『タイピスト!』『モリエール 恋こそ喜劇』など幅広い役柄を演じるフランスの人気俳優ロマン・デュリス出演の最新作『パパは奮闘中!』が4月27日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開致します。

愛する妻がある日突然行方不明になり、仕事や育児をひとりでこなさなければならなくなった主人公と子供たちの、奮闘の日々、愛と絆を描く感動作!第71回カンヌ国際映画祭批評家週間で絶賛され、フランスで2018年の最注目となった本作。ベルギー版アカデミー賞、マグリット賞でも作品賞・監督賞含む5部門を受賞するなどベルギーでも高い評価を受けている。監督は、初長編作「Keeper」で70を超える映画祭に招待され20の賞を獲得した、ベルギーの新鋭ギヨーム・セネズ。仕事一筋でダメなところもあるけれど心優しい父親をロマン・デュリスが熱演。「ロマン・デュリスはキャリアの中で最高の役を見つけた」(パリ・マッチ誌)、「生き生きとして、美しい映画。ふたりの子供たちが感動的だ」(テレラマ誌)など絶賛を浴びた。『若い女』のレティシア・ドッシュが主人公を支える妹役を好演し、注目の実力派が華を添える。妻の大切さに改めて気づき、成長していく父と子供たちが、希望と爽やかな感動を届けてくれます。

公開に先駆け、ギヨーム・セネズ監督のオフィシャルインタビューが到着致しました。

——あなたの映画的なバックグラウンドを教えて頂けますか。これまで一般的にあなたが影響を受けてきた作品や、好きな監督というと? 

「僕の趣味はとても幅広くて、娯楽映画から尖った作家主義的な作品、アートフィルムなど、いろいろものを観るよ。でも15歳の頃、友だちがみんな『ジュラシック・パーク』を観ているなかで、僕はむしろマイク・リーやアベル・フェラーラの映画を観ていた。若いときは1日3本映画を見ることも少なくなかった。でもいま、40歳になって思うのは、虜にさせられる映画はむしろエモーションに満ちた作品、そしてとくに俳優の演技に魅せられる。物語それ自体というよりも、俳優の演出が光っていて、彼らがとても輝いているものに心を奪わられる。たとえばロシア映画だったり、パトリス・シェローやマイク・リーの作品など、素晴らしいなと思わせられる」

——あなたのこの作品も、主演のロマン・デュリスが素晴らしいですよ。でも彼はいままでこういうタイプの役柄をやったことがなかったので、ここまで演じられるとは想像がつきませんでした。

「そうだね。たしかに彼のこれまでのイメージは、洗練されたパリジャンとか、都会的な青年、ライトな役柄が多かった。でも僕は前から彼に注目していて、彼には飛び抜けたクリエイティビティがあると思っていた。彼はとても柔軟な俳優だ。ジャック・オディアール、クリストフ・オノレ、パトリス・シェローといった、フランスの素晴らしい監督たちとやってきた。デビュー当時の、『青春シンドローム』や『ドーベルマン』といった作品も覚えている。だから最初から彼にはクリエイティビティがあると思っていた。でもそのあとで、だんだん同じような役をオファーされるようになっていたけれど、きっとロマン自身はチャレンジが好きなんじゃないかと感じていた。僕がこの役をオファーしたとき、彼はとても興奮して、『こういう役はやったことがない。すごく面白い!』と言ってくれた。思うに、リスクを冒したがる俳優というのは多くない。僕は彼に沢山の自由を与えたから、彼もすぐに僕を信頼してくれた。すぐれた俳優が監督を信頼してくれたら、その作品に多くのものをもたらしてくれると思う」

——脚本には、セリフなどすべて書かれていたのですか。

「脚本はあったけれど、それはむしろ予算を探すためのものだった。一方で、彼には、セリフの書かれていないものを渡した。だから僕らは、キャラクターの人格形成についてたくさん話し合ったよ。俳優はみんな自分の演じるキャラクターの人格を見つけ出さなければならないけれど、それは難しいパートだ。でも一旦見つけてしまえば、そのあとはシーンごとに、その場面で描きたいことを明確にし、そして即興で演じてもらう。そうしながら、少しずつセリフを与えていく。だから最終的に出来上がったものは、最初の台本とそんなに異ならない。でもプロセスがふつうの映画作りとはとても異なったと思う。
 僕は俳優たちに、ここに座ってこうして、といった言い方はしない。すべて俳優の好きなようにさせた。たとえば10テイクとるとする。リハーサル無しに僕はすぐにカメラを回したのだけれど、最初の4、5回ぐらいはリハーサル替わりだ。そのあとに何かが生まれてくる。それは自由や即興性をもたらす。僕は俳優が言葉を探しているときが好きだ。だってふだんの生活は、そんなものだろう。映画ではふつう消されてしまうような、そういうディテールが好きなんだ。だから僕の現場では、俳優もスタッフもみんな一緒に考えて、脚本を最良のものにする。そういう仕事のやり方が好きなんだ」

——でもこの映画の場合は、小さな子供たちもいます。そういうやり方で子供たちと一緒に仕事をするのは難しかったのではないですが。

「そうだね。でも一方で、子供たちにセリフを与えてその通りに喋ってもらうのも難しい。これまで映画に出たことのない子供たちと、50本ぐらいやっているロマンのあいだで、いずれにしてもお互いがお互いのことを聞いて対話をもたなければならないわけで……。そこが俳優を演出する難しさだ。俳優は往々にして、自分のセリフだけ言って、相手のことを聞いていないことがあるから。でも相手が何を言うかわからない子供だったら、聞かざるを得ない。だから今回のようなやり方は、ベテランの俳優と子供たちというような、経験の異なる俳優たちを一緒に演出するときに、とくに有効だと思った」

——家族がとても自然な様子でしたが、撮影に入る前に、彼らを一緒に過ごさせたりはしなかったのですか。

「それは人によりけりだった。たとえばレティシア・ドッシュはそれを望んだからそうしてもらった。でもロマンは望まなかった。彼はむしろ新鮮さや即興性を現場のためにとっておきたがった。
 子供たちは映画を撮るのが初めてだったから、現場がどんなものかわかっていなかった。だから僕は子供たちと、母親役のルーシー・ドゥベイとともに、多くの時間を過ごしたよ。リハーサルをしたわけじゃなく、ただ一緒に公園に行ったり、遊んだり、アイスクリームを食べたり。そうやって時間を過ごして慣れていった。だからケース・バイ・ケースで、それぞれの俳優が望むものを満たしていった。だって俳優はみんな自分のやり方があって、準備の仕方も違うからね。監督は、それぞれの俳優がやりやすい環境を作ってあげることが肝心だと思う」

——本作のテーマについてお聞きします。あなた自身、子供と引き離された経験が影響しているそうですが、その前にまず、自由を求める女性を描く、というアイディアもあったとか?

「そうだな、ええと2つのことがあった。僕は離婚して子供と離れたけれど、一週間ごとに彼らの母親と交代で預かっていたから、すべてはうまく行っていた。それでも僕が恐れたのは、元パートナーに、『わたしたちは遠いところに行くから、もうあなたは子供と会えなくなる』と言われることだった。
 映画という仕事はとても時間をとられるものだから、私生活とのバランスをとるのは大変だ。僕にはバランスがみつけられないのではないか、という恐れがあった。それがまずひとつ、シナリオの基本にあった。もうひとつは、父親の視点の他に、今度は母親の視点で見ることだった。母親の自由、たとえば母親が男性のように自由を求めて子供を捨てる、ということはタブーだ。父親の場合はあったりするのにね。社会でタブーのものを映画で見せるのは、興味深い。それも母親を決して断罪しないように。思うにこの映画がうまくいった理由のひとつは、家族の者たちが母親のことを決して断罪しないことだ。彼女はもういないけれど、その名残、彼女のエスプリはつねにそこにある。それがこの映画が成功した鍵のひとつだと思う」

——でもその一方で、勇気があると思うのは、映画ではあえて彼女がなぜ家族を捨てたのか、説明がされていないことです。つまり、彼女を守るということをあえてしていません。だから観客にとってはたぶん、彼女を好きになるのはちょっと難しいのではないでしょうか。

「そうかもしれないね。でも2つのことが言えると思う。ひとつは、もし理由を説明したなら、それはやはり断罪することを避けられないということ。たとえば鬱になったから子供を捨てた、ということにしたら、観客のなかには、わたしだって鬱だったけれど子供は捨てなかった、と思う人がいるだろう。だから理由をつけてしまうのも困難だ。もうひとつは、観客にスペースを与えたかったということ。観客によって、共感を寄せるキャラクターが異なるような。それゆえに僕は、エモーションを観客に伝えることにこだわるんだ。というのも、それによって観客はキャラクターにシンパシーを感じるから。そしてそれは、観客それぞれが生きてきた経験によっても異なる。僕が思うに、観客が能動的に、理由なり根拠を与える方が、力強いと思う。映画は最終的に観客に属するものだ。それが美しいと僕は思う。
 面白いのは、この映画のある試写のとき、母親が最後にきっと戻ると思う人は?と聞いたら、客席の半分が手をあげた。つまり残りの半分はそうは思わなかった。それは素晴らしいことだと思う。とにかく、監督がこれはこうだ、こう見ろと指図するような映画を僕は好きじゃない。まるで監督が観客よりも知的なんだと言っているような(笑)」

——さきほど、母親は不在だけど家族はつねに母親の存在を感じているという話がありましたね。その点でこの映画は、『クレイマー・クレイマー』を彷彿させます。実際この映画のために、あなたが影響を受けた作品はありますか。

「たくさんあるよ。『クレイマー・クレイマー』ももちろんその一本だ。実際俳優によって、違う映画を参考に挙げた。ロマンには『クレイマー・クレイマー』、とくにあの映画のメイキングが素晴らしいから観てもらった。映画から何年も経ったダスティン・ホフマンのインタビューがあるんだけど、彼は当初、あの映画をやりたくなかったんだ。というのも、ちょうど離婚したばかりで、当時は離婚も少なかったから、風当たりも強かったんだね。それでも結局引き受けて、それから何度も監督と相談して脚本が変更された。彼の貢献ぶりを見るのは素晴らしい。たとえばあるシーンで、彼は相手役のメリル・ストリープのすぐ脇にグラスを投げつける。彼の説明では、それは脚本に書いていなかったけれど、そうしたいと思ってカメラマンにだけ相談した。でもメリルにも監督にも伝えていなかったから、グラスを投げたとき、メリルはびっくりした。素晴らしかったよ!と彼はカメラに向かって説明している(笑)。このメイキングはとても参考になったよ。ロマンには他にも、ロッジ・ケリガンの『Keane』も参考にしてもらった。一方、ロール・カラミーには『ノーマ・レイ』を参考にしてもらった。
 小説やドキュメンタリーからもたくさんインスパイアされている。それは個々の俳優にとって、自分のキャラクターを見つける助けになったと思う。あとは工場や労働組合を訪ねて、観察してもらうこともした。ローラやロマンにはとても助けになったと思う」

——ひとつだけ、とてもフランスらしいと思ったのは、ロマン扮するオリヴィエが、妻がいなくなって傷心なのにも拘らず、ロール扮する同僚の女性と一夜を共にしてしまうところです。
「(笑)日本だったらそうはならないのかな?」

——かもしれません(笑)。あるいは、『クレイマー・クレイマー』でもそういうシーンはなかったかと。

「たしかにピューリタン的ではないねえ。でも彼らも愛を必要としているのは確かだ……。僕は、より今日的な感じを出したかったんだ。というのも、伝統的な家父長的社会で男が頑張って、女性はそれに従って、というのはとても古臭い。僕はそうじゃなくて、女性も外で働いて、もっと自由で積極的で、それでたとえ男女が一夜を共にしてもそれはおおごとじゃない、性の自由もあるだろう、という方がより現代的だと思った。だからといってそれは、オリヴィエが妻のことを愛する気持ちに影響を及ばさないんじゃないかと。ここでも僕は、キャラクターたちを断罪することをしたくはなかった」

——同時に、ロールの役も、女性としてとても能動的で自立していて、現代女性の感じがよく出ていますね。

「うん、たぶん彼女はオリヴィエが愛を欲しているということがわかっているのだと思う。それに、おそらく彼女との会話は、オリヴィエが妻との会話では持てないものだ。それはオリヴィエを刺激し、彼を変化させる。それによってオリヴィエも、より女性のことを理解するようになる。だからあのシーンを僕は気に入っているんだ」

——また工場のリストラ、失業問題などは、今日の社会を反映したテーマですね。

「僕が思うに、映画とは芸術作品で、芸術作品とは芸術家が世界を見る視点でもある。だから僕はこの作品に、今日の社会への視点、今日的な問題への視点を与えたかった。リストラとか、新たなキャピタリズム、ネオ・リベラリズムといった問題。そうして、こういう世界が個々の家族や子供たちにどんな影響を与えるかを見せたかった。
 フランスでは今、黄色ベストの問題が起こっているけれど、僕が誇りに思うのは、彼らが出てくる前にこういう映画を作ったことだ。というのも、黄色ベストは誰かといえば、それは仕事のない、社会の底辺にいる人々ではなく、まさにこの映画のオリヴィエやローラのような、仕事もある、いわば多くの庶民階級の人々だから。毎日仕事をしても、夫婦で共働きをしても、どんどん事態が悪くなっていくという。それこそ僕が見せたかったものだ。なぜならそういうことは、メディアや映画ではほとんど描かれないことだから。フランスの政治の場でほとんど語られない。そこには軽蔑がある。それこそマクロン大統領がわかっていないことだ。彼は、そういう人々は学がなく失業している層だと思っているけれど、実際はそうではなく、黄色ベストは毎日仕事をしても、うまくいかない人々のことなんだ。今日の社会のこうした問題を映し出すことはとても大切だ。それはシネアストとしての、僕らの仕事でもあると思う」

【ストーリー】ある日突然、愛する妻が姿を消した。ふたりの子供たちとともに残されたオリヴィエは、オンライン販売の倉庫でリーダーとして働きながら、慣れない子供たちの世話に追われる。なぜ妻は家を出たのか。混乱しながらも妻を探し続けるオリヴィエのもとに、北部のヴィッサンから一通のハガキが届く…。

監督・脚本:ギヨーム・セネズ 共同脚本:ラファエル・デプレシャン 出演:ロマン・デュリス『タイピスト!』『モリエール 恋こそ喜劇』レティシア・ドッシュ『若い女』、ロール・カラミー『バツイチは恋のはじまり』、バジル・グランバーガー、レナ・ジェラルド・ボス、ルーシー・ドゥベイ 
ベルギー・フランス/2018年/99分/フランス語/字幕:丸山垂穂 配給・宣伝:セテラ・インターナショナル 宣伝協力:テレザ、ポイント・セット
協賛:ベルギー王国フランス語共同体政府国際交流振興庁(WBI)
@2018 Iota Production / LFP – Les Films Pelléas / RTBF / Auvergne-Rhöne-Alpes Cinéma
4月27日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開