少年時代に強い絆で結ばれた性格も生き方も異なる親友同士の3人。ある日、ヒョンテの母親が経営する店で放火強盗事件が発生。大切な家族を失ったヒョンテは進まない捜査に苛立ち、インチョルとヒョンテを巻き込み、独自に事件を調べ始める。しかし事件の真相に近づくにつれ、3人の男たちに疑念が生じ、固く強い絆で結ばれたはずの3人の運命は思いもよらぬ方向へ暴走していくー。

チソン、チュ・ジフン、イ・グァンスという人気俳優陣が、非情な出来事によって極限状態に追い込まれ、急激に変化していく心理を三者三様のカラーで表現している本作。そのうちのひとり、チュ・ジフンのオフィシャルインタビューが届いた。

$red ーーー監督に対して、初対面から積極的にアプローチしたと聞きましたが。 $
-僕のイメージは出演作品を通じて作られていくと思っています。シナリオを読んでみて、監督もそういう風に思っているのではないかと感じました。しかもドラマ「メディカルトップチーム」を撮影しているときでした。監督とは初対面の場からお酒をかなり飲みました。お互いに言いたいことを言い合いました。そこで劇中のインチョルと近い姿が出てきたのです。

$red ーーー本編を見終えて、本作の影の主役はインチョルだという印象を持ちました。 $
-そうですね。物語の鍵を握っている人が重要だと思います。この作品のシナリオを読んですぐ、この役は私のものだという欲が湧きました。監督に対し「私にもこんな一面があります」と伝えたところ、監督からは「自分が会った俳優全員が同じことを言ったよ」と返されました。そこで私は言い返したのです。「そうでしょう、だけどその中には子犬もいれば虎もいるじゃないですか」と。すると監督は「では君はどっちだ」と聞いてきたので、「もちろん、子犬ではありません」と答えました。







ーーーとても良い作品選びをされたようですね。
-もともと私は監督と頻繁に会って話をするタイプです。イ・ドユン監督は眼鏡を外すとインチョルのような側面が垣間見えます。とても卑劣なまなざしを持っているのです(笑)。しかもインチョルだけではなく、ヒョンテ、ミンスも彼の中に存在しています。しかし直接監督を参考にすることはありませんでした。それが必要ないほどシナリオが完璧だったので。シナリオを読んだだけでも悩まなくてもよいほどすべての表現がそこに詰まっていました。

ーーー10キロ増量して役作りをしたと聞きましたが、そのビジュアルからも本作に出演する覚悟が感じられます。
-プロゲーマーもゲームをしてお金を稼ぎますが、ひどい肩凝りに悩まされ、手首は炎症を起こすと聞きます。どんな人でも努力をするのではないでしょうか。この映画では自分を中年らしく見せる必要がありました。10キロ太るくらい何てことないです。仕事でそれが必要なのにやらない方がおかしいと私は思います。

ーーー共演者についてはいかがですか。この映画を見て映画『友へ チング』を思い出しました。
-私も『友へ チング』のようだと感じました。クラシカルというか。劇中で三人の俳優が一緒に楽しく過ごしているような経験でした。チソンさんには本当に感謝しています。演技面でも彼が中心となってくれたおかげで自由に演技ができたし、私が無茶振りをしてもちゃんと受けてくれました。元々お酒を飲まない方なのですが、お酒の場もよくお付き合い頂けました。実はこの映画は拘束時間がとても長かったのですが、全く苦ではありませんでした。みんな早く終わらせて飲みに行こう、というような雰囲気でした。

ーーー好きなシーンについてお聞かせください。
-映画の雰囲気が全体的に重いので、映画の序盤にあるヒョンテの娘ユリの誕生日に三人が集まって楽しそうにするシーンが個人的には好きです。そのあと他の場面を撮影しながらも、この場面をずっと心に思い描きながら演じました。

ーーー監督から手紙をもらったそうですが。
-監督から手紙をもらいましたが、“チフン、私が台本を書いていたときに頭に描いていたインチョルが目の前にいてくれて、とても感謝している”と書かれていて、気分が良いのやら悪いのやら複雑な気分でした。私から変わったインスピレーションを得るようなのです。しまいには撮影中の私を見ながら、一年間止まっていた別の作品のシナリオを完成させたそうです。聞くところによると刺激的なキャラクターが登場するらしいのですが、そんなインスピレーションを私から得ないでほしいですね(笑)。

ーーー共演者についてはどう思われていますか。
-イ・グァンスは本当に真面目です。それは俳優としてとてもプラスになる素質なのです。異なる意見に対して全く拒否感を持たず、それを受け入れられます。かといって無条件に従うということではなく、オープンマインドで受け入れ、自分の考えと絶妙に折り合いをつけられる。チソン先輩はとても慎重な方でした。台本に対する姿勢も、演技する瞬間も慎重で、安定的な演技力へと繋げていっているようでした。

ーーーあなたにとって友達とはどういうものですか。
-すべてを受け入れてくれるのが友達というものだと思います。だけど相手に対価を求める関係ではなく、相手の顔色を窺うことなく気兼ねせずに楽な間柄であれば、良き友と言えるのではないでしょうか。

ーーー本作についてどのように感じていますか。
-そこにあるのが当たり前のように思っていてつい失いがちな大切な縁について、もう一度考えさせられる映画です。もう少し深く映画を見ようとするならば、この世の中で一体自分はどういう人間なのかという質問を投げていると思います。

ーーー次回作についてお聞かせください。
-『Treacherous Subject(英題)』という作品が決まっています。ミン・ギュドン監督から「次回作は一緒にやろう」とご連絡を頂き、詳細を聞かずにOKしました。以前ご一緒させて頂いた監督がまた声をかけてくださったので、とても感謝しています。監督と俳優の間でキャラクターに対する解釈が異なるので、親密な関係を保つことが大切なのですが、ミン監督とはすでに阿吽の仲なので不安はありませんでした。

ーーー観客へのメッセージをお願いします。
-この映画を見終わって劇場から出てきた観客の皆さんが、それまで忘れていたり蔑ろにしたりしていた友情、愛、その他の縁について思い出してくれれば幸いです。そして、焼酎が飲みたくなってくれれば、皆さんがこの映画と良い対話ができたということではないかと思います。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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