上品かつ洗練されていて、ジェームズ・ボンドを彷彿とさせる衣装、そして機敏かつ華麗な動き、迫力の銃撃シーンとド派手なカーアクション。あなたが一番観たい、ピアース・ブロスナンが究極のスパイ役で帰ってきた。

伝説の元CIAエージェントが、守るべき者のため、自らの過去を清算するために、古巣であるCIAと自ら育てた現役スパイと攻防を繰り広げ、事件の裏に隠れた国際的陰謀に立ち向かうー。原作は、アメリカの作家ビル・グレンジャーが1976年から発表を始めた全13冊の大ヒットスパイ小説シリーズ「ノベンバー・マン」の第7作目「ゼア・アー・ノー・スパイズ」(87)。当時の冷戦を軸とした時代背景を、現在の複雑かつ深刻な国際情勢に置き換え、「ドローン」(無人撮影機)など最新鋭の映像技術とともに、徹底的にリアリズムにこだわり製作され、全米でスマッシュヒットを記録。すでに続編製作も決定している。

共演に、『007/裏切りの報酬』でボンド・ガールを務めたオルガ・キュリレンコをはじめ、オーストラリアの新鋭ルーク・ブレイシーが務める。監督は『ダンデス・ピーク』以来2度目のタッグとなる『13デイズ』、『リクルート』とアクション映画に定評のあるロジャー・ドナルドソン。

ピアース・ブロスナン、インタビュー







Q:このプロジェクトは、どのように始まったのですか?

A:うん、根性と直感で始めたんだけれど、これは最高の考えだったね。役者というのは大抵の場合、本能的な直観で行動するものだが、ビル・グレンジャーの作品はデヴェローという人物が明確に特徴づけられていて、深みがあって堅実だとすぐに分かったよ。彼の小説を基にした脚本を書くため、優秀な脚本家を見つけなければいけなかったけど、マイケル・フィンチとカール・ガイダシェクのコンビが努力を注ぎ、身を粉にし、新しい要素も加えて聖書のようなマテリアルを作ってくれた。素晴らしい脚本を完成させてくれた二人のおかげで、この映画を製作することができたんだ。

Q:久々にスパイ役を演じていかがでしたか?

A: これは僕にとってのリベンジでもあるんだ。正直な話、もっとジェームズ・ボンドを演じ続けたいと思っていたのに降板になってしまった。興行的にはすべて成功していたのにね。その悔いがずっと残っていたんだ。この映画化の話を聞いた時、原作やデヴェローというキャラクターの深みに興味を持った。そしてなにより素晴らしい脚本が出来上がった時、出演することを決心したんだ。ようやく別の形で満足できる、満足させられると思ったんだ。

Q:ロジャー監督との仕事はいかがでしたか?

A:以前『ダンテズ・ピーク』で一緒に仕事をしたとき、ロジャーと最高の時間を過ごした。彼は友人であり、尊敬する素晴らしい技術者でもある。編集室を愛していて、物語をよく理解していて、劇中のシーン一つ一つの中でドラマをどう維持すればいいかわかっている。彼がこの映画を選んでくれて、映画的なタペストリーの一部を形にしてくれた。彼に備わっている感情表現のための間の取り方は本当に揺るぎないんだ。それだけ深く踏み込んでストーリーを理解しているからだと思うよ。

Q:本作のようなスパイ・ジャンルについてどう思いますか?

A:人はみんな、このジャンルが大好きだと思う。ハートがあり、ヒューマンドラマのセンスがあり、最高のバイオレンスとストーリーテリング、カーチェイスがミックスされている。だから観客は、熱狂するんじゃないかな。もし良いストーリーを望んでいるとしたら、とても意味があるものを得ることができると思う。

Q:ピーター・デヴェローという役柄について教えてください。

A:彼は黒か白かといった迷いがなく、極めて破壊的な人間なんだ。デヴェローは長年、諜報活動に携わり、経験が豊富で知的であるが、訓練を受けた殺し屋でもある。筋金入りのプロフェッショナルであるがゆえに、ひどく苦しみ、トラウマを抱えているんだ。平静を装っていても、過去に自分が犯した数々の罪にずっととらわれているんだよ。

Q:オルガ・キュリレンコと共演してみていかがでしたか?

A:恋に落ちてしまうのが簡単な女性だ。安らぎを感じられる女性だと思う。撮影では、とてもウマが合ったね。スクリーンに映る彼女の姿を見るのを楽しんだよ。生活の中にのぞかせるような愛おしい姿、弱い部分、官能性でカメラを釘づけにしていた。それに、彼女にはユーモアがある。自分の役を過剰にシリアスにとらえすぎることなく、けれども懸命に取り組んでくれた。家具にぶつかるシーンも喜んで演じてくれたよ(笑)。彼女のように日々の仕事をリスペクトできる人と仕事をすることで、私自身も役を演じ続けることができるんだよ。

Q:ルーク・ブレイシーはいかがでしたか?

A: 彼は恐れ知らずで勇敢。何でもすぐに吸収して演技に生かせる才能があるね。

Q:『スパイ・レジェンド』の魅力を教えてください。

A:われわれが生きるこの世界は、機密事項や国際舞台で権力を得ようと画策する政治家たちで固められている。だから地政学的情勢は変動が激しいんだ。『スパイ・レジェンド』は、まさに今の時代そのものを描いた作品だ。辛らつでリアルな作品であり、現代的なスパイ映画だと思うよ。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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