先だってもジョン・マッデン監督が初来日を果たし、今週末からの公開に向けての期待も高まる『コレリ大尉のバイオリン』の特別試写会が、9月19日に丸の内ピカデリー1で開催された。当日の会場ではジャーナリストの大宅映子さん、女優の川島なお美さんらをはじめ、各界の著名人の姿も多数見うけられ、今年一番の感動作という呼び声の高まる中、作品への注目度の高さが感じられた。
 なおこの日は、作品の上映に先だって、映画評論家のおすぎさんによる軽妙なトークショーと、桝川千秋さんによるマンドリンの生演奏も行われ、劇場に集まった観客を魅了してくれた。









 「2時間9分というちょっと長いかな?という時間があっという間に過ぎていきます。」舞台に立ったおすぎさんは、アメリカでの悲劇が起こった後であまりでてきて話したいという気ではないけれど、この作品がいい映画で応援している姿勢は見せた方がいいと思ったからと、前置きした上で作品の魅力を語りだした。
 『コレリ大尉のバイオリン』は、1941年のギリシアが舞台で、戦争を背景にした恋愛映画。『風と共に去りぬ』など、名作が多いこのジャンルの最新作ともいうべき作品だ。おすぎさんは、ご自身は弟子だったと思っている故淀川長冶さんが、映画から地理・歴史をはじめ本当に様々なことを学んだということをあげながら、今回の作品は日本人はなかなか知る機会がなかった歴史を描いたものだと。「この映画の冒頭は、島の教会で行われる奇蹟を呼ぶ儀式から始まります。そして、映画の最後の方でまた同じような儀式が出てきますが、冒頭では起きた奇蹟は後の儀式では起こりません。そのかわり、“愛の奇蹟”という形で違う奇蹟が起こる映画です。二人で試写を観たあの明るい黒柳徹子さんが、全編泣いていて、それ程泣くかな?と思いながら、とても感動してくれてよかったなと思ってます(笑)」。
 映画の魅力には様々な側面があるけれど、その一つは役者の魅力。「私は、好じゃないんだけれど…」と前置きしながら、「何気ない立ち振る舞い・表情の一つ一つがとても上手な役者さん」というコレリ大尉役のニコラス・ケイジ、「これまでの作品で一番綺麗で素敵」だった、ペラギア役のペネロペ・クルス、押し付けがましくなく英国人ベテラン俳優の味を見せてくれた、ペラギアの父役のジョン・ハートと、それぞれの役者の素晴らしさと、社会・歴史的背景を反映させたキャラクター描写の見所なども解説。軽妙な毒舌も時折交えながら、「悲劇といっても、シェイクスピアとかじゃないんですから、誰が観ても判って、誰が観てもいい映画だと思います。これがつまらない人は病院に行くべきだし、判らない人はバカです」、と作品の普遍的な良さをアピール。「今度の事件で、映画界も影響を受けることが多いと思いますが、今日はこの映画を観て、泣け…とはいいませんが楽しんでください。語り口がとても上手な映画です」と、トーク・ショーを結んだ。
 さて、タイトル通り本作ではマンドリンの調べが印象的に使われている。音楽を担当したのは、ジョン・マッデン監督とは『恋に落ちたシェイクスピア』でも組んでいるスティーヴン・ウォーベック。なかでも、愛のテーマとでもいうべき役割を果たしているのが“ペラギアの歌”だ。舞台に登場したのは、マンドリン奏者の桝川千秋さん。この日桝川さんが手にしたマンドリンは1926年にフランスで作られたもので、映画の時代背景とも重なっているそうだ。スポットライトの中で桝川さんが、美しく楽しげだがどこか哀愁も感じさせる音色で奏でる“ペラギアの歌”に、観客は魅了され静に聴きいっていた。

 なお、『コレリ大尉のマンドリン』は、9月22日(土)より丸の内ピカデリー1他、全国松竹・東急系にてロードショー公開!

執筆者

宮田晴夫

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