昨年の12月、作家性に富んだ映画とその作り手たちを、アジアを中心に世界から集め、第1回が開催された国際映画祭『東京フィルメックス』の第2回が、今年は11月18日から25日にかけて、東京有楽町地区を中心に開催されることが決定し、会場の一つでもある浜離宮朝日ホールにて9月27日にラインナップ発表記者会見が開催された。
当日は、映画祭の共催者側を代表して朝日新聞社広告局事業部長神谷明氏、東京フィルメックスディレクターの林加奈子氏、東京フィルメックスプログラム・ディレクターの市山尚三氏らが出席し、映画祭の趣旨や上映作品に関しての発表を行ったほか、映画祭に特別招待作品として参加するスタンリー・クワン監督の『藍宇(ランユー)』のプロデューサー、チャン・ヨンニン氏が来場し作品についてのアピールと質疑が行われた。









第2回東京フィルメックス TOKYO FILMeX 2001
開催期間:平成13年11月18日(日)〜11月26日(日)
開催場所:東京有楽町地区(有楽町朝日ホール、浜離宮朝日小ホール、シネ・ラ・セット、丸の内ピカデリー2)
主催:東京フィルメックス実行委員会
共催:朝日新聞社、J-WAVE、テレビ朝日
作品数:東京フィルメックス・コンペティション 10本
    特別招待作品 7本
    夕ピオヴァーラ特集 3本
    岡本喜八特集 4本
上映回数:35回
チケット情報(メイン会場分は発売中)
発売券種:1回券…1.前売券1,200円 2.当日券1.500円(共に税込/自由席定員入替、整理番号入場制)
     回数券…3.3回券3,000円(税込) 4.10回券8,000円(税込) *取り扱いはe+のみ
お問い合わせ:チケットぴあ:03-5237-9999
       ロ一ソンチケツト:03-5537-9999
       e+(イープラス) http://eee.eplus.co.jp/

<東京フィルメックス・コンペティション>
アジア地区の拘りが感じられる新進作家の作品10本を上映。5名の審査員により最優秀作品賞と審査員特別賞を選定する。審査委員長は候考賢(ホウ・シャオシェン)監督。
『天有眼』Comeuppance 香港/2000年/106分/カラー 監督:超崇基(デレク・チウ)
『怪盗ブラック・タイガー』 Tears of the Black Tiger タイ/2000年/約100分/カラー 監督:ウィシット・サーサナティヤン
『受取人不明』 Address Unknown 韓国/2001年/117分/カラー 監督:キム・ギドク
『ワイキキ・ブラザース』 Waikiki Brothers 韓国/2001年/105分/カラー 監督:イム・スルレ
『デルバラン(原題)』 Delbaran イラン=日本/2001年/96分/カラー 監督:アボルファズル・ジャリリ
『アイラヴ北京』 I Love Beijing 中国/2000年/90分/カラー 監督:寧濁(ニン・イン)
『青い春』 Blue Spring 日本/2001年/83分/カラー 監督:豊田利晃
『フラワー・アイランド』 Flower Island 韓国/2001年/126分/カラー 監督:ソン・イルゴン
『イチかバチか』 Go For Broke 中国/2000年/87分/カラー 監督:王光利(ワン・グァンリー)
『票の重み』 Secret Ballot イラン=イタリア/2001年/100分/カラー 監督:パバク・パヤミ

「製作本数や年齢には拘らずに作品を観た時にフレッシュな感覚が感じられた才能ある新進監督の作品から選択しました。コンペの結果によって作品の価値が変わることはありませんが、それがきっかけにそんな監督たちの次回作に応援や期待ができれば面白い、それが映画祭の役割だと思います」(東京フィルメックスディレクター 林加奈子氏)









<特別招待作品>
アジアで製作された新作を中心に、世界の国際映画祭で受賞した話題作、著名監督の最新作、日本で見る機会の少ない地域の作品などを紹介する。オープニングは韓国映画の『武士(ムサ)』、クロージングは映画祭唯一の非アジア映画で今年のカンヌ映画祭パルムドール受賞作『息子の部屋』。なお上映作品中1作品は、“フィルム・サプライズ”としてのスニーク・プレビューとなり、その作品のヒントは公式頁で少しづつ明かにされていくとのことだ。
『武士(ムサ)』 MUSA 韓国/2001年/154分/カラー 監督:キム・ソンス
『カンダハール(原題)』 kandahar イラン/2001年/85分/カラー 監督:モフセン・マフマルパフ
『藍宇(ランユー)』 LAN YU 香港/2001年/86分/カラー 監督:關錦鵬(スタンリー・クワン)
『エデン』 Eden イスラエル=フランス=イタリア/2001年/91分/カラー 監督:アモス・ギタイ
『ミレニアム・マンボ』 Millennium Mambo 台湾=フランス/2001年/105分/カラー 監督:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)
『息子の部屋』 La Stanza del Figlio イタリア=フランス/2001年/99分/カラー 監督:ナンニ・モレッティ

「アジアの主要な作品を選び、その際に国のバランスを考えなかったわけではないが、作品としての質をあくまで優先した。その結果、インド、中央アジア、東南アジアの作品を欠いてしまったが、それは今年たまたまそうなってしまっただけ。特徴としては、躍進著しい韓国映画、また昨年に続きイラン映画も多く、アフガン問題を扱ったものが2本含まれているが、時事的なものを狙ったわけではない。中国映画2作品はこれまでの中国映画に多かった田舎を舞台にしたものではなく、都会が舞台になっている」(東京フィルメックスプログラム・ディレクター 市山尚三氏)

<特集上映>
“フィンランドの山中貞夫”とも称されるニルキ・タピオヴァ一ラ監督の『ユハ』など3本を35mmで特集上映。また海外でなかなか紹介の機会が無かった岡本喜八監督作品を、『殺人狂時代』など3本特集上映し最後の巨匠を海外へと発信する。併せて、岡本監督の最新作『助太刀屋助六』招待試写会も開催される。

なお昨年同様、各作品のスタッフ・キャストらが来場してのティーチ・インなども企画されていて、現在ゲストのスケジュールを調整中。詳細は随時公式頁に発表される予定だ。また、今回は初めての試みとして映画雑誌『プレミア』の協力で観客賞も解説される予定。各種シンポジウムの開催など、よりファンと映画関係者との交流の場としての位置付けも深まりそうだ。







最後に、特別ゲストとして記者会見に参加した『藍宇(ランユー)』のプロデューサー、チャン・ヨンニン氏のコメントを紹介しよう。

「私は北京から参りました。この作品が初めてのプロデュース作品になります。作品を代表して、今回上映できることをうれしく思います。私としましては、プロダクション・デザイナー、編集を担当したウィリアム・チャンによりアート・フィルムとしても優れたものが出来たと思っています。この映画は、同性愛をテーマにしています。このテーマが中国で映画化されることは非常に珍しいことだと思いますが、私自身二年前に原作をインターネットで入手して読み、非常に感動しぜひ映画化したいと思って今回の運びとなりました。皆さんはゲイという題材は珍しくないと思われるかもしれませんが、中国という国ではまだなかなか難しいものがあり、アンダー・グラウンドで無許可で映画を撮ることになったものです。この作品は、同性愛といっても非常に美しい作品で私とスタンリー・クワン(監督)が情熱を持って芸術性の高い作品に作ることが出来たと思います。二人の男性の愛についての、美しい映画です。カンヌでも高く評価していただき、愛情ということでは男性のみならず女性の方からも支持していただけまして、嬉しく思っています。プロデューサーとして作品に関わった私は、中国からバンコクのラボに自分で10回持って運びました。愛はどんな形でも美しいものですので、ぜひ皆さんでご覧になっていただいて気に入っていただければと思います。アメリカ・カナダ・フランス・韓国では公開が決まっておりますので、みなさんにも是非気に入っていただければと思います。」(チャン・ヨンニン氏)

 質疑としては、中国での同性愛やそれに関しての映画に関する社会的な規制等に関しての質問がなされた。チャン氏によれば、現在中国でも都会ではゲイ・バーなど同性愛の人が集まる場所が出来てきてはいるが、公式な場で語ることは認められていず、撮影許可を申請し取れるか取れないかのどちらかにしかにしかならない。そうした中で、今回はアンダー・グラウンドでの撮影を行ったそうだが、やはりそれは製作者側としてはストレスのたまるものだったようだ。ただ、それでも中国自体も自由化の波が進む昨今なので、海外に続き中国で見てもらえる日も遠くはないことを感じているそうだ。なお、『藍宇(ランユー)』に関しては、既にスタンリー・クワン監督をはじめ、主演のお二人が映画祭ゲストとして来日することが決定しているそうなので、楽しみにして欲しい。

なお、“第2回東京フィルメックス TOKYO FILMeX 2001”のなお、作品やスケジュールの詳細等に関しては下記でリンクしている公式サイトを参照されたい。

執筆者

宮田晴夫

関連記事&リンク

映画祭公式頁