『<サド&マゾ>匂ひ立つ官能、新世紀エクスタシー』。ユーロスペースで行われている小沼勝監督特集も4週目。定番になった毎週土曜日のトークショーで、本日壇上に上がったのは『リング』でホラー界の帝王に、そして『サディスティック&マゾヒスティック』で日活ロマンポルノリバイバルの仕掛け人になった中田秀夫監督、映画評論家の四方田犬彦。現役映画青年(?)二人の熱い映画論が展開する。小沼勝監督の演出テクニックもわかりやすく解き明かさるが、一番熱かった話題は、誰が女優さんに触れて、何かしらの準備をしたのか?・・・というもの。中田監督の恥ずかしい過去が明らかに!?                       





四方田  当時はみんな小沼監督に注目していましたね。あの中原俊監督なんか、小沼さんの映画が上映している劇場にノートを持ち込んで、絵コンテを写してましたからね。
1977年にシネマグラという映画雑誌で「何がなんでも小沼勝」という特集を組んだんです。そこでの小沼さんへのインタビューで色々聞いたんですが、覚えているのが「どういう女優を使うか」というやつでしたね。
中田  ほう。なるほど。
四方田  自分が使いこなせる女優と、使いこなせない女優があると。自分の監督としてのクセで。例えば、宮下順子ってのは自分はできない。ところが、山科ゆり、谷ナオミとかはできる、と言うんですよ。いや、宮下順子とか撮ってまけどね。それで、その基準て何ですかと聞くと「女優の透明度」だそうなんです。宮下順子とかはいるだけでの強烈な存在感がある。悪く言えばアクの強さ、良く言えば個性。そういう女優はいじくれないって言うんですね。自分はいじくる側の監督だからと。だから透明度があった方がいい、というわけなんですね。真っ白いキャンバスみたいに、何度でも色を塗れると。僕はそれを聞いてこれは現場で演出をしている者の見方だな、と思いました。
中田  僕も小沼監督の考えにはシンパシーを感じますね。
四方田  よく絵コンテでどうのこうのと映画の作家主義とか言うけど、日活に関しては女優さんの体を見てからというのがありますよね。具体的に言うと、例えばおっぱいの柔らかさなんか見ないと、アングルなんか決められないし。そういうのをどう見立てるかが、監督の力量だと思いますね。
中田  そうですね。小沼監督はちゃんと女優の体のチェックをしてたと思います。僕なんか裸もののVシネマをやっ時、現場であちゃー、と思った事ありまからね。思ってたのと違って。
四方田  ところで中田さん、女優さんが現場に来て撮影を始める時、まだおっぱいの乳首がピンとなってない時があるじゃないですか。そういう時モミモミして立たせるというのは、誰がやってたんですか?中田さんも助監督をやってましたけど、やっぱ助監督ですか、そういうの?
中田  助監督そんな事できないですよ!
四方田  え、そうなんですか?
中田  ロマンポルノ創世記はともかく、監督も助監督も、直接女優さんに手を触れることはなかったと思いますよ。
四方田  裏で仲良くなる事は?  
中田  そういう人はいたかも(笑)。

執筆者

永見 憲宏

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