1945年4月— たった5人で300人のドイツ軍に挑んだ男たち。

俳優、そしてプロデューサーとして映画界のトップに立ち続けるブラッド・ピット。彼が類い希なストーリーとキャラクターに惚れ込み、主演と製作総指揮を熱望した最新作が『フューリー』だ。物語の背景は第二次世界大戦末期。最後の抵抗を繰り広げるドイツ軍に、“フューリー”(=激しい怒り)と命名された戦車で立ち向かった米軍兵士5人の想像を絶する一日の出来事を映し出す。

 ブラッド・ピットは、歴戦の勇者でありながら複雑な思いを内に秘めた“フューリー”の指揮官ウォーダディーを熱演。元米海軍のデヴィッド・エアー監督が、ウォーダディーと部下4人の熱き絆をドラマティックに描きつつ、米軍M4中戦車シャーマンとドイツ軍が誇る最強戦車ティーガーの激突など、圧倒的な臨場感とリアリティ溢れる戦闘シーンを見事に映像化。深遠な人間模様と極限のスペクタクルを融合させ、あらゆる観客の胸に響くエポック・メイキングな超大作が、いよいよ公開!

『フューリー』ジョン・バーンサルにオフィシャルインタビュー



— 作品のどこに魅かれて出演を決めたのか
「今までに読んだことがないような脚本だった。第二次大戦を描いた映画で、この作品のような描写は見た事がなかった。新たな視点を得られたし、登場人物もとても複雑で、人物描写が鮮明だった。脚本を読んでなんとしてでも出演したいと思った。それはなかなかないことだ。だからこの作品に出演できてこうやって皆さんに話すことができ、とても幸運だと思っている。全力で取り組み、血と汗を流さなければならない仕事はどれもやる価値のあるものだと思うんだ。脚本を読んだ時に、これは相当の覚悟を持って臨まないといけない作品だと思ったけど、なんとかして手に入れなければならない役だと思った。船を漕いででも海を渡るつもりだった。デヴィッドが過去に手がけた作品も好きだったし、共演しているキャスト陣のファンでもあった。だからとてもラッキーだ」
ブラッド・ピットやローガン・ラーマンも魅了され出演を熱望したという脚本について、製作のジョン・レッシャーは「本当に魅了された。デヴィッドに誘われてオフィスへ行ったら、おびただしい数の本や資料が置いてあり、一生懸命考えながら脚本を書いたのだろうと思った。当然だけど感心した。エアーはどの世代にとっても真実として響き、共感できるストーリーを書いた。この作品はとても現代的な感じがするからまた面白い。もちろん第二次大戦の話ではあるし、デヴィッドのリサーチが脚本に具体性と信憑性をもたらせてくれているが、究極的には戦場で戦う男たちの話なんだ」と語っている。また、本作の軍事技術アドバイザーの一人を務めたケヴィン・ヴァンスは「ほとんどの戦争映画は第二次大戦を“勝利を収めた戦争”と位置づけている。それはそうなのだが、6千万人もの兵士が死んでるんだ。そこは今まであまり探求されていない部分だし、デヴィッドはそこをきちんと描こうとした」と語っており、ジョン同様に本作に携わった多くの人々が、その徹底したリサーチによる鮮明な描写と、“リアル”な戦争を描いた脚本を絶賛している。

— 今回演じた役“グレイディ”と共に戦うフューリー号の乗組員について
「大恐慌時代に育った男たちだ。グレイディは自分の育った山々しか知らないんじゃないかな。ところが異国の戦地へ赴き、シカゴ出身のメキシコ人と戦車暮らしをすることになったりするから急に世界が開ける。まったく違う世界なんだ。グレイディの身に起きた大半のことはこのストーリーが始まる前にすでに起きてしまったこと。第二次大戦中の米軍の戦車隊は極めて危険な任務だった。アフリカ戦線からドイツへ転戦してきたフューリーだけど、繰り返し小隊が全滅という事態に追いやられながらも奇跡的に4年も戦い抜いてきた一両の戦車なんだ。今回のストーリーはフューリー号のレッドという名の隊員がやられてしまうところから始まる。戦争も残すところ僅か2週間というところだが、レッドを失ったフューリー号の乗組員たちは、自分たちは決して無敵ではないという事実を突きつけられるんだ。ついに仲間を一人失ってしまったことで恐怖もプレッシャーも10倍になる。代わりにやってきた新米はあどけなさが残るタイピストで、レッドの代わりなど務まるわけがない。隊員たちはモラルなど通用しないという戦場の常識を彼に叩き込み、戦士に育て上げなければならない」

— 撮影について
「他の皆もそうだったと思うけれど、とにかくこんな作品に参加できてラッキーだと思ったよ。多勢の力が働いて仕上がった作品だ。だけど僕たちにかなりの負荷がかかるように仕組まれていた撮影だった。だから現場は“楽しい”の正反対。楽しんでちゃ失礼という部分もあるから、そういう責任感は感じてたよ」

— 他のキャストとの共演について
「人は家族を選べないのと同じように、兵士は一緒に戦う部隊を選べない。いきなり一緒にさせられ、小さな戦車内で恐ろしい戦場を経験する。そして殺すか殺されるかの状況の中でお互いを頼らなくてはならない。そんな状況をかなり対照的な俳優5人が演じることになったわけだ。でも撮影に入る前に精神的にも肉体的にも過酷なトレーニングをさせられたのは良かった。あれは得策だったね。あのトレーニングでとことんやられたおかげで、お互いに関係性を築くことができたし、お互いを良く知り、頼り、信頼するようになった。人と戦うと驚くほど相手のことが良くわかる。この映画を撮影するのに不可欠なプロセスだったね」

— 過酷なトレーニングについて
「こんなトレーニングは初めてだったよ。トレーニングやリハーサルは撮影が始まる4ヶ月前から始まった。キャスト同士でスパーリングしたり格闘したりもした。最初の一ヶ月半は目にアザを作ったり、鼻血を出したりという日々だったよ。そのあとは戦車でのトレーニングで、夜になると4時間のリハーサルで、リハーサルもトレーニングよりもさらに過酷なものになる日もあった」

また、肉体的な訓練に加え、戦車や武器の使い方についてもトレーニングを行っており、デヴィッド・エアー監督は「キャスト全員が、戦車内でのそれぞれのポジションを学びました。ジョンとシャイアはマシンガンを分解し、兵器を外すことができるようになりましたし、基本的な手入れもできるようになりました」とトレーニングの成果について語っている。

— キャスト同士の精神的なつながり
「キャストの皆は互いのことを良く知ろうとかなりの労力を費やした。お互いの秘密や強みや弱みを知るようになったよ。そこへデヴィッドが共演者同士を対抗させようとするんだ。つまり、家族のような親密な関係を作らせたわけだ。家族を守らなければならないとなったら、ものすごく強い気持ちが働くし、逆に家族内で対立が起こると、これほど暴力的なものはない。デヴィッドは、デヴィッド独特の狂ったやり方でそういう(どろどろとした)関係を築かせるのが狙いだったのだと思う。人の頭の中に入り込む術を知ってるんだ。彼は各キャストと一対一でも親密な関係を築き、必要とあらばそれぞれを叩きのめす術を知っていた」

— シャーマン戦車“フューリー号”について
「“大切なのは必ずしも戦う犬の大きさではなく、犬の闘争心の大きさである”という言葉にある通り、フューリーはすごい強者なんだ。決して大きくはないし、一番頑強なものでもない。ティーガー戦車を見たら分かるが完全に負ける!でも魂のある戦車なんだ」

— 撮影で一番怖い思いをしたシーンは?
「大変で、怖かったシーンは夕食のシーンだと思うよ。この映画では、お互いに思いきりやりあった。相手をこき下ろすぐらいにとても親しくなれたからだ。それでどんな台詞が飛んでくるか分からないし、けんかになって、どっちを向いていいかも分からなかった。だから、夕食のシーンがどのアクション・シーンよりもずっと怖かったよ」

— 撮影が完了して最初に何をしたか
「最初にしたことか・・・ブラッドが何本かワインをあけたが、僕らにはとても手の届かない高級品だった」

— 撮影時のブラッド・ピットのリーダーシップは?
「すばらしいよ。彼は全力投球していたし、僕たちとまったく分け隔てがなかった。ブラッド・ピットだからどうのってことは一切なかった。僕らが参加したことで彼だけがやらなかったことは何もなかった。撮影のための厳しい準備期間にしても、大変なことも辛いことも何でも一緒だった。彼はすばらしい人だし、優れた役者で、それに友人だ」

— 本作では仲間意識が大切だったが、実際にキャスト同士での話し合いはあったか?
「簡単に言えば、皆でこの映画の世界に留まり続けた。本作は撮影が終わったら、日常に戻って普通の生活を続けるというようなタイプの映画ではないんだ。だから、仲間として一緒に過ごしたし、一緒に暮らした。グループとして、家族として撮影期間、ずっと一緒にいたんだ」

— 観客はこの映画に期待できるのは?
「期待できるのは、手加減なしの力強いゾクゾクする体験だ。これは頑強で{きぜん}力のある映画だが、結局のところ、人間関係が中心だ。家族のドラマだし、修羅場を乗り切ろうとする家族の物語だ」

執筆者

Yasuhiro Togawa

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