構想なんと3000年!?コーエン兄弟が新作「オーブラザー!」をひっさげ、7年ぶりに東京にやってきた。ジョージ・クルーニーを主演に迎え、原作に選んだのは古代ギリシャの天才詩人ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」だ。アメリカでは監督作品中、ナンバー1ヒットを記録。7月16日に行われた会見では”お兄さん怖そうで、弟はのんきそうだ”との声が挙がりコーエン兄弟、大爆笑。イーサンにいたってはその後の質問も笑いを噛み殺すような表情がちょっと苦しげだった。今回の来日はブラッド・ピット主演の次回作(日本ロケもある)のリサーチを兼ねたもの。そのあたりのご報告もしっかりしてくれました。

※ 「オー・ブラザー!」はシネセゾン渋谷、銀座テアトルシネマで10月公開予定








−−ジョージ・クルーニは脚本の段階で想定していたのですか。
ジョエル・コーエン  いや、彼は書き上げた後に決めた。あの役には彼のようなカリスマ性が必要だと思ってね。脚本の段階で既に決めていたのはジョン・グッドマンとホリー・ハンター。ジョン・タトゥーロは僕らの映画にはよく出てもらってたけど、今回に限っては浮かばなかった。だって、彼はアメリカ人から見ると典型的なイタリア系だからね。ミシシッピー出身は無理かなって(笑)。結局、どんな役だってタトゥーロならこなせるだろうということになってお願いしたんだけど。

−−クルーニーのポマード狂いなどディティールの発想はどういった時に生まれるんですか。
ジョエル 何か規則があるとかそういんじゃ全然なくて、いわゆるひらめきとか直感だよね。キャラクターで大切なのは独創的であることと、趣味趣向に一貫性があることだよ。
クルーニーの場合、ハンサムなのにヘアネットつけて寝るなんてのがね、面白いかなと思ったんだ。彼の理想はポマード缶の男。ああいう男を意識してるんだよ。

−−メジャー系で活躍中のウォシャウスキー兄弟についてどう思います?初期の作品はあなたたちの作るものと似ている気がしたのですが。

ジョエル ・・・。というか、よく知らないんだよね。彼らの作品は観た事がない。
イーサン 「バウンド」は一緒に観ただろう。
ジョエル そうだっけ。でも・・・うーん、僕らとは違うタイプのような気がする。きちんと観てないのに違うというのも変だけど。メジャー作品については意図してやらないわけじゃないよ。「オーブラザー!」はアメリカでは興行的にもヒットしたしね。

−−日本で撮る予定の次回作について。
ジョエル ジェームズ・ディッキーというアメリカの詩人が書いた小説がもとになっている。戦闘機のパイロットが後半で撃墜され、日本に不時着するんだ。彼の目を通した日本が描かれたものだ。

−−映画作りに互いにどのように影響しあってますか。見た感じではジョエルさんは神経質で怖そう、イーサンさんは呑気で楽しいおじさんという感じがしますが・・・。
ジョエル(笑)・・・・。
イーサン (ヒッヒッヒというような押し殺した笑い)
ジョエル(笑)・・・。おかしくってなんかもう喋れないよ。
イーサン (ヒッヒッヒという笑いをこらえながら)自己分析で、そんなこと、考えたこともないから・・・。どう答えていいのかわからないよ(笑いすぎて苦しそう)。

−−兄弟喧嘩をしたことはないんですか。
ジョエル 小さな頃はそれこそ喧嘩もしたけどね。今ほど一緒にいたわけじゃないし・・・。今は撮影監督も美術監督とも一緒にいる。兄弟で監督をやるっていうのは人が考えるほど特別なことじゃなくて他の人たちとの共同作業と同じなんだよ。

執筆者

寺島まりこ

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