出演者の平均年齢78歳!!篠崎誠監督の「忘れられぬ人々」がこのほど完成した。本編は言ってみればおじいちゃんのハードボイルドだ。老人映画、と聞くとなんとはなしわびしいイメージが湧くのが本音。だが、社会的なテーマを盛り込むも愛と友情とを涙と笑いで描き、どの世代が見ても楽しめる仕上がりとなった。4月9日、徳間ホールで行われた特別披露試写会では「デビュー作の『おかえり』から5年。実際の撮影は1年前。今日まで長かった(笑)」と言う篠崎監督のリードでキャストが舞台挨拶。小津安二郎、川島雄三、成瀬巳喜男作品らで知られる往年の名俳優が一堂に介したのだった。なお、同作は2000年ナント三大陸映画祭では主演男優賞(三橋達也、大木実、青木富夫)、主演女優賞(風見章子)を受賞している。
※今夏、テアトル新宿でロードショー!!










かつて戦友だった三人の老人を軸にした「忘れられぬ人々」。戦争体験がいまだに夢に出てくる老人・木島を演じたのは川島雄三や黒澤明作品で活躍してきた三橋達也。「今の日本を作るために食べるものもなく、焼け野原で戦ってきた人たちを忘れないで欲しい。そんな作品です。篠崎監督は戦争を知らない世代ですが、それだけにこの話を持ってきてくれて、感動しました」。上品な老婆(風見章子)に恋する老人・伊藤は、小津作品「突貫小僧」でスタートした青木富夫の当たり役。「高齢化とか言われてますからね、厚生年金をもらうのも肩身が狭いわけですよ。でも、先日フランスで演技賞をもらいまして…(笑)。これで、堂々と年金を受け取れます」。相手役の風見章子は「一目惚れされる役です。これからも長生きしたいですね(笑)」とコメント。
戦友会のメンバー、鈴木を演じた佐伯秀夫は同映画の最年長者。「来年90歳になりますが、あと2−3年は大丈夫」、しっかりとした物腰に年齢を聞き皆がびっくり。
本編の重要な鍵を握る阿久津役には篠田三郎さん。「立ち回りのシーンがあって、1日中血だらけの日もあったんです。大ベテランの方がいらっしゃるのに、リハーサル続きでいいのかな、って思っていたんですけど、監督は首を縦に振らなかった。一見気が弱そうに見えますが、実は信念を持った人なんですよ(笑)」。
若手では真田麻垂美と遠藤雅が恋人同士を好演。「何をするにしても後悔しないで生きる、そんな姿勢をこの映画から教えられました」と真田麻垂美が言えば、「強くて優しくて切なくて…素晴らしい作品です。残していくべき作品だと思います」(遠藤)。確かに。この言葉に嘘はなし。上映終了後はあちこちから拍手が挙がったのだった。

執筆者

寺島まりこ

関連記事&リンク

作品紹介