新世紀純愛ゾンビスプラッターの聖典がいよいよ完成。 『STACY』完成披露試写会開催される
少女たちが次々と原因不明の死を遂げ、ゾンビ(=ステーシー)として復活する近未来、ステイシー化が迫った一人の少女と人形遣いの男の出会いの果てに待つものは、殺戮それとも純愛?ミュージシャン、作家などマルチな分野で活躍する大槻ケンヂ原作の小説『ステーシー』が、ハイビジョン撮り劇映画『STACY』として完成し、8月18日より劇場公開が始まる。
この作品の完成披露試写会が、8月1日に徳間ホールにて開催され、出演された加藤夏樹さん、尾美としのりさん、林知花さん、内田春菊さん、佐伯日菜子さんに原作者の大槻ケンヂさん、そして友松直之監督が舞台に立ち舞台挨拶が行われた。
舞台挨拶の口火を切ったのは、ドリュー違法再殺団のリーダーであるのぞみを演じた林知花さん。因みに、蘇ったステイシーは肉体を165分割以上に切断しない限り殺す(=再殺)ことは出来ないのだが、自分達の再殺費用を稼ぐために違法でこの作業を受け持つ少女たちがドリュー違法再殺団だ。髪を金髪に染め、マシンガンをぶっ放すのぞみをパワフルに演じた林さんは、「こういった役は初めてだったので、見せ掛けでは終わらせないように、監督と相談しながら日々思いっきり演じたのぞみがこのスクリーンにこめられています。ぜひ、ストーリーを感じながらドリューの演技に注目していただけたら嬉しいです」と挨拶、この日舞台には上がらなかったが会場に来ていたドリューのかなえ・たまえを演じた二人から、「リーダー!」の掛け声もかかり、流石のチーム・ワークといった感じ。
おそらく多くの同年代普通の男なら、複雑な感情を抱きつつ感情移入してしまうであろうシブさんこと渋川を演じたのは、尾美としのりさん「これから皆さん映画を観るということなんですが、面白かったら面白かったと色々な人に宣伝してください。それなりだったら、『ステーシー』って映画がやってるらしいよ…と色々な人に言ってください。宜しくお願いします。」
ヒロイン詠子役の加藤夏樹さんは、この日は鮮やかな赤のチャイナ・ドレス姿で登場。「私は最近ずっとホラーづいているんですが、今回はゾンビということでちょっと人間離れをしています。ずっと映画の中で笑い続けている役なんで、楽しく観ていただけたらいいと思います」と挨拶。ゾンビ映画ということで、加藤さん自身うっかりものを食べながらこの作品を観た際に、その手が一瞬で止まってしまった程、結構ハードなスプラッター場面もある。ただ同時に、「詠子自身は渋さんに恋をして、幸せにゾンビになって死んでいけたと思います」という加藤さんの言葉からも判るように、この作品は紛れもない恋愛映画なのだ。この日加藤さんが手にしていた劇中と同じ風鈴に下げられた、「ありがとう、ごめんね、大好きだよ。」の言葉の意味するところ共々、是非皆さんに劇場で確認して欲しい。
大槻ケンヂさんがこの原作を書かれたのは、もう5年以上前とのこと。「僕自身、話の内容をすっかり忘れていた頃に映画化の話しが突然飛び込んできて、棚からぼた餅っていうんじゃないけど驚いちゃいました。」と今回映画化された感想を語った。なお、映画版の方は未だ観ていないということだったが、詠子役の加藤さんは小説の執筆中にイメージしたキャラクターを遥かに超えた素晴らしさと、大絶賛。おまけに、右手に加藤さん、左手に佐伯日菜子さんというこの日の立ち位置には、「二・三代目黒井ミサに囲まれて、ヲタク的にもとても嬉しいです(笑)」と、非常に満足げなご様子だった。
「今回は、オーケンの原作ということで、“出して、出して”とホンのちょっとだけ出ているのですが、非常に『ステーシー』は原作を読んで好きな作品なので、出られて嬉しいと思います。」と挨拶したのは佐伯日菜子さん。なお佐伯さんのバニーちゃん姿は、共演している大槻さんともどもとても美味しい場面になっているのでファンならずともお見逃しなく。
ステーシーを合法的に殺害するための国際公務員、ロメロ再殺舞台の須永隊長を演じているのは、マンガ家・女優などやはりマルチな活躍を続ける内田春菊さん。実は本作の監督である友松監督は、13年前に一度内田さんのアシスタントをしたことがあるそうだ。「13年ぶりの再会で、御立派になられていて楽しい仕事だったです。いろいろ記念になる作品になりました。」。
友松直之監督は、ご自身も80年代のスプラッター・ムーブメントを体験してきた世代らしく、日本映画としては久々にゴアなスプラッター場面を展開し、ファンを喜ばせてくれたが、ただスプラッター・ホラーを再生させたわけではない。挨拶でも「この作品はスプラッターだけじゃなく、極限状態での愛とは何か?人を恋することはどういうことか?をまともに見つめたいという所で描いた作品です。キャスティングでも、筒井康隆さんなど子供の頃に憧れだった方々に出ていただき、これほど監督冥利につきる作品はありません。これを撮ったら死んでもいいやというくらいの意気込みで撮りました。」と語った監督の意図が、純愛とスプラッターという一見相容れそうもない二つの要素を、絶妙のコンビネーションで結びつけ、新世紀の純愛ホラー・バイブルが完成したのだ。
なお、『STACY』は、8月18日より、BOX東中野にてレイト・ロードショー公開される。
執筆者
宮田晴夫