6月22日(金)より東京国際フォーラムにて行われている、第23回ぴあフェスティバル。今回は前作『鬼畜大宴会』で国内外で話題を呼んだ熊切和嘉監督の第2作『空の穴』が国内で初めて公開された。前作とはガラリとテイストを変えた今作。情けない中年男の恋愛を瑞々しく描いてあります。前作がダメだったという方も会場にはいましたが、そういう方も今作はかなり感動していたようです。北海道を舞台にしての、場面の美しさも見所のひとつであります。
上映前に行われた舞台挨拶では監督始め、出演者の皆さん大変緊張していたようでした。その舞台挨拶と、上映後のティーチインの模様をお伝えします。








1997年のぴあフェスティバル・コンペテション部門で準グランプリに輝いた『鬼畜大宴会』。その作品はそのまま一般に公開されるという異例なものとなった。国内外でも評判を呼び、次回作が期待されていた熊切和嘉監督。その第2作『空の穴』が国内で初めて公開された。
前作とは180度違うといってもいいくらいの、今回の作品。初の国内公開だからか、監督、出演者の方々それぞれ皆、かなり緊張していたようでありました。

熊切監督「ロッテルダム映画祭、ベルリン映画祭、ニューヨーク映画祭、そのどこででも訊かれたのが、なぜ前作と作風が変わったのか?というものです。前回が血や脳みそが飛び散る過激なものだったので、そう言われたのですが。それについては上映後にお答えします」
続いて主演の寺島進さんが壇上に上がったが、すぐに帰ろうとし、監督に「ちょっと待って」と引き止められていました。
寺島「えー、この作品は監督が大坂芸大にいたときのスタッフと、プロの・・・つまりベテランのスタッフとの混成チームの作品です。画期的で素晴らしいコラボレーションであり、そういう映画に出られた事を誇りに思っています。母国日本での初めての公開となります。今、緊張してベラベラ喋ってすみません(全部早口)」
続いて登場の菊池百合子さんもかなり緊張されていたようで、震えながら一生懸命に喋っていました。最初マイクを渡されても、首を振って拒否しようとしたりしていました。
菊地「あの、今日ここに来て、その・・・三つの感謝を言いたいと思います(この時監督から小声でフォローが入っていた)。えーと、、まず全てのきっかけを頂いた監督に。それと何もわからない自分を助けてくれた、スタッフや寺島さんに。最後にこの会場に来てくれた人、これからこの映画を観る人たちに感謝したいと思います。この撮影中や、映画を観て感じた気持ちを忘れず、この先もやっていきたいです」
続いて監督の友人でもある澤田俊輔さん。
澤田「撮影中、ものもらいになったり、スタッフに迷惑を掛けてしまいましたが、楽しく撮影できました」
最後に実はウルトラマンティガなどのスーツアクターなどで有名な権藤俊輔さん。
権藤「自分の撮影期間は短いものでしたが、楽しくできました。去らなければならない時、泣けてきました」






上映後にはティーチインがあり、会場から様々な質問がされた。
熊切監督「こんなに緊張したのは初めてです。でも上映中、笑ってほしいところで笑ってもらえたりしたので、ホッとしました」

——どうして北海道が舞台なんですか?
実はロケ地の帯広の近くが出身地なんです。そこにいた時もビデオなどで映画は撮っていましたが、いい場所なのにその頃室内シーンの映画ばかり撮っていたんですね。それで今回、設定上合っていた為、ここにしたんです」

——監督は現在26歳ですよね。なぜその26歳の若者が中年を撮ろうとしたのですか?
まず、オジさんが好きなんですね。30過ぎてオッさんが暇そうにしてたり、ファーストフードで一人食べている図が切なく思えるんです。シルベスタ・スタローンとかも好きで、あの人の映画の主人公ってみんなそうなんですね。ああいう切なさが好きなんです。また、同年代の恋愛を描くのが恥ずかしいというのもあります。それに35歳になって35歳の映画を撮ると、今と違うものとなると思うですね。ダメな男でも美学とか入っちゃいそうで。そーいうんじゃないんですね、僕が描きたいのは。オッさんを愛しつつ、茶化しつつ・・・、そういうスタンスで描きたいんです。

——オープニングとエンディングに旗が効果的に使われてますが、どういう意図で?
旗を使うと風が画面に写るんですね。それと、いまいち男らしくない男が、男になるという暗示というか・・・。下品な表現ですけど、か細いモノをおっ立てる、という事をしたかったんです。

冒頭の各国での質問、何故作風が変わったのか?という点に関しては次のように述べていました。
熊切監督「前作も自分的には、愛した者を殺してしまうという話で、あまり今回とかけ離れているとは思いません。ただ、ちょっと血とかが即物的な演出になっちゃったかな・・・と」

執筆者

永見 憲宏

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