ハリウッド作品『クラウド アトラス』や日本映画『空気人形』のぺ・ドゥナと、『アジョシ』『冬の小鳥』のキム・セロンが主演、『オアシス』『ポエトリー アグネスの詩』のイ・チャンドン監督がプロデューサーを努めた『私の少女』。カンヌ国際映画祭「ある視点」部門、東京フィルメックスのコンペティション部門で上映され、観客やマスコミから絶賛され話題となった本作が、 5月1日(金)よりユーロスペース、新宿武蔵野館他にて全国順次ロードショーする運びとなりました。

監督は本作で鮮烈な長編デビューを飾った韓国映画界の新星チョン・ジュリ。女性監督ならではのきめ細やかな描写でリアルに物語を紡ぎだし、社会の闇を緊張感ある演出で浮き彫りにしてゆきます。イ・チャンドン監督が惚れ込んだオリジナルの脚本は、小さな村を舞台に、女性警察官と少女との出会いを、暴力、セクシャルマイノリティ、外国人の不法就労問題など様々な社会問題を交えて力強く描ききる〝希望の物語“です。

そして今回『私の少女』の主演を務めたぺ・ドゥナ&キム・セロンのインタビューが到着






≪ぺ・ドゥナ インタビュー≫
■シナリオを読んで5分で出演を決めたと聞いた。シナリオのどんなところに魅力を感じたのか?
私は本を読んだりする時もそうなんですが、本の序章、初めの一行が人の心を掴むと思うんです。このシナリオも最初の一行、二行を読んだ時になぜかそれを書かれた監督の芸術的な作家的な趣向が感じられてすごく素敵だと思いました。とても好意を持ってシナリオを読みました。シナリオが静かでありながらも、とても破格的で。シナリオを読んで作品に惚れました。シナリオを受け取った時は他の映画の撮影で外国にいたのですが、シナリオを読んで本当に5分でメッセージを送りました。「私にぜひやらせてください」と。それから、この映画にとても惹かれた理由の一つは、私自身『クラウド アトラス』や『ジュピター』とは全く違う、地に足のついた人間の役をやりたかったからです。そういうこともあって、このシナリオが私の心にすごく響いたことを覚えています。

■役作りのために準備したこと、どんなところに重点を置いて演技をしたのか?
まず、俳優が作品に入る時は、キャラクターのバックグラウンドについて調査をします。今回は警察官の役だったのですが、監督のお友達の中で実際に女性警察官の方がいて、ソウルのある町の派出所の所長なんです。私が演じるヨンナムも派出所の所長だったので、その方の派出所に見学に行って色々ヒアリングしたりもしました。それ以外は私自身の姿を役に込めて演技をした気がしますね。

■ヨンナムが考えるドヒはどんな子供だと思うか?
ドヒは母親に捨てられたり、家では虐待を受けていて愛を求めている子供なのだという感じがします。そしてヨンナムもまたドヒを通じて成長したと思います。ある種、ヨンナムにとってはドヒが女神のような存在だと言えるのではないでしょうか。

■キム・セロンとの共演はどうだったか?
とても楽しかったです。セロンはまだ若い子役でありながらもとてもプロフェッショナルです。子供とは思えないくらい大人っぽいですし、もしかすると私のほうが子供っぽいです(笑)。撮影中は彼女の演技の上手さに何度も驚かされました。

■ソン・セビョクとの共演はどうだったか?
セビョクさんはもともととても尊敬している俳優さんでした。ソン・セビョクとヨンハというキャラクターは全く違うのに、どうやったらあんな自然に役に入って演技ができるのだろうと思いました。カメラの後ろから見ていても本当に驚きました。「私もあんなふうに演技ができるようになりたい」と思いましたね。共演できて本当に光栄でしたし、それほど好きな俳優さんです。

■記憶に残っているシーン
正直、すべてのシーンが記憶に残っています。ドヒの祖母が海で亡くなるシーンは印象的でした。その時、私はソン・セビョクさんの演技が本当に怖かったんです(笑)。それから、ドヒとは感情を交感するシーンがたくさんありました。本当にセロンがドヒになりきって私を見て演技をするので、その本気を実際に感じました。

■撮影中のエピソード
クモドという島は、船に乗っていかないといけない島で、午後5時半には船が終わってしまうので島の外へは出れません。ホテルもないところなので、スタッフと一緒に部屋を使って民泊していました。撮影中は島に民泊しながら毎日同じメンバーで一緒にいたこともあって、良い意味で俳優もスタッフも仕事をしているという感じはなかったんです。それがとても力になったのは、部屋も一緒に使って、毎日一緒にご飯を食べて寝て、撮影してという具合なので、撮影中も自然にヨンナムになれたことでした。そしてクモドでは、韓国にこんな美しい海があるのかと驚きました。
この映画は6週間で撮り終えたのですが、徹夜をしながら撮影したことがとても印象的です。何しろ34時間連続撮影という、私の15年間の俳優人生で最長記録を出したんです(笑)。
最後、浴室でのシーンだったのですが私は裸で浴室に15時間くらいいて、体中にアレルギーがでたことを思い出しました(笑)。34時間目をあけたまま撮影できるんだと自分でも驚きました(笑)。

■チョン・ジュリ監督との仕事はどうだったか?
チョン・ジュリ監督は本当に物静かで怒らない監督です。私がポン・ジュノ監督と仕事をした時も本当に怒らない監督だなぁと思っていましたが、チョン・ジュリ監督はそれ以上です(笑)。まさにこの映画のシナリオのような方です。とてもやりやすかったですし、私たちを楽にしてくださいました。監督との仕事はとても楽しかったですね。

■『私の少女』が女優ぺ・ドゥナにとってどんな作品か?
この作品は私に初心を思い出させてくれた作品です。そして改めて韓国映画が好きになりました。誤解があるといけないのですが、それまで外国の映画が良かったと言っているわけではなくて、やはりこの仕事をしていると時には失望したり、傷ついたりもします。この作品はそんな私の治癒になった作品とも言えます。スタッフたちに愛されながら争うこともなく、素敵な共演者とスタッフ、監督と仕事ができて、作品を作っていく過程を心から楽しめて、本当に幸せでした。

■最後にこれから映画を観る観客へ一言
初めにこの作品のシナリオを読んだ時、すごくドキドキしました。そして自分以外のキャスティングを聞いた時、本当に嬉しかったです。現場ですごく良い気をもらいながら、みんなでベストを尽くして良い作品を作ろうと努力しました。期待されるくらい良い作品に仕上がっていると信じていますし、私たちの情熱を観客の皆さんも受け入れてくれると信じています。

≪キム・セロン インタビュー≫
■キャラクターづくりについて
まず、ドヒは感情の起伏がとても激しく、難しい子供だと思いました。ドヒの行動は私にとっても理解が難しかったので、しっかりとドヒの立場を把握しようと努力しました。
それから、ドヒは踊ることが好きなのですが、撮影のために踊りも少し習いました。

■”ドヒ”はとても難しいキャラクターだったと思うが、どんなところに重点を置いて演技をしたか?
先ほどもお話しましたが、ドヒがとても難しい子供なので、まずドヒの視線から物事を見る努力をしました。

■セロンさんが考えるドヒはどんな子供か?
ドヒはとても難しい子供ですね…。考えていることもそうですし、育った環境もそうです。

■ペ・ドゥナとの共演はどうだったか?
ドゥナさんは今でもとてもよく面倒を見てくれるのですが、撮影の時も自分のシーンでなくても私の撮影を見に来てくれて、ヨンナムとドヒの感情を合わせてくれました。現場でも本当にたくさん面倒見てくださいました。

■ソン・セビョクとの共演はどうだったか?
セビョクさんは役柄と違って実際はとてもユーモラスで面白い方です。撮影が徹夜になって疲れている時などに、隣に来てよく笑わせてくれました。

■記憶に残るシーンは?
後半のほうで埠頭で踊るシーンです。あのシーンを撮った時が一番記憶に残っています。

■『私の少女』は女優キム・セロンにとってどんな作品となるか?
これまでに経験したことのない役柄でしたし、今後他の作品をやる時にもこの経験は生かされるのではないかと思います。

■『私の少女』をこれから観る観客へ一言
『私の少女』、一生懸命にそして美しく撮影しました。公開されたらぜひ多くの人に観に来ていただければと思います。そして、いい映画、美しい映画として皆さんの記憶にいつまでも残る映画になれば嬉しいです。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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