワーズ』のお茶目な演技を思い出します。が、今回はエロティックであると同時にミステリーな演技。コメディの場合と演技プランにおいて違う部分があるのか、教えてください。
ヘザー「コメディとシリアスな作品とで違うアプローチをすることはあまりありません。物語のことを考えて、その中に自分を置き、どういう風になるか想像しながらいつも役作りをしていきますので…」
−−陳監督に質問。中国人は保守的な所があるけれど、こういうエロスあふれる映画を見てどう感じるとお思いになりますか?
「え〜(笑)。本当のことを申し上げますと、中国人は集団になると保守的ですが、ひとりずつであれば、きっとこの映画を大好きだと思います。“毎日、俺たちがやっていることだよな”と思うのではないかと…」

 輝く金髪とギリシア彫刻のような端正な美貌のヘザーさんと、知性とユーモアをいかつい表情の中にたたえた陳監督…。『キリング・ミー・ソフトリー』の出来ばえに期待が高まる記者会見であった。

執筆者

かきあげこ(書上久美)

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