渋谷のアップリンク・ファクトリーで行われた、トーク・イベント最終日の後編です。後半は、タイトルどおり撮影現場の話などを中心に。トーク中、常に冗談で場を沸かせつづけた佐々木監督でありますが、特にこのあたりでは笑わせながらもご自身の映画撮影に関しての思いを、ここのスペースでは収まりきれないくらい、雄弁に語りました。


ひとみ−−佐々木監督の現場は、野球の結果が時間に関係してくるんですよね。
佐々木−−あるね、珍しく『血を吸う〜』は結構遅くまでやったよ。野球が無かったから(笑)。たまたまスケジュールでそうなっただけだけど。この間、11時半っていうのが僕の最長記録なんだけど、やっぱり駄目だよね。自分も含めてテンションが落ちちゃうから。夕方には終わらせて帰って、次の日のカット割を考えるようにしないと。僕はすごい予習マンで、現場で考えるってことはまず無いです。
ひとみ−−だから早いんですね。結構、そういうのに悩むと長くなってしまいますから。
佐々木−−僕が助監でついた黒沢清さんとかは、そういう感じで早いですよ。僕は現場で新しいものが生まれるなんてことは、無いと思っているから。現場ではプロの人たちがきちんとやればいい。出たとこ勝負みたいな現場が多かったの?
ひとみ−−色々でしたね。現場でとりあえず芝居させられて、それからカット割みたいなとか。
佐々木−−日本の場合は大体そうだよね。
明日美−−『発狂〜』ってどれぐらいで撮ったんですか?二ヶ月?
佐々木−−16日ですね。しかも、香港が4日もあるしで、俺が撮るのは10日くらいしかなかった。
明日美−−それなのに、現場が終わるのが早かったのか。凄いですね。初歩的なことを聞いていいですか。お姉ちゃん吐くじゃないですか。あれって、何?


ひとみ−−お粥
明日美−−食べた?それ飲み込んじゃったりした?味わったのかといいたいのね(笑)。
ひとみ−−初めに食べてみてこれなんですかって。梅粥だったりと。
明日美−−凄い汚いですよね。色的に。
佐々木−−うん、そうだね。でもお粥だよ。そう、高橋(洋)さんに後から怒られたんだよね。ゲロのアップを撮ってないって(笑)。
ひとみ−−私、あれをしっかりよけて歩いているんですよね(笑)。
佐々木−−ゲロのアップと、諏訪太郎の痰のアップを撮らなければいけなかったと。でもそれをやると、冒頭でお客さんが退いちゃうぞと。やはり三輪ひとみのゲロのアップはまだ見たい奴がいるかもしれないけど、諏訪太郎の痰のアップを見たい奴はいないだろうな。
ひとみ−−どうなんでしょうね…。それは無くてよかったかな。
佐々木−−おじさんの痰フェチとかね。なんか、ロフト・プラスワン三輪姉妹篇みたいですけど、みんな貴方たちが見れただけでOKでしょう。これできっと、DVDを何枚も買ってくれる。
ひとみ−−そういえば、『発狂〜』のホームページに首無し死体があっちゃんだ…ってありませんでした?
佐々木−−あったねぇ。そうだって、言っておけばいいよ(笑)。
明日美−−駄目でしょ、実際にやった女の子たちがいるんだから。
佐々木−−首無し少女はちゃんとローリングに出てくる。三輪明日美とはどこにも出てない。まぁ、時々ヘンなこと書いてる奴がいるからね。栗林知美がどうとか、匂い嗅ぎキャラ。
明日美−−ルーシーいいですよね。ルーシー大好き。
佐々木−−じゃあ、今度『発狂3』とかやったら出てもらおう。小ルーシーとか(笑)。金髪で同じシンメトリーの動きで、クンクン、ゲッて。今回の『血を吸う〜』でも、ルーシー大活躍だから。英語喋るし。阿部寛と二人で。


ひとみ−−阿部さんも凄いことになってますもんね。
佐々木−−三輪ひとみが阿部さんと恋人同士の役なんだよね。阿部寛の若い頃が68年で、いったい何十年生きているんだみたいな。でも、三輪ひとみさんは役あってるじゃない。
ひとみ−−身長差もすごいしね。阿部さんものすごく大きいですよね。
佐々木−−阿部さんが横分けじゃなくて、真中分けにしたところが凄く笑えるんだよね。
ひとみ−−ネタバレしまくりじゃないですか。
佐々木−−もっとおそろしいネタがたくさんあるから、全然OKでしょう。阿部寛と二人でくるくる回るところとかね。
ひとみ−−そんなところ…メルヘンチックな感じというか。
明日美−−メルヘンチック似合わないもんね。お姉ちゃん。
佐々木−−でも、今日は明日美ちゃんも来てよかったよね。ここに出て来ても遊んでるみたいな。
ひとみ−−どこにいても遊んでるよね。仕事中でも。私は現場に行くとしゃべらないんですが、あっちゃんは現場でもあっちで喋って、こっちで喋って。いつも笑ってるか、喋ってるかだよね。
佐々木−−僕は仕事したこと無いから判らないけど、性格はどうなの?ひとみさんって暗いじゃん。基本的に『発狂〜』とかそういうキャラクターがいい。貴方は基本的に“陽”のキャラでしょ。やはり里美じゃなくて、小ルーシーかなみたいな。
明日美−−そうですね、何とも反論できないから。そういえば、お姉ちゃん現場で喋らないですね。なんで?
ひとみ−−わかんない、暗い役が多いからかな。
明日美−−そうだよね、人殺しちゃったり(笑)。だから、特殊女優とかいわれちゃう。


佐々木−−それは、いつからいわれてるの?
ひとみ−−『発狂〜』からですよ(苦笑)。
佐々木−−それは、俺の責任か(笑)。多分、柳下さんの特殊翻訳家とかがあって。
ひとみ−−その、延長線上で。じゃぁ、監督も特殊監督ですね。
佐々木−−そうね。俺もそういう仕事しかこないから。次はVシネなんだけど、『ゾンビ極道』という。ヤクザものはやりたいけどやったことが無かったら、主演は小沢仁志さんだっていうんで絶対にギンギンだと思っていたら、悪い親分に殺されたヤクザが雷にうたれて蘇ってって話だった。やっぱしなんか、ついちゃうよね。だから、『LOVE SONG』とか俺の所には絶対来ないよ。
明日美−−『発狂〜』とか『血を吸う〜』とかこういうのが好きなんですよね。なんといったらいいか、特殊な映画。これらは、なに映画になるんですか。
佐々木−−娯楽映画です。インド映画のように。
ひとみ−−でも、映画って観てる人を喜ばせたり楽しませたりするものがいいですよ。感動もいいんだけど……観て疲れちゃうようなのよりは、観て笑えた方がね。

なお、会場で販売されていたDVDは、佐々木監督と三輪ひとみさんの直筆サイン入り。さらに、その中の1枚か2枚には、裏面に三輪明日美さんの直筆落書き(笑)入りだったそうです。なんか意味不明で、そうと聞かなければ気づかないメモ書きのようなものらしいのですが、ひょっとしたら将来お宝になるかも?!
ところで、『発狂する唇』DVDに特典映像として収録されているメイキング映像には、第二夜のトーク・イベンにも参加された吉行由実さんのアクション(?)シーンの舞台裏や、たまたま撮影を見学に来ていた三輪明日美さんの姿なんかも、バッチリ収録されているそうです。個人的には最初に観た時うかつにも明日美さんの姿には気づきませんでしたが、吉行さんの方は、3テイク。吉行さんに「熊欣欣さん、スパルタで(笑)」と言わしめたこの場面をはじめ、『発狂〜』ファン垂涎の貴重で楽しいビハインド映像が23分も収録されておりますので、『発狂〜』ファンの皆さんはお見逃し無く。なお販売元であるアップリンクのサイトでは、消費税・送料分サービスで購入できます。

執筆者

HARUO MIYATA

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