セシル・B・ディメンテッドって誰ですか? ハリウッドを憎み、シネコンを燃やし、ビッグスターを誘拐し、映画のためとあれば女優をビルから突き落とす!!ジョン・ウォーターズ最新作「セシル・B・ザ・シネマ・ウォーズ」(プレノンアッシュ配給、シネ・アミューズ、シネ・リーブル池袋にてGW公開)のニューヒーローは、彼をも超える過激派監督である。演じるは“「タイタニック」を蹴った男”で余りに有名なスティーヴン・ドーフ(本インタビュー中に事実と若干違うことが判明するのだが)。1月下旬、都内ホテルの一室に現れたドーフは端正な顔立ちに気さくなアメリカン・スマイルを振りまき、インタビュアーもうっとりの図。「俺が誘拐されたら最高の演技をするよ。ビルからだって飛び降りるてみせる!!」とファンに誘拐されても知らないぞ、と返したくなるコメントを残してくれました。




——ジョン・ウォーターズ監督の化身のようなセシル・B・ディメンテッド。役作りは監督を意識しましたか。
スティーヴン・ドーフ(以下S) 撮影中にジョンの顔を盗み見て、こんな表情をしているのかってチェックしたことはあったけど、全体的にはどうかな。余り意識しなかったよ。実際のジョンは時間を無駄にするのが嫌いで、撮影はスムーズだった。セシル・Bよりずっと段取りはいい(笑)。

——撮影は監督の故郷ボルティモアで行われたとか。
S 僕たちは毎日6時には仕事を終え、ジョンが行きつけの「チャールズ」ってバーによく顔を出したね。ジョンは禁煙中なんだけど金曜日の夜だけは別。夜中の12時を過ぎると吸い出すんだ(笑)。別の日には強面のバイカー連中が集まるホリデーハウスに足を運んだ。いましがた30人くらい殺してきたよう見える連中なんだけど(笑)、細身のジョンに抱き着いて歓迎の意を示してくれたよ。
ボルティモアはすごくいいところだよ。ジョン自身があの町を作り出したような、そんな感じだったな。

——シネコンに襲撃する場面がありますが、普段はシネコンに行ったりすることもあるのでしょうか。
S 大きい映画館でいい映画を観るのは大好きなんだよ。でも、シネコンはちょっと増えすぎかな。僕としては一つの作品をひとつの劇場で上映する方が好みにあっている。ハリウッドのチャイニーズシアターなんかが気に入ってるね。日本で「セシル・B〜」はどこでやるのかな。(“シネ・アミューズ”、“シネ・リーブル池袋”と聞くと、“good one?”と何度も尋ねる)



——“映画がそんなに好きな”セシル・B。演じるドーフさんが好きな映画は。
S スティーブン・ソバダーグ監督の「Traffic」。あれは面白かった。ショーン・ペン監督、ジャック・ニコルソン主演の「The pledge」も、映画自体はまずまずだったけど(笑)俳優の演技はすごかった。もうひとつは「リトルダンサー」(日本でも現在公開中)。この1年で良かったのはそんなところかな。

——監督は何故、セシル・B〜の役をあなたにお願いしたのでしょう?また、あなた自身、こうした作品に出ることでアンチ・ハリウッドの烙印を押されるような、そんな懸念はありませんでしたか。
S 何故、僕を選んでくれたかは…わからない(笑)。でも、僕にとってはジョン・ウォーターズ作品に出るってこと自体が、安全な場所にいるように感じた。ハリウッドの仕事が来なくなるとか、そういうことは余り考えなかったね。実際、「セシル・B」の後にハリウッド作品に出たよ。

——これまで何度も聞かれたことでしょうが「タイタニック」を断ったことを
後悔したことは一度もなかったんですかね。

S …………(笑)、そう、その質問。ホントに何度も聞かれたよ。でも、あれはね、断ったわけじゃないんだよ。毎週、毎週オファーの内容が違ったんだよね。今週やってくれって電話が来たと思ったら、次の週には別の俳優にオファーがいってる。そんな繰り返しだったんだよ。



——ハリウッドの体制に切れて、電話を何台も壊したことがあったそうですが。
S それ、誰から聞いたの!?(配給のプレノン・アッシュが発行した『ウォーターズ通信』を指差すと、“やられた”という表情で同社篠原社長を見やる)うん(苦笑)、ハリウッドに対する怒りってだけじゃなくて、頭に来た時は壁に向かって、電話を投げつけるね。でも、ちょっとチープな怒りかもしれないね。今度は車を壊すかな(笑)。

——「セシル・B〜」で、あなたが誘拐するワガママ女優をメラニー・グリフィスが演じています。実際の彼女も、いかにもセレブな女優なんですか。
S ………(笑)。ジョンのキャスティングは最高だよ。でも、引き受けたメラニーもすごく勇敢だったと思う。映画の役同様、売れっ子の生活だからね。

——もし、あんな監督に誘拐されたらどうする!?
S 最高の演技をするよ!!ワイヤーなしでビルから飛び降りろって言われたって、やってみせるね(笑)。

執筆者

寺島まりこ