エベレスト標高8,848メートル、頂上まで約100メートル
まさに、人間が近づくことが許されない神の領域。そこに、俺たちの仲間が眠っている—。

アジア初ヒマラヤ8,000メートル級高峰14座の登頂に成功した、実在の登山家オム・ホンギル率いる“ヒューマン遠征隊”はエベレストで死んだ仲間の亡骸を探すため、記録には残らない過酷な遠征を行った。それは、誰一人として試みなかった、名誉も栄光もない挑戦。山の上では一つになり、山の下では家族であった仲間たちが命をかけたのは、繋ぎ続けたかった友との“絆”だった。彼らの死線を越えた友情が与えてくれる本物の感動。命を賭した熱き77日間の真実がいま語られる。

本作は、韓国で同時期に公開された『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』を抑え初週1位の動員を記録、最終800万人の大ヒットとなった。俳優たちは、減圧トレーニング、岩壁、氷壁の登攀まで登山家さながらの撮影準備訓練を行い、臨場感溢れるリアルな映像を作り上げるためヒマラヤ、モンブランでの危険な撮影に臨んだ。
韓国で『国際市場で逢いましょう』『ベテラン』と立て続けに動員1000万人を超える大ヒット作品に主演したファン・ジョンミン。確固たる意志、強靭な精神力で仲間を幾多の危機から救ってきた隊長オム・ホンギルを熱演した彼のオフィシャルインタビューが到着いたしました。




Q:ファン・ジョンミンさん、どう見ても体力がありそうに見えます。特別に保養のために食べられているものはありますか?

いいえ。保養のために食べている物はありません。赤いですよね?(自分の皮膚が赤いから?)これ、全部力なんです。(笑)

Q:『ヒマラヤ』をやらなければならないと決心された契機はなんでしょうか?

韓国の山岳映画は、ほとんどないじゃないですか?だからこそ、この映画が気になりました。また、『ダンシング・クイーン』という作品を通してイ・ソクフン監督とご一緒したこともありましたし、『ヒマラヤ』のスタッフの中にも以前にご一緒した方がたくさんいました。だから、同じメンバーで別の映画を作るということにわくわくしました。でも、実際に撮影に入ると、本当に大変で…。実際に8,000mまでは登りませんでしたが、8,000mに登っていくのと同じくらいの難しさがありました。山岳映画というものは簡単ではない挑戦だったと思いますし、反省もたくさんしました。みんな、‘辛い’と言っていますが、本当にそのくらいつらかったと思います。

Q:今回の撮影を通して、山についての考えが変わりましたか?

3日かけて登らないと到着しない撮影現場に向かいながら、写真でしか見たことが無い風景と雪を見ることが出来ました。自然の前では、人間がどれほど小さな存在なのかを感じました。実際に、ヒマラヤ12座まで登頂された方々に、“一体どうして、こんな大変な山に登るんですか?”とお伺いしましたが“ただ好きだから”という答えが返ってきました。その答えを聞いて“なぜ俳優をやるんですか?”という質問の答えと同じだと思いました。俳優という職業が大好きなためこうやって続けているのと同じ感覚だと感じました。

Q:大変だった撮影についての感想

最初はどのくらい大変なのか分かりませんでした。俳優、スタッフ、全員が山岳映画というジャンルに初めて挑戦したので、参考にするものがありませんでした。例えば、アクションや、ラブストーリーなどはモニターを通してどのシーンが最も良いか判断材料がありますが、今回は山が舞台となっていてそのような資料がなかったのが大変でした。
そして、私だけが大変だったのではなく、みんなが大変でした。どんな映画を撮影するときも、たくさんの方に力を借りていましたが、『ヒマラヤ』の場合、力になってもらえることがありませんでした。例えば、山に登っていく間、一般のスタッフの方も自身の生存をかけていました。私たち、俳優たちは本人の荷物だけを持っていけばよいですが、スタッフの方々は、重い荷物も持っていかなければならないので、もっと苦労されました。そのようなことに対しての感情が、最後の撮影の時に溢れていました。少しでも緊張を緩めてしまったら大きな事故が起こるかもしれないという状況が多かったのにも関わらず、事故もなく、終わることができたことに本当に感謝します。

Q:撮影が終わったあと、皆の絆がより一層深まったのか?

そうですね。一度、戦争で共に戦ってきた戦友たちのように、他の作品でも、撮影が終わってから連絡を取ったりしますが、特に『ヒマラヤ』の同僚たちは、お互い言葉にしなくても目を見ればわかるというような絆があります。本当に感謝の気持ちでいっぱいですし、立派な人たちです。今回の撮影を共にやりきったということ自体が、素晴らしいと思います。

Q:“オム・ホンギル”隊長の決心をどのように理解して受け取られましたか

現場では先輩として、ヒョン(お兄さんの総称)として主人公として、非常に寂しいという思いが強くなりました。以前は、スタッフたちと共に笑い、しゃべりながら、楽しく過ごしていた時間が多かったですが、いつからか、みなさんが私に気を使って接するようになりました。自分が近づいて行こうとすればするほど、スタッフたちの緊張感を感じました。仕方がないことかと思いますが、そのような度に、感じた寂しさは、オム・ホンギル隊長が山でリーダーとして、ひとりで背負わなければならなかった感情と近いのではないかと思いました。オム・ホンギルというかたが、素晴らしい人物で、ヒマラヤ14座を登頂されたという事実は知っていましたが、彼がどんな事をしたのかということは詳しく知りませんでした。撮影を通して、隊長の本心を少しずつ分かっていったと思います。

Q:実存の人物であるオム・ホンギル隊長を演じられて、実際にオム・ホンギル隊長にお会いして、お話をされましたか?制作記映像の中で、本人が率先しなければならないという考えや、崩れてはいけない(負けてはいけない)というリーダーとしての姿を見せてくださいましたが、どんな気持ちで演技されたのか教えてください。

私は、オム・ホンギル隊長を、まだ生きていらっしゃる方を演じるということに負担がありました。私が、単純にオム・ホンギル隊長のマネだけすればよいというわけにはいかないので…。そして、実際に16座を達成された方ですし、その部分については、実際に私が経験することができるわけでありません。実際にお会いして、お話もたくさんしましたが、経験的な部分は、オム・ホンル隊長という役を演じるにあたって、大きい部分を占めていませんでした。
一番大切なことは、オム・ホンギル隊長の山に対する態度、人への接し方や精神について、という部分でした。でもそれらは、言葉で表現できるものではなく、共に過ごしてみて自然に現れるものたちであり…。でも、恥ずかしかったからなのでしょうか、そのことについてのお話はあまりして下さいませんでした。でも、見方を変えるとこれは、自分をすべて見せるということでもありますよね?私はむしろ、撮影をしながら少しずつ分かってきました。リーダーとしてチームを引っ張っていかなければならないという宿命を感じ、撮影をしながら自身のこのような気持ちが、オム・ホンギル隊長が感じられた感情なのではないかと、思いましたし、たくさん反省もしました。山が与えてくれる大きなエネルギーよりももっと重要なことは、“人”であると思いました。台本を読んだ時は感じなかったことも、撮影をしながら感じるようになりました。そのため、私には非常に大きな意味のある作品ですし、誇らしい時間でした。そのような感情を感じるようになってからは、私がオム・ホンギル隊長に近づけた気がしました。公開までもう少しお待ちください。ありがとうございました。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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