アイス・キューブ、「レンやドレーと一緒にマイクを持ちたい」と再結成を切望!
息子オシェイ・ジャクソン・Jrの演技もベタ褒め!

N.W.A.は1986年にアメリカ、カリフォルニア州コンプトンで結成されたたヒップホップ・グループでメンバーはイージー・E、MCレン、DJイェラ、アイス・キューブ、ドクター・ドレー、アラビアン・プリンスで構成。アメリカで屈指の危険地帯とされるコンプトンで彼らは暴力に走らず、ラップという表現で権力者たちに立ち向かう。映画タイトルの元にもなったデビューアルバム「Straight Outta Compton」は暴力的なリリックを含みながらも理不尽な社会への反骨精神を等身大で表現したことが若者を中心に大ヒット。これが黒人差別をする警察暴力への反対運動を爆発的に加速させ、社会現象にまで発展。遂にはロサンゼルス暴動の渦中に置かれ、N.W.A.は警察、そしてFBIからも目をつけられる「世界で最も危険なグループ」へと成りあがったのだ。

$red Q: この作品のプロジェクトの製作期間は長期に渡りましたが、完成した作品にはどんな思いがありますか?  $

アイス・キューブ(以下、IC): とても気に入っている。俺たちは5年間、これをまとめることに力を注いだんだ。俺たちよりもうまくやれる人がいるとは思えない。

$red Q:製作をうまく進めるために、どのように進行したのですか? $

IC: 俺は映画が完成するとは全く思っていなかった。この映画には予測できないことがたくさんあり、相当な勇気が必要だと思ったんだ。あまりにも途方もない作品だから、映画会社は引き受けないだろうと思った。リスクが多すぎるし、相当な物議を醸すだろうと思ったんだ。ところが、ユニバーサル映画のドナ・ラングレーは勇気を持って引き受けてくれた。彼女には本当に感謝している。それから、4年間この作品に最後までずっと取り組んでくれた監督のゲイリー・グレイにも感謝している。

$red Q: この映画で一番大切なメッセージは何でしょうか? $

IC: 俺にとって大切なことは、主張したいことがありながらも、恐らくもどかしい状況の中にいる世の中の若者の後押しをして、彼らの創造力を刺激することなんだ。破滅的になる必要はない。建設的になるんだ。音楽をやったり、アートや詩でもいい。自分の空虚感を満たし、主張を表現できると感じるものであれば何でもいいんだ。この映画にはいくつかのテーマが貫かれている。それは、自らの権利は自分で守ること、言論の自由、そして、合衆国憲法修正第1条(言論・宗教・出版・集会・報道・請願などの自由を議会が妨げることを禁止した条項)がテーマなんだ。


Q: 何年も経った後に、自分の過去に再び命が吹き込まれるのはとても不思議なものだと思います。

IC: とても不思議なものだ。過去に戻って、自分が正しいことをしていなかったら、歴史を変えたくなるものだ。いつもシュールに感じていたよ。

Q: この映画で自分の過去を変えたり、少し書き換えたいという誘惑は全くありませんでしたか?

IC: ないね。というのも、俺たちが経験してきたことはとても鮮烈なもので、複雑であり、独特なものなんだ。作り話をする理由はなかった。一番大変だったのは、何を残し、何を省くのか決めることだね。俺たちは、10年という時間を2時間になんとか詰め込もうとしたんだ。映画の中に入れられないような細かいことがあるが、俺たちはできる限りすべてのことを映画の中に収めようとした。だから、観客には俺たちの過去や道のりを感じてもらえると思う。

Q: オシェイ・ジャクソン・Jrはオーディションが2年間続いたと言っていました。あなたの息子であっても、役が決まっていたわけではないのですか?

IC: 違う。俺は息子に、オーディションに一生懸命に取り組まなければいけない、他の候補者を打ち負かし、真摯なフィルムメイカーのF・ゲイリー・グレイだけじゃなく、この映画に大金を注ぐ映画会社にも認めてもらわないといけないんだと話したんだ。息子は全員を完全にぶちのめさなくちゃならなかった。息子は時間をかけて努力して、立派な役者にならなくちゃいけない。2年で、人目を引く演技ができるようになる必要があったんだ。

Q: 彼は、あなたが素晴らしい指導者だと言っていました。

IC: 俺は、俺を演じる役者が誰であっても、演じる際に必要なことをすべて与えたと思う。息子には、当時俺が考えていたこと、当時の状況に対して思っていたこと、知っていたこと、知らなかったこと、あとになって知ったことを分かってもらいたかった。イージーやドレーに対する思いを息子に知ってもらいたかった。俺は、息子が必要とする情報をすべて与えるようにしていた。

Q: 彼の演技についてどう思いましたか?

IC: とんでもなく上手かった。息子の演技を見て、あれは俺じゃなくて自分の息子だと自分に言い聞かせなくちゃならないぐらいだった。息子は、俺の代わりにアイス・キューブに変わったんだ。だから、観客にはそのチャンスはもうない。息子がやり遂げたんだから。

Q: あなたはオシェイ・ジャクソン・Jrが成長する過程で、自分の音楽を聞かせましたか?

IC: ああ。子供たちが俺の音楽に何かをつかんだり、引きつけられた時にはいつも、俺はその音楽について説明し、その背景を教えた。何かを隠そうとするのは正しいことじゃないし、俺が子供たちには俺の音楽をまだ理解できないと思っていると子供たちが考えでもしたら、俺は信用されなくなってしまう。だから、俺は、子供の時に見るべきものはできる限り子供たちにいつも触れさせたんだ。子供たちは大きくなると、自然に俺の映画を見ていたり、レコードを聞いていたりしていたんだ。

Q: 子供たちがそういったものに触れることに、あなたは大丈夫だったのですか?

IC: そのことに関して俺は大丈夫だった。子供たちには正直であるべきだと思う。子供たちは、親から聞くべき話を街の噂で聞くべきじゃない。俺は、子供たちがどんなことでも俺に話ができるようにあって欲しいといつも思っていた。俺が父親モードに突然なって、現実を見ることに叱るとは思ってほしくなかった。俺は子供たちを過保護にせず、世間知らずにならないように育てたかったんだ。

Q: オシェイ・ジャクソン・Jrは、あなたとは全く違う環境で育ちました。彼があなたの人生について分かった中で、一番驚いたことはどんなことだと思いますか?

IC: 俺が低所得者の住む地域とそこに隠れたあらゆる危険なことを、案内したことだと思う。息子にはそこで経験したことを話した。それに、息子もそれを経験することができて、ある意味嬉しかった。それは安全に管理された状況で行われたが、息子にとってあの経験ができたのはいいことだったと思う。低所得者の住む地域で大人になることがどういうことか分かったんだ。息子は、今後その状況に陥った場合にどうすれば自分の安全を確保できるか覚えておいてくれると思う。

Q: あなたにとって、コンプトンは今でも故郷のように感じますか?

IC: 今でもそうだ。俺の家族はみんな、低所得者の住むあの地域にいるんだ。そこから出たのは、俺だけだ。俺たち家族の行事ごとのほとんどはコンプトンでやっている。

Q: このプロジェクトに関わった人は皆、その地元のコミュニティーは撮影をとても暖かく迎え入れてくれたと話しています。

IC: 地元の人は俺たちのことを愛していたし、今でも愛している。この映画の撮影のために街から出ることはせずに、地元にとどまり、そこの住民を雇用したことで、俺たちを大事にしてくれるんだ。彼らは俺たちを援助してくれて、俺たちは彼らをエキストラとして使った。俺たちは住民に映画に参加していると感じてもらいたかったんだ。

Q: かつてのN.W.A.の仲間と協力して、また一緒に仕事をした経験はどのようなものでしたか?

IC: 俺たちは、昔の思い出にふけり、語り合ったが、映画製作が全て現実に起きていて、俺たちの経験したことを映画にする価値があるなんて信じられなかったね。俺たちはみんな仲がいいんだ。このプロジェクトは和気あいあいとした中で進み、観客がこの映画を楽しんでいる姿を見るのは、この映画をハリウッドに汚されることなくスクリーンにかけるために費やしたあらゆる努力に対する報酬のようなものだ。大変なことだったが、それだけ苦労する甲斐があるものだった。

Q: N.W.A.を再結成する可能性は?

IC: 先のことは分からないけど、俺たちは再結成について話し合ってはいる。俺はレンやドレーとまた一緒にマイクを持って、何かしたいと思っているよ。

Q:アルバム「ストレイト・アウタ・コンプトン」を再レコーディングすることにしたのは興味深い決断です。どうしてその決断を下したのですか?

IC: 俺たちは、いろいろな段階でこの映画の撮影をしたんだ。そのアルバムのレコーディングを撮影することもあった。その時に、完成したアルバムを使うわけにはいかなかった。だから、その製作過程中の本物の曲が必要な時のために、いつでも使える楽曲を全て用意する必要があった。それに、再レコーディングはキャストの仲間意識には素晴らしいことだと思った。彼らが単なる俳優ではなく、本当に仲間になるにはね。

Q: そのアルバムをレコーディングしているシーンは特に真実味に溢れていましたが、音楽中心の映画で俳優が真実味をもってうまく演じることは難しいものです。どのようにしてうまくやれたのですか?

IC: 俺たちは、そのシーンで俺たちが本当にセッションしているようなものにする必要があった。俺たちのセッションは楽しいものだったんだ。仲間が立ち寄ったり、女の子が周りにいて、酒を飲んでは、ワイワイ騒いで、最高の音楽をやっていたんだ。俺たちはそれを映画の中で感じたかったし、みんなに俺たちが楽しんでいたことを知ってもらいたかった。みんなのイメージの中には、緊張感があって、抗議的でハードコアなものと思っていたかもしれない。だが、俺たちはコンプトンから出てきた5人のガキだったんだ。俺たちはいつも地元の住民としての意識を持っていたし、世界の舞台に立って、運のない日なんてありえないと思っていたんだ。

Q: オシェイ・ジャクソン・Jrがあなたの足跡の後に続いていることはうれしいですか?

IC: もちろんだ。この映画では何よりも息子のことが嬉しいんだ。いろんな面で誇りに思う。息子が最高の仕事をしたことを誇りに思うし、これでうまくいけばキャリアを始められるんだ。それから、プロデューサーとしても誇りに思う。この映画は俺にとって最高なものになったからだ。

Q: 今振り返って、この映画の製作中にご自身についてどんなことが分かりましたか?

IC: 俺には物事をまとめていく力があることを学んだ。このプロジェクトが空中分解しないようにいろんなことをやったんだ。何度も何度もいろんな場面で空中分解しそうになった。人が辞めていくのに数え切れないほどの理由があったんだ。このプロジェクトはとても困難なものだった。殺しの脅迫もあった。いろんなことがあったんだ。日増しに困難なものになっていったが、俺たちは戦い続けた。

Q: それから、あなたの若かりし姿、スクリーン上に映った男についてどんなことが分かりましたか?

IC: それほど違いは感じなかった。スクリーンの中の男は今でも俺で、俺はその男なんだ。俺たちはスーパーヒーローだとは思ったこともなかったが、この映画を見ると、スーパーヒーローが誕生するのを描いた映画のように思えるんだ。当時はそんな風に感じられなかった。

『ストレイト・アウタ・コンプトン』ブルーレイ+DVDセットリリース中
¥3,990(税別)発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

執筆者

Yasuhiro Togawa

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