男の使命、それは命をかけて守ること。ただし、決して恋に落ちないことーー。メグ・ライアン&ラッセル・クロウ、話題のカップルが共演した「プルーフ・オブ・ライフ」が3月、遂に日本公開となります。これに先駆け、2月6日にはメグ・ライアンが自家用ジェットで東京入り。着いたその日に新宿・パークハイアットで会見と大忙しのメグですが、「日本にまた来れて嬉しい。よくよく見るとこの場所は前の会見の時と同じ部屋では(笑)」とラブコメの女王らしい茶目っ気を振りまいてくれました。とはいえ、本作では夫を誘拐された妻を気丈に演じ、新境地を切り開いた彼女。撮影中は24時間ボディガード付きという異様な経験もしたそうです。





——“ラブコメの女王、メグ・ライアン”がこうしたシリアスなドラマに出演しようと思ったのは。
 この話をもらった時、自分のターニングポイントになる予感がしたの。何故かはわからないんだけど。出演するまでK&R(誘拐身代金)を扱う企業があるなんて知らなかったし、身代金保険があるなんてことも知らなかった。そういう意味で興味が湧いたし、ロケは南米だったので、アドベンチャー気分もあったのかしら(笑)。この映画はすごくインターナショナルでスタッフ、キャストの国籍を合わせると22カ国にもなるの!もうひとつの理由は、アリスのように厳しい状況に置かれても妥協しない女性を演じたかったからね。

——撮影中のエピソードを。
 撮影に半年掛かったんだけど、撮り順はばらばらでした。南米でのネゴシエーションのシーンは撮影の最後だったから、スタッフはクタクタ(笑)。記憶に残っているのは群集がたくさんいるマーケットのシーン。現地の天候は変わりやすくて、突然霰が降って来る(笑)。びっくりして近くの教会にかけこんだら、水が噴き出してきて今度はずぶぬれになってしまった(笑)。あとで聞くとそこはかつて毒ガスのテロがあった場所らしくて…。そういうことが日常的に起こるような土地なのね。

——この話はトム・ハーグローヴの実話がもとになっています。役作りのうえで彼の奥さんにも会われたとか。
彼の奥さんは協力的だったし、息子さんは撮影のお手伝いまでしてくれたわ。けれど本当は被害に遭われた家族と話すのはとても難しいこと。さらわれる人は一人でも被害に遭うのは家族全員で、皆が心に傷を負ってしまうから。

——大スターだけに誘拐を自分の身に置きかえることはありませんでしたか。
 映画の中にも出てくるセキュリティ会社が、撮影中、わたしたちを護衛しにきてたの。7日間24時間、ボディガードがつくという非常に奇妙な体験をしたわ。この映画でも描かれていると通り、お金と命がバーターされる事実が世界中で起こっていることに驚きを禁じえないわね。




——ラッセル・クロウとの共演は。
ラッセルは俳優としても人間としても素晴らしい人。スタッフ全員にインスピレーションを与えてしまうほどの影響力を持っていたわ。

——実力派女優の起用が多いことで知られるテイラー・ハックフォード監督ですが、現場はどうでした?
監督はいいストーリーを作ることに全力をかける人。そして、自分の意見はめったに曲げない(笑)。火花散らす場面も、正直言うとあったかも(笑)。

——劇中のさりげないファッションに目が行きますが。
衣裳にはいつも気を遣っているんだけれど、アリスのワードローブを集める作業は特に楽しかったわ。コスチュームデザイナーのルース・マイヤーズは、すごく才能のある人で、なんてことはないシンプルなTシャツを持ってきてはベルト締めてドレスアップしたり…。映画に出てくるものは、たまたま、そこにあった服ばかり。でもね、衣裳を見せたら監督は怒ったのよ。『こんな格好してる奴はいないぞ!』って。だけど、ある時空港に行ったら全く同じ格好をしてる人が4人もいたんだから(笑)。

——あなたがいると現場が明るくなるでしょう。チャーミングな笑顔のヒミツは。
 だって、そう苦労してるわけじゃないんだもの(笑)。素敵なホテルのスィートに泊まれるし、役柄だって別に手榴弾投げたりするわけじゃない(笑)。それなのに、文句ばかり言ってたら逆に皆が怒っちゃうんじゃないかしら(笑)。

執筆者

寺島まりこ

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