手術を1週間後に控えた色覚異常の一人の男を通し、“色覚・視覚”をテーマに描いた短編作品『0cm4』。2000年3月にSHINICHIRO ARAKAWAのパリコレクションのプレゼンテーションのために製作されたこの作品が、7月14日にレイトロードショーの初日を迎え、上映劇場のシネ・アミューズでは、デザイナー荒川眞一郎さん、監督の園子温さん、主演の永瀬正敏さんが、チケットは全席ソールド・アウトで立ち見も出る満員の観客の前で舞台挨拶を行なった。









 『0cm4』は元々去年のパリ・コレクションの一環として、製作を考えたものだと荒川眞一郎さんは製作背景について語った。洋服のコレクションは平面から始まり、立体へとうつり、そして映像という舞台で何かが出来ないかと、園子温監督、永瀬正敏さんらに相談を持ちかけたのがスタートだそうだ。パリコレクションの会場では映画の上映が終わると、会場の周りに並べられた服にスポットがあたり、映画と服がリンクする形がとられた。「普通に洋服を見せるコレクションではなく、プレゼンテーションを行なうという形で大体1日3回くらい行ないました。映画の中で色の見方みたいなストーリーが始まり、映画館が明るくなると様々な色で、また幾何学模様とかを使った、人間の目が錯覚をおこしそうな服で飾られていてって感じでね。直接の感想はあまり聞けませんでしたが、よかったと聞いています」(荒川さん)。
 今回の作品の監督を依頼された園子温監督は、モデルのバックに流れるシュールな映像のようなものだったら、ちょっと難しいかな…と懸念したが、劇映画でありまた映画の中で使われた服が発表されるものになり、映画を上映するというのが今年のコレクションだというのを面白く思い、ぜひやりたいと思ったそうだ。また、見所としては「フィルムとビデオをミックスして撮っていましたが、それが非常に効果的になっているはずだなと思っています。フィルムの部分は基本的にカメラマンが撮っていますが、ビデオのほとんどは永瀬正敏カメラマンが撮っています。台詞もかなりアドリブをかましていて、現場も自由な感じでした。」と、撮影時をふりかえる園監督。これからご覧になられる方は、ビデオカメラの件と、アドリブの件を頭において観るのも一興かも。
 色覚異常の主人公を演じた永瀬正敏さん、演じる上でのご苦労などはなかったのだろうか?「色がよく判らない男の役なんですが、実際撮影中は全て関知されているわけですから、それがどんな感じなのか、撮影の時も監督から特殊なビデオで、こんな感じだとかみせてもらってました。あとは、楽しかったですよ。」(永瀬さん)。なお、主人公の妹役で出演している麻生久美子さんとは、前作『Stereo Future』に続いての共演。「撮影の数日前に荒川さんから妹役が決まってないと聞いて、たまたま久美ちゃんのスケジュールが開いているのを知っていたので、朝方の4時くらいに電話でお願いしちゃいました(笑)」。このほかにも、現場に遅刻してきた荒川さんの話等の失敗談も暴露されていたが、なごやかな現場の空気も感じられる舞台挨拶だった。
 本作で「永瀬正敏の新しい面を見せることができたと思う」と語った園監督は、やはり永瀬さんとで『自殺サークル』という作品を撮影済み、来年の春公開予定とのこと。また、『0cm4』にかんしても、未使用のカットなどが残っているので、いつかロング・ヴァージョンを編集してみたいそうだ。また、荒川さんは、7月21日にこの会場で今回のコレクションのビデオを上映予定とのこと。今は10月のコレクションにむけて服をつくっているそうだ。連続して出演作の公開が続いている永瀬さんは、他にも2本の作品が公開待機中。新作の撮影もはじまるという。実はこの翌日が誕生日だったという永瀬さん、会場のファンからの祝福に、「ありがとう、もうあんまりめでたくないですがね。多分、明日も仕事してますね」と、多少照れを隠しつつ笑って答えていた。
 なお『0cm4』は7月27日まで、渋谷シネアミューズにて連日21:20よりレイトショー公開中。

執筆者

宮田晴夫

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