2004年度より、映像制作者の人材発掘と大阪を映像文化の創造・発信拠点とする事を目指して助成作品のバックアップを行って来たシネアスト・オーガニゼーション大阪(CO2)。

 これまでにCO2を通過した個性的な面々とその後の作品を挙げると、『コープスパーティー』監督/山田雅史、『ソウル・フラワー・トレイン』監督/西尾孔志、『スキマスキ』監督/吉田浩太、バンクーバーの朝日』監督・石井裕也、『ウルトラミラクルラブストーリー』監督/横浜聡子、『Playback』監督/三宅 唱、『大阪外道』監督/石原貴洋、『Fly Me to Minami〜恋するミナミ』監督/リム・カーワイ(監督)他、数々の映画制作者が活躍中だ。

 実験的・個性的、時には無謀と思われるような企画が通ってしまうところがCO2の特徴であり面白さでもある。企画を支える俳優の演技力も重要視され、昨年度より助成企画3枠のうち2枠を【新人公募枠】、1枠を【俳優特待生起用枠】とし、CO2ワークショップで演技を学んだ俳優特待生5名の中から1名を主演にするという、演技力向上を目的とした新たな試みも行っている。
 
 この度、選定された15企画の中から一次選考、最終選考、選考委員会を経て3本の第12回CO2助成企画と監督が決定した。3月の大阪アジアン映画祭での上映を経てその後作品をどう観客に届けていくのか、彼らの長い戦いは続く。挑戦者となった3名の監督たちにインタビューを行った。






■CO2助成作品・新人公募枠
『食べられる男(仮)』近藤啓介
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<ストーリー>
真面目一徹で生きてきた村田よしお(52)の元へ、ある日“捕食者認定証”が届く。これを受け取った人間は一週間後に宇宙人に食べられる。なぜ俺が?と混乱するも、真面目な性格ゆえ“下ごしらえ期間”に必要な任務をこなしていく村田は、別れた妻と娘に会いに行く。
(※現段階でのストーリのため、変更になる場合があります)

●「食」と「死」をテーマに
——今回の企画を一言で表すと?
近藤:地球人が宇宙人に食べられる話です。

——何故こういった企画を思いついたんでしょうか。
近藤:人が本気で悩んでる姿は滑稽やなというところからです。人が死について悩んでる姿って悲しいじゃないですか。そこに宇宙人って設定が入るだけで滑稽に見える。それから「食」とか「死」について考えるようになって、自分の中で得た答えをテーマにしてみました。

——具体的には「食」については何を考えましたか。
近藤:簡単に言えば残さず全部食べましょうってことなんですけど。自分の気持ちになって考えてみなさいあなた達、ということです。

——「死」に対してはどうでしょう。
近藤:今しか撮れない作品ってあると思うんです。例えば僕が主人公の50歳という年齢になった時は、今の僕より死に近づいている。死を意識し始める歳だから、その時にこの話は書けないと思います。今の僕やからちょっと斜めから見て描けてるんだと思います。

●映画制作に至るまで
——映画に興味を持ったのはいつくらいですか。
近藤:高校生です。それまでは幅広く観てる程度でしたが、何かものを作る、というのは好きで。あとは落語がめっちゃ好きで、よく聴いていました。映画を観るようになって漠然とぼくが考えた話があったんですよ。この話を何で表現したら一番面白いんやろうと。小説とか絵本とか色々考えたけど、映画なら面白く撮れるんじゃないかと思って大阪芸大に行きました。
何か観て撮ろうと思ったわけでは無いんです。

——大阪芸大に入ってどうでしたか?
近藤:壁を感じました。いくら自分がやりたいと思ってもお金の面など無理な事があって。ただ歳を重ねるごとにこうやったら撮れるというのが分かってきて。やっと今それを発揮できる場が来たなっていう感じです。

——大学ではどんな作品を作りましたか?
近藤:一回生の授業で誰かが書いた話を撮らないといけないとなって。元々コメディとして書かれたものを撮っても仕方ないと思ったので、敢えて〝自分の彼女が死んで、狂っていく彼氏”みたいな話を、面白く出来そうやなと思って撮りました。
コメディじゃないと捉える人が多いと思うけど、ぼくはコメディとして撮りました。脚本を書いた子の反応は、こんなつもりじゃなかったっていう感じですね(笑)。

——その後もそういうスタイルで?
近藤:それから4本撮りました。僕が一緒に脚本をやっている小村くんという男の子の演技が面白くて、その子を主演で撮った『小村は何故、真顔で涙を流したのか?』が第17回京都国際学生映画祭長編部門でグランプリをとりました。これが代表作ですね。それ以外は大したものは撮っていないです。
小村くんと2人で何が面白いか考えて、彼が本気で泣いているところが一番面白くて作った作品なんですけど、居酒屋で働いている居酒屋のバイトリーダーの男がバイトに命かけてて、それが故に見栄を張っているのがどんどん剥がれていって最後に涙を流すといったものです。

●落語が与えた影響とは
——ストーリーの作り方に落語は影響してると思いますか?
近藤:してると思います。話し方にも影響してると思いますし、物語が好きというのが根本にありますね。人が思いつかない話を考える自信があります。

——好きな落語家は?
近藤:桂枝雀と立川談誌です。僕が枝雀さんを知ったのは、枝雀さんが亡くなってからなのですが圧倒的な感性を持ちながら、自分に厳しく、自分を自分で認めかった故に、生涯を短く終えた枝雀さんの落語には、枝雀さんの生き様があらわれているように感じます。自分も自分に厳しくモノづくりをしようと思いました。
そして談誌さんの落語は型にはまらず、何かに反発するような、落語で何かを変えられるのではないかという思いを感じて、
僕も映画で何かを変えられるようなものを作りたいと思っています。
2人の落語や、話しの間、テンポ、発想、生き方、考え方を見て育った青春時代が、僕のこれからの財産になると思います。

——CO2に応募した時、自信ありましたか。
近藤:ありましたね。ぼくはコレが面白いと思います。でもどういう反応になるかは人それぞれ違うだろうし、これを見て悲しいと思う人もいるだろうし、怖いと思う人も。それでいいと思います。

●新しいジャンルを作りたい
——CO2はどうやって知りましたか。
近藤:大阪芸大の学生は毎年スタッフに入る人が多いので、それがきっかけでやってみようと思いました。

——プレゼンの時の選考委員の反応は?
近藤:けっこう笑ってくれました。僕が笑って欲しいと思ったポイントで笑って貰えて。

——評価されたと思う点はどういったところでしょう?
近藤:多分僕が〝これおもろい”って思う気持ちが固まっていることだと。僕の中で答えが出てるから分かりやすかったと思います。

——CO2に臨むにあたっての課題はありますか?
近藤:今面白いと思っている事を変えずにやりたいですね。大きな形は変わっていったとしても、ここは面白いというポイントがあるので、そこは動かないようにしたい。
誰も観たことない映画になるんで楽しみにしてください。めっちゃ大きい事を言うと新しいジャンル、「映画」という媒体から抜け出したくらいの新しいジャンルで何か出来ると思ってます。
海外の映画祭にも出していきたいですね。日本人とは違う見方をするんで、グロい描写であったり宇宙人に食べられるといったところも海外の方なら笑ってもらえると思います。

——新しいジャンルとはどんなものですか?
近藤:過去の映画歴史が積み重ねた、当たり前のイメージ。これは映画ではないとか、映画はこうだ。という概念から抜け出したいです。大学に入り、「CGばっかりじゃん、映画じゃないよあんなの」とか、「お笑いでしょ?コントじゃん、映画じゃないよ」とか、「ふざけすぎ、映画じゃないよ」とか言う人がいたので、驚きました。自分が考える映画の姿を表現したいです。

執筆者

デューイ松田

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