2004年度より、映像制作者の人材発掘と大阪を映像文化の創造・発信拠点とする事を目指して助成作品のバックアップを行って来たシネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)。

 これまでにCO2を通過した個性的な面々とその後の作品を挙げると、『コープスパーティー』監督/山田雅史、『ソウル・フラワー・トレイン』監督/西尾孔志、『スキマスキ』監督/吉田浩太、バンクーバーの朝日』監督・石井裕也、『ウルトラミラクルラブストーリー』監督/横浜聡子、『Playback』監督/三宅 唱、『大阪外道』監督/石原貴洋、『Fly Me to Minami〜恋するミナミ』監督/リム・カーワイ(監督)他、数々の映画制作者が活躍中だ。

 実験的・個性的、時には無謀と思われるような企画が通ってしまうところがCO2の特徴であり面白さでもある。企画を支える俳優の演技力も重要視され、昨年度より助成企画3枠のうち2枠を【新人公募枠】、1枠を【俳優特待生起用枠】とし、CO2ワークショップで演技を学んだ俳優特待生5名の中から1名を主演にするという、演技力向上を目的とした新たな試みも行っている。
 
 この度、選定された15企画の中から一次選考、最終選考、選考委員会を経て3本の第12回CO2助成企画と監督が決定した。3月の大阪アジアン映画祭での上映を経てその後作品をどう観客に届けていくのか、彼らの長い戦いは続く。挑戦者となった3名の監督たちにインタビューを行った。







■CO2助成作品・俳優特待生起用枠
『私は兵器(仮)』三間旭浩
<ストーリー>
父が母の愛人を撲殺する現場を目撃してしまった丸瀬望都(14)は、これまで正しいと信じてきた父の別の顔にショックを受けながらも自身の中に芽生えた暴力衝動を否定できなかった。12年後、26歳になった望都はピアノ講師として婚約者の息子・藤井釈(10)を教える傍ら、行き場のない暴力衝動のはけ口として復讐代行組織に所属していた。そんなある日、望都は「藤井釈の手を潰してください」という依頼を受ける。
(※現段階でのストーリのため、変更になる場合があります)

●人が剥き出しのものになる不思議
——今回の企画を一言で表現すると。
三間:「人が理性を捨てて剥き出しのものになっていく状況を描きたい」ということでしょうか。

——人間が持つ暴力性に興味を抱いたきっかけはなんですか?
三間:もともとそういった映画を観ていて、人が暴力性に目覚めていくことに興味がありました。

——実際の事件などにも触発されましたか?
三間:僕自身は暴力とは関わりがないし、関わりたくもないという嫌悪があるから、逆に引っ張られるのかもしれません。
実際の事件も影響はあると思います。警察や教師としてそれなりの役職についている人や、優しい性格だった人が突然事件を起こしてしまったり。何でなんだろうとずっと疑問に思っていました。

——CO2に応募したきっかけは?
三間:もともとこの企画自体は2、3年前からずっと考えていました。東京藝大の修了制作で長編を一本作ったんですけど、なかなか次を撮るチャンスがなくて、この企画を長編として撮りたいなと考えた時に、CO2がある!と。

——修了制作で作ったのはどんな作品ですか?
三間:群像劇です。無関係だった3世代のカップルが関係性を持っていき、最後に結実していくという静かな話でした。今の興味としては人間関係を台詞で描くだけではなくて、肉体を使った表現を加えていきたいですね。

●舞台にない映画の魅力とは
——映画を好きになったきっかけは?
三間:7つ上の兄が映画好きでそれに影響され、高校の時くらいから観始めました。
ハリウッド映画から、アート映画みたいなものまで観てましたね。今は映画館で観ますが、高校生の頃はビデオ世代でレンタルで観ていました。そのうちに映画を撮りたいなって。

——映画を撮るきっかけになった作品はありますか?
三間:それまでは単純に映画って面白いなって感覚で観てたんですけど、一番衝撃を受けたのが『地獄の黙示録』(監督:フランシス・フォード・コッポラ)。単純に面白いだけで片付けられない映画で、何なんだこれは、みたいな。自分の言語では処理できない映画でした。
規模は違っても、言葉に出来ない衝撃を受けさせる映画を作りたいと思いました。

——観る側から撮るという行動に出たのは?
三間:京都造形を選んだ時から映画を撮るつもりでした。
今でこそ映画学科として映画を中心にやってる学科なんですけど、数年前は映像舞台芸術学科という名称で、映像そっちのけで舞台ばかりやっていた時期もありました。役者として舞台に立つのが面白かったんです。

——何故役者でなく作る側になったんでしょうか?
三間:舞台は楽しいんですけど、役者として自分よりもっと面白いやつがたくさんいるはずだという思いがあって。演じるより裏方にいる方が向いていると感じていたのと、舞台と映画を比べてやはり映画の方が好きで、卒業制作は映像にしました。

——舞台にない映画の魅力とはなんですか?
三間:フレームの中に物事をおさめて、それを積み重ねて世界を構築していく映画の方が、舞台で役者を演じるよりも向いている気がしました。舞台も映画も、どっちも楽しかったんですが。

——卒制はどんな作品を撮りましたか?
三間:実験映画と劇映画を合わせたような映画で、講評会では“よく分からない”ってけちょんけちょんに言われましたね(笑)。今観返すとそうだよなって感じで。それでも映画祭に出品されて、賞をもらったりしたので、人の評価というものは多種多様なんだと感じました。
 卒業制作を撮った後に2年間バイトしていた時期があって、CO2に応募しようとしてたんですけど、東京藝大に受かったので結局応募せずで。東京藝大は黒沢清さんに学べるってことで受けました。

●言葉に出来ないものが残る作品を目指して
——黒沢さんからはどういったことを学びましたか?
三間:具体的に何を学んだかはわからないんですけど、監督としての姿勢でしょうか。
講義は喫茶店やファミレスに集まって映画談義をされるだけなんですけど、言葉に説得力があって面白くて為になりました。

——黒沢作品のどこに惹かれますか?
三間:ひと言で語れないところですね。黒沢さんもいろんな商業映画を撮っていますが、実験映画とは違って、ストーリーは分かるけど単純に総括出来ない。一筋縄でいかないところに惹かれます。

——ご自身も一筋縄でいかないものを撮りたいですか?
三間:一部の商業映画のような分かり易過ぎるものではなくて、ストーリーとしてはわかるけど言葉には出来ないものが残る映画にしたいですね。うまくいってるかは定かではないですけど毎回試みています。

——CO2では企画のどこが評価されたと思いますか?
三間:大阪市の事業の一環なので、暴力的な内容でどうかな?と思ってました。プレゼンテーションでは突っ込まれまくって(笑)、代弁者達っていう復讐を代行する組織が出てくるんですが、現実感がないと。あと、工場でピアノ弾くシーンがあるんですが、音の響く工場で弾くのはおかしいって(笑)。
それに対して強く反論できなくて、ダメかなと思いながら帰ってきたので嬉しい反面意外でしたね。

評価されたとしたら、会話劇で成立する内容ではないのと、CO2作品は商業映画にはない挑戦的な企画が多いので、それにかなったのかなと思います。

——CO2でどんなことに挑戦したいですか?
三間:暴力的な描写を撮るのは初めてなので、どう生々しく描けるか。暴力ばかりじゃなく、それに並行して人間関係も描いて骨太な映画にしたいですね。
日本だけじゃなく海外にも広がっていくような映画にしたいし、劇場公開もしたいと思っています。

執筆者

デューイ松田

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■CO2公式サイト