6人の新鋭監督がデジタルビデオを駆使し、”エロティーク”な世界を紡ぎ出す”ラブシネマ”。シネマ・下北沢の好評企画となった同シリーズもはや3弾目、11月25日から行定勲監督の「閉じる日」が上映となりました。当日は監督および主演の沢木哲、綾花が舞台挨拶。「テレビを見ててもテロップが流れたりと結論がなんだか最初から決まってしまっているような時代。結論の出ないもの、というか、観る人によって解釈の違うものを作りたかった」(行定監督)、「一週間で撮った作品なんですけど。これだけのものが出来るなんて初めて知りましたよ」(沢木哲)、「撮影の一週間、眠れなかったけど楽しかった。私にとって生涯、忘れられない作品になりそうです」(綾花)。和気あいあいの行定組、深夜に熱弁を奮い、全員揃って翌朝の撮影に遅刻したとも。現場の楽しさが伝わってきた20分トークを一部紹介しましょう。






舞台にあがるなり「めちゃくちゃ緊張してまして」と共通のコメントを飛ばした3人。そのせいか、当初はマイクの譲り合い。「何か話してよ」と監督は左にマイクを渡すものの、沢木哲、綾花両人から出るのは観客へのお礼と”映画はいかがでしたか?”のリピート。ところが、舞台の稽古中で顔を出せなかった富樫真さんのメッセージが読み上げられた後、監督は不思議と饒舌に。ちなみに、手紙は以下のような内容。『音楽も登場人物も映像も景色もすごく繊細。美しさの中のどろんとした感じ、あるいはその逆なのか…。この映画は私自身、大好きな作品です』。

「閉じる日」は19歳の時に書いた脚本を”ラブシネマ”用に焼き直したという監督。「(読み返した時)今の自分とちょっと違うなという感じはありましたね。19歳って言ったら、ちょうど沢木より少し上くらい?19歳の頃ったら、何も信じてなかった」。思わず頷いてしまった沢木哲に「僕のこと、信じてなかったでしょ」とチャチを入れ、「でも、僕は沢木を信じてたよ。映画監督って信じないとできないですよね。例えば、沢木がどういう解釈で動くかわからないんだけど、結局信じなきゃ出来ないよね」。

 映画初出演の綾花は緊張と不安の連続だったとか。「でも苛めてないよね。ちょっとエッチな撮影もあったけど(笑)。女優さんとして、多分一生に一度くらいしかない瞬間を映像に留めておけたと思いますよ」。前作「ひまわり」で釜山国際映画祭・国際批評家連盟賞を受賞したばかりの行定監督。新宿シネマカリテで凱旋レイトショー中とのことで、お時間の許す方は「閉じる日」とペアでいかがでしょうか。

執筆者

寺島まり子

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