怪物は時速400キロの夢を見るーーー。今夏大作映画のトリ、「ドリヴン」はスピード狂ならずとも猛暑を吹き飛ばすには絶好の作品だ。公開に先駆けて製作・脚本・主演を兼ねたシルベスター・スタローン、ポスト・ブラピと名高いキップ・パルデュー、ドイツが誇る俳優(日本では「ノッキン・オン・ヘヴンズ・ドア」の監督として有名か?)、ティル・シュワイガーが来日。「人生って人それぞれチャンスがある。僕は僕なりの栄光を受け取ってきたし、若い俳優のサポートをする番だと思うんだ。未来はニュージェネーレションのためにあるからね」、スタローンの口ぶりになんだかいい年の重ね方したよな、と思わざるを得ないのだった。6日の記者会見を一部、誌上中継する。

8月18日、全国東急松竹系でロードショー

 






スタローンに。「ドリヴン」をはじめ、あなたの映画には心に傷を負った人物がよく登場する気がしますが。
シルベスタ・スタローン 人間はある特定の年齢に達すると過去を振り返り、”あの時こうすれば良かった”、”ああ言えば人間関係もうまくいったのに”とか、考えるようになるだろう。僕が惹かれるのはここから生じる人生のセカンド・チャンスなんだよ。こうした題材を確かに何度も扱ってきたが、同時に時代を問わず、国を問わず、普遍的なものだからね。

 俳優からレーサーに転身する人も多いですが、こうした役を演じるとどうなんでしょう。レーサーになりたくなったりもするのでは?
スタローン それは無理だよ(笑)。だって妻が絶対に許さないから(笑)。「ロッキー」をやったからってボクサーになるわけじゃないだろう(笑)。
キップ・パルデュー レーサーになりたいとい衝動は僕のなかで全く生まれなかったわけじゃないよ。でも、レース中はアドレナリンがどんどん噴出していって、同時にその状態で冷静さを保っていなきゃならないからね。僕にはそれだけの才能もないし、運動神経もない(笑)。
ティル・シュワイガー ドイツにはご存知の通り、制限速度無制限のアウトバーンがある。昔はそこにいって猛スピードで走ったりもしたけどね。最近、父親になったから自重してるんだよ(笑)。

ここまで脚本に苦労したことはなかったとか。
スタローン いや、本当に大変だったよ(笑)。26回くらい、書き直し、300ページは捨てたかな。最初の話では余りにも僕の役が中心に過ぎた。僕から始まって、僕で終わるような、ね。最終的に若いドライバーを育てていく話にしたけれど、子供を一人前に育てることができて親も初めて成長したといえる、それを伝えたかった。
シュワイガー 本読みの時、ミスター・スタローンは真剣にメモを取りながら聞いていた。次の日には全く新しいシナリオを持ってきたんだ。つまり、不眠不休で働いていたんだよ。感動したね。でも、僕の意見がひとつだけ採用されなかった部分がある。最後のレースで僕を勝たせてくれなかった(笑)。




撮影中に事故は起きなかった?
バルデュー 安全対策が万全だったから怪我はしなかったよ。でも、普通の道路をレーシングカーで突っ走るシーンは正直、怖かったよ。普通の車を運転する知識で乗ると、そのパワーに呆然となる。あれは前代未聞の試みだったよね。

 スタローンに。あなたを惹きつけてやまない世のドライバーに一言。
スタローン 彼らは生まれながらにして特別なギフトをもらっている。考えてみると、奥さんにじゃあね、と言ってそのまま会えなくなることだってある。レーシング業界には何人か友達がいて、セナやハイネケンらとは個人的に親しくしていたけど、彼らは内面的にも強いよね。思うよりずっと狭い世界だから元の彼女がライバルと結婚しまうこともある。事故で大やけどを負ってアルコール依存症になってしまったり、そんなケースだってある。でも、自信をなくした彼らがどうやって立ち直っていくのか、その経過が興味深いんだ。レーサーを描いた映画が100本あっても、どれも全て違うドラマになると思うよ。

執筆者

寺島まりこ