田口ランディ原作の「コンセント」 が中原俊監督、市川実和子主演で映画化された。こころの動きをOSにたとえ、バージョンアップやオーバーロードなどのコンピューター用語で表現した小説を、中原監督はデジタルハイビジョン24Pで撮影。「映画化するのは難しいって、百も承知でやったんですよ。実際のところ、ランディさんの原作とはちょっとずつズレてるかもしれませんね」と言う。とはいえ、セックスシーンは原作同様少なくなかったが、当の市川美和子さんは「うーん。とてもやりたかった役なので…そういうのは、おまけ」とあっさりかわす。12月21日、東京テアトルで行われた会見はストーリーを反映してか、ネット媒体のみの対応。この日の会見模様を一部中継する。

※「コンセント」は2002年、お正月第二弾テアトル新宿にてロードショー!!









——家族への愛情と憎しみが交錯する原作に対し、映画版はもっと爽やかな後味ですね。
中原監督「コンセント」は心理活劇ですから、解釈は自分の中で起こっていることに帰結してくると思うんですね。正直なところ、僕としては田口さんの原作から出たものなのか、自分の中から出たものかもうよくわからないんです。でも、何処かで田口さんの世界とはちょっとずつ違うのかもしれない。家族に対する愛情と憎しみ、それは本作の重要なファクターでしょうが、僕の中に家族への恨みとか、そういう感情が少ないというのがあるのかもしれませんね。

——市川さんに。複雑な家族環境にある主人公を演じるにあたって。
市川 私自身が家族と独立しているところがありまして…家族という認識はもともと薄いのかもしれません。10代の頃に感じた親への反抗心ですとか、そういう感情を膨らませていくしかなかったですね。

——木下ほうかさんがひきこもりの兄を演じていますが、何か指導はされましたか。
中原監督 木下くんに演技指導はしてませんね。彼自身の表現です。絶食して痩せたりしてね。実際の撮影で木下くんが全く動かなかったんです。「お兄さんは動かないんですか」で聞くと、「ハイ、動かないんです」って(笑)。それでそのまま撮りました。
ランディさんが言うには彼はお兄さんにそっくりなんだそうで。そう言われた時はちょっとどきっとしましたね。

——主人公の元愛人、国貞を芥正彦さんが演じています。少々、オーバーアクトっぽいと評判ですが。

中原監督  大学教授って役柄なんですけど、この職業の人はインチキくさいですよね(笑)。だからこそ、アクの強さじゃ超一流の芥さんにお願いしたんですよ。でも、ちょっとやり過ぎの感はあるのかな(笑)。違和感を感じたら、まぁ、笑って許してやってください。

——主人公のユキはシャーマンっぽい女性です。どう解釈して演じましたか。
市川  うーん、何考えてたんでしょうね(笑)。一応、心理学とかシャーマンの本とか、そういう世界は嫌いではないので、勉強はしたんです。でも、結局わからなかったので体で表現するしかなかったんですよ。もともと、頭で考えることをあまり信用しない方なんです。動物のようだとよく言われますけど(笑)。

中原監督 役者さんって基本的にシャーマンみたいなものなんですよね。何かの役割を演じて他人に感化させるんですから。







——女性が観てキレイだと思えるエロスの表現も本作のポイントですね。
中原監督 ああ、それは意識しましたね。私自身、ロマンポルノの出身なので、女性向けのポルノを撮ってみないかと相談は受けてたんですよ。(ロマンポルノを撮っていた頃)『存在の耐えられない軽さ』という映画を観て、ロマンポルノがこういう映画に発展していけばいいのにな、とも思っていましたし。

——市川さんはそうしたシーンに抵抗はありませんでしたか?
市川 原作にはヒロインが初対面の男性と公衆トイレでーーっていうシチュエーションがあるんです。これを読んだ時はあら、ま(笑)と思いましたけど、そのシーンは映画ではなかったですね。どちらにしても、この役をやりたいという気持ちの方が強かったので(絡みのシーンは)おまけという風に考えていました(笑)。

——前半と後半で、主人公の服装もキャリアウーマン風の地味なものから、目の醒めるようなブルーや花柄を使った明るいものへと変わっていきます。この変化は意図したものですよね。
中原監督 衣裳は小川久美子さんという大ベテランの方がやっています。相米さんとも何度か組んでる方でしてね。今回、僕は初めてご一緒したんですが、市川さんを見て原色が使えると思ったらしく…。グリーンかな、ブルーかなと考えて、普通の人じゃなかなか似合いそうもないブルーのワンピースを着てもらいたい、ということになった。それに対する逆算ですね、あとの衣裳は。
市川  私自身、着ていて気持ちのいい服が着たいと言って何度も話し合いをしたんです。モデルとして服を着る時は平面だけの世界ですから、心理に合わせて描いていくというこの体験は新鮮でしたね。

——今回はデジタルハイビジョン24Pでの撮影でしたが。
中原監督 現場的に言うと普通のビデオと変わりはないですね。もちろん、フィルムとは違いますけど。テレビと映画って長年、喧嘩みたいな状態にあったじゃないですか。それがここへきて近づきつつある、交じりつつあるという感じがしますよね。まさしくこの映画、「コンセント」のような状況になっている気がします。

執筆者

寺島まりこ

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