【わたしの映画の創り方(4)〜ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2016編〜】

全国主要都市にて2週間限定公開中の映画『ドクムシ』。
原作は合田蛍冬のコミック『ドクムシ』。2013年に「E★エブリスタ」にネット小説として投稿された八頭道尾の『コドク〜蠱毒〜』にオリジナル要素を加えて漫画化した作品で、電子コミックは350万ダウンロードを超える大ヒットを記録し、2014年、大手電子書店で年間売上第1位を獲得した。

映画化に当たっては、『仮面ライダーディケイド』の仮面ライダークウガ役で女性ファンを魅了し、舞台『弱虫ペダル』やミュージカル『RENT』などで活躍中の村井良大、空手家であり女優として大進撃を続ける『祖谷物語〜おくのひと』『進撃の巨人』の武田梨奈をW主演に抜擢。
劇団EXILEメンバーの秋山真太郎、『SR サイタマノラッパー』シリーズの駒木根隆介、「トップコート20thスターオーディション」グランプリの水上京香、『ウルトラマンギンガS』の宇治清高、期待の新人・野口真緒など、コミック版のキャラクターとの比較も楽しいキャスティングとなった。

前回のインタビューではファンタジックホラーの『女の子よ死体と踊れ』、音楽ドキュメンタリーの『RADWIMPSのHESONOO Documentary Film』、そして本作『ドクムシ』と活躍著しい朝倉加葉子監督にお話を伺ったが、今回は村井良大さんと秋山真太郎さんのお二人にご登場願った。厳しい合宿撮影を経て信頼関係で結ばれたお二人の爆笑トークを公開!


















●『ドクムシ』をどこまで実写化できるのだろうと思っていた

——最初、漫画『ドクムシ』を読まれての感想はいかがでしたでしょうか。

秋山:正直な感想としては、エッチだなって(笑)

村井:エッチで過激で。これを実写化するのはどうするんだろうなと思いましたね。

秋山:どこまでやるのかなと。役が分かってから読み始めたんで、台詞量が多いし大変かもしれないなって思いながら読みましたね。

——脚本が上がってからはいかがでしたか?

村井:小説や漫画を読んで、ここをチョイスしてるんだとか、ここはカットしてるんだとか、色んなことを考えたんですけど、一本の映画としてまとまっていると率直に感じられたから、観やすい映画になるんじゃないかなと思いました。

秋山:当時は漫画だと3巻まで出てたんですけど、僕らは結末を知らなかったんで、成る程、こうなるんだっていうのと、それぞれのバックグラウンドが劇中には出てこないんで、しっかり作ってから臨まないといけないなと思いました。

——ご自分の役はどういうキャラクターだと捉えられましたか?村井さんのレイジは普通の大学生で、観る人が一番感情移入しやすいキャラクターですね。

村井:そうですね。レイジは観客が思ってることを代弁してくれるキャラクターです。とても日本人ぽいというか、周りに流されたり周りの意見を待ったりして。親しみやすいキャラクターだけど、優柔不断でなかなか行動力のない青年だなって感じましたね。

——秋山さんは新聞記者のユキトシ役で、状況を冷静に観察しつつ楽しんでいるようでしたね。

秋山:ユキトシはレイジと対照的に一番感情移入しにくいであろうキャラクターだと思いました。自分の正当性みたいなものと折り合いをつける作業というのは最も大事にしたポイントでしたね。

——朝倉監督からはどのような演出がありましたか?

村井:僕はあんまり言われなかったですね。

秋山:俺は結構細かく調整があったよ。のっけはみんなフラットな状態で始まるんですけど、ユキトシが途中からみんなを悪に引きずり込もうとするまで、フラットの状態をどう保つか。塩梅っていうかバランスっていうか。脚本はものの数秒で悪の顔がチラつくんだけどさ(笑)。そのニュアンスみたいなものを細かくやりましたね。本番前に一人芝居して監督に見せて、こういう感じで行こうと思うんですけどって相談して。

●閉じ込められた7人と同じ気持ちを味わう7日間

村井さんは一週間、それ以外のキャストは6日撮影に臨んだという。
『ドクムシ』で男女7人が7日間のカウントダウンで閉じ込められる状況に近いものとなった。

——村井さんは一番変化のあるキャラクターですが、演じられていかがでしたでしょうか?

村井:食べ物もなく、段々と体力も減っていって、思考力も判断力も弱くなって行く。段階をどう踏んでいくのかを考えましたね。「この時は判断力がないですよね」とか相談しつつ、後半パキッと変わる場所があるんですよね。段々と自分も蠱毒の壷の中にいるかのような苦しさを感じつつ。周りが信じられなくなって、絶望に浸っていく感じで。普通の青年だったのに何が彼を変えてしまったのか。演じていて自分でも楽しかったですね。

——秋山さんはいかがでしたか?

秋山:ユキトシはレイジと逆に「きれいごとは抜きにしようや」みたいなキャラクターだと思います。表層的な部分を取り繕っているように見える6人の中でも、1番取り繕っているのってレイジだと思うので、「本当はこう思ってるだろ?お前のその曖昧さや優柔不断さがこういう悲劇を生み出したんだぞ」みたいな。レイジの本質を掘って掘って、皮を1枚ずつ剥いでいくような感じがありましたね。でもね、色々な意味で一番可哀想な人間なのかなとも思いますね。

——限られた空間の中でバトルがありますが、印象に残ったエピソードはありますか?

村井:僕が秋山さんの首を絞めるシーンがあって、首を絞めるのって結構お芝居だとバレやすいんですよね。上手い観せ方がわからなくて、秋山さんに「すみません。結構強めで行っていいですか」って相談して(笑)。秋山さんは「大丈夫だよ」って仰ってくださったので、結構思い切ってやっちゃいましたね….(笑)

秋山:ちょっと危なかったね(笑)

村井:本当にすみません!(笑)永遠に画像は残るので、そういう意味ではお互い全力で出来たのかなと。カットがかかったあとは「本当にすみません!」みたいな感じになって(笑)

秋山:落ちないギリギリのところまでやったよね。首って絞めると簡単に危なくなるんで(笑)

村井:形だけ力を入れてもバレバレなんですよね。肉の圧が結構分かる。

秋山:絞める方も大変ですけど、受けも物理的にやってくれた方が顔を真っ赤に出来るし。

村井:こういう広い心でやってくださったんで(笑)

——お二人の渾身のバトルシーンは必見ですね。秋山さんはバトルで印象に残ったことは?

秋山:肉弾戦もそうですけど、「あいつがやってんじゃないか」「あいつを先に殺しておけば」とか、そんな心理的なバトルもあるんですよね。僕はあからさまに言葉のバトルを仕掛けてますけど、台詞を発しなくても感覚のバトルがかなり繰り広げられてるんじゃないかなと思いました。そっちの方も必見だなと思います。

——撮影の中で特に大変だったことは?

村井:厨房室に鍋があるんですけど、そこで3日目ぐらいの時に。(秋山さんから笑いが起こる)
鍋に水を張って豚肉を人間の肉みたいに見せて撮影してたんですけど、それを夏の日に一晩放置したんですよ。物凄い臭いになって。

秋山:(しみじみ)キツかったねぇー。鼻が曲がるような変な臭いっていうのがあって(笑)。それがずーっと続いてて。あれは気持ち悪かったですね。窓も開けられないから。換気できない。

——登場人物と同じ気持ちを味わったみたいな。

村井:まさにそうですね(笑)

●断食の誓いを破ったのは武田さん!?

——武田梨奈さんと共演されていかがでしたか。

村井:なんですかね。あんな女優さん居るんですね。俺久々に、唸ったなー。真に迫ってる感じが。今までどういう人生経験して来たんだろうって思いました。

——何をしても生き延びないといけないというあの気迫ですか?

村井:そうですね。あの芝居の質はなんなんだろう。

——特にそれを感じたシーンは覚えておられますか。

村井:2人で「ミチカが怪しいんじねぇか」みたいな話しをしてる時にもみ合いになって一対一でバチバチぶつかるシーンがあったんですよ。対面して喋ったときに、「オレこの人には勝てないな」って思ったんですよね(笑)。ダメだ、止めらんないと思って。そこで凄いなーと思いましたね。

——対面しただけでもそういう気迫があったんですね。

村井:背負っているものが違うのかなーというのを感じましたね。

——撮影の合間にお話はされましたか?

村井:みんなでしましたね。まあ、年頃の女の子というか(笑)

秋山:今時にはないような素直で素朴で。これぞ女優さんみたいな。そんな印象を受けましたね。全くすれてないというか。食事制限をみんなでやりましょう!ってなって、武田さんも「私もやります!」って言ったんですけど、舞台挨拶で一旦東京に帰って、戻って来たらソワソワしてるんですよ。「何か食ったろ!?」って聞いたら「食べましたっ!」って(笑)。明らかにケーキかなんかつまんで来たらしく。そういうのを隠しきれない。素直な人で(笑)

村井:確かに健康になって帰って来ました!(笑)。あれ?みたいな(笑)

秋山:完全に軽くリフレッシュされている(笑)

——皆さん食べてないから、敏感に感じられるんですね(笑)

秋山:そうですね。あとやっぱりアクション。凄いですね。
俺は頬を張られるシーンがありまして、「全然遠慮しないでね」って言ったら、すっごい来て!!!(笑)。
またそれが何かの都合で、「すみません、もう一回」ってなって(笑)。2回目も凄い本気で。バチコーン!!!
ただ運動神経があるから、下手な人がやみくもにやるのと違って、心地の良い痛さというか。音はしっかり出る。もう流石だなっていう(笑)

——会話で対峙するシーンの印象はどうですか?

秋山:そうですね。凄い繊細な感情の経路を経てる人だなあって。アクションを得意とされているというと、「真っ直ぐ」とか「強く」をイメージするんですけど、お芝居は全く真逆で柔らかくて繊細で、ああ全然違うんだなって思いましたね。

●グロい描写はあるけど人間模様が繊細に描かれた作品

——完成した『ドクムシ』を観ての感想はいかがでしたか?

村井:ワンシチュエーションものって僕自身も好きなんですよ。1つの空間でいろんなことが起こるのが面白いし。本当に密な現場で撮影の懐かしさも含めて、出来上がった映像を観ると今までの苦労が報われた気がしましたね。『ドクムシ』の実写版がちゃんと作れたのではないかなって。
やっぱりラストシーンが凄い好きですね。終わり方は大事で、印象の強い終わり方だったんじゃないかなと思います。詳しく言えないですけどね(笑)

——秋山さんはいかがでしたか?

秋山:思った以上にグロいなっていう(笑)

——朝倉監督がグロいものをさくっと撮られる資質の方だと思います(笑)

村井:サクッと(笑)

秋山:僕は言葉の暴力が多かったんで(笑)。こんな風になってるんだと。血糊の量もかなり多かったですし。凄いなーと思いました。ここまで再現したんだなっていう。あと苦労したのは、ご飯を設定に合わせて食べないようにしたんですよ。髭も剃った状態から実際どれだけ生えてくるのかやってみました。倒れないようにプロテインは摂って体重が増えないようにしたんですけど、3日食べないだけでもフラフラになるし。クランクアップの直前とかはなかりキツかったんで、正常な判断が出来ない。殺し合いになるって言うのもあながち大袈裟ではないですね。食事って凄い大事だなって(笑)。理性を奪いますよ。

村井:後半ホトケのようになってましたね!(笑)

——それは逆に穏やかになられたんでしょうか?

村井:無駄なカロリー消費をしなくなるんで動かない状態なんです(笑)。段々石みたいに(笑)。何もかも受け入れるホトケのようで(笑)

秋山:ワハハハハハ!

村井:最後に僕らアクションあったじゃないですか。あれはキツかったですよね。秋山さんは僕らの何倍も苦労されたのではないかと思います。

——最後に観客の皆様に一言お願いします。

村井:R15言うことで、過激な映像もあるんですけど、それよりも人間模様というか。人が人を裏切ったり、感情の変化やみんながおかしくなっていく様子が繊細に鮮明に描かれていますので、観るのが怖いと思う方もいるかもしれないですけど、ヒューマンドラマの少しエグいバージョンとして、観て頂けたら観易いんじゃないかと思っています(笑)

秋山:自分だったらどうするだろうって考えてしまうと思うんですね。7人7様のやり方で蠱毒を生き抜いて行こうとする。演者さんに照らし合わせて観ていくのも楽しいですし、そのキャラクターのバックグラウンドに何があって、こんなことを言ったりこんな行動をするんだろうって考えながら観るのも楽しみ方の一つだなと思います。何回も観て楽しんで頂けたらいいなと思います。

執筆者

デューイ松田

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