クエインティン・タランティーノ、モンテ・ヘルマン、ガス・ヴァン・サント、イーサン・コーエンなどアメリカのインディペンデント映画を牽引する監督たちから様々な支援、協力を得ながら総製作費25,000ドル(250万円)で作り上げられた。カート・ヴォス自身がハンディカムで撮影を担当し、アリソン・アンダースの子供たちがBカメラと音楽の統括を担うなど徹底した低予算での映画作りがなされている。

$red Q:『ストラッター』を制作したきっかけを教えて下さい $
アリソン・アンダース:私とカートの映画への愛とロックン・ロールへの愛を、フィルムを通じて伝えたい、それが、『ストッラター』を作った時の一番の動機でした。またカートも私も、ロサンジェルスの音楽に関する映画を作りたかったのですが、ミュージシャン自身のことだけではなく、音楽を愛する人々のことも描いた映画にしたいと思っていました。





Q:ドキュメンタリー的な雰囲気も感じる映画ですが、この映画の構想はどのように生まれたのですか?
A:映画学校の学生だった時、ほとんどの学生は、何かのフェイクのような作品を作っていたので、私はもっと自然な感覚を撮りたいと思っていました。この映画でも登場人物はある程度は自分自身を演じていますし、私たちは映画の中にドキュメンタリーの要素を取り込むことが好きなんです。

Q:この映画をモノクロで撮ろうと決めたのは何故ですか?
アリソン・アンダース:カートも私も本当にモノクローム(白黒)が好きなのですが、それは、モノクロで作られた美しい映画が好きだからかもしれません。カートと一緒に最初に作った映画『ボーダー・レディオ』(1987)をモノクロで作ったので、私たちはまたあの頃と同じように映画を作りたかったのです。私は、ヴィム・ヴェンダース『都会のアリス』が好きですし、『ベルリン・天使の詩』にも同じような美しさがあります。カートはヴェンダースの映画みたいにこの映画でもゴージャズなモノクロ映像を撮ってくれました。

Q:カート・ヴォス監督とは長年共同で活動をしているそうですが、今回の13年ぶりのぶりのタッグはいかがでしたか? どのように作業を分担しましたか?
アリソン・アンダース:私たちは、作品のビジョンや、それぞれのシーンに自分たちが何を求めているのかを分かり合っています。時には、議論もあるけれど、そのほとんどの場合は、シーンをより良いものにするためにはどうしたら良いのか? ということです。これは、ずっと変わりません。

Q:主要な役をミュージシャンたちが演じています。なぜ多くの本物のミュージシャンを使おうと思ったのですか?
アリソン・アンダース: 私は、個人的にミュージシャンをキャスティングするのが好きなので、これまで作ってきたすべての映画で、同じようにミュージシャンをキャスティングしています。ミュージシャンと俳優が共演すると、ミュージシャンは、それぞれシーンをよりカッコ良いものにしてくれ、俳優は自然にミュージシャンがストーリーを進めていく手助けをしてくれます。それは映画とって素晴らしい方法ですし、私にとっては自然な演出方法でもあります。

Q:あなたの映画には音楽が重要な役割を果たしていますが、あなた自身、音楽からどんな影響を受けてきたのでしょうか。
アリソン・アンダース: 私は、あらゆるジャンルの音楽が好きで、音楽を中心に映画を作るのも好きです。音楽から何かを着想して物語を書き始めます。ひとつひとつのシーンを作り上げるときにも、音楽がイマジネーションを広げる助けをしてくれます。

Q:素敵な曲が多いなか、共同監督のカート・ヴォスや、主人公フランクを演じたクレイグ・スタークなども曲を提供していますね。曲はどのように決めたのですか?
アリソン・アンダース:最初から出演者に合わせて決めていた音楽もありましたが、編集段階で音楽を決めることも多かったです。映画のためにJ・マスシスに何曲か書いてもらいましたが、そのうちの何曲かは映像の編集後に作られたものです。

Q:映画では主にブレッドと周囲の人との友情や夢を描いていますが、母親、友達など彼の周囲の女性たちも彼らを支える重要な役割を担っていたのが印象的です。
アリソン・アンダース:私自身、この映画に出てくるブレットの母親や、女友達のクレオが大好きです。彼女たちは自分の生き方を持ち、男性に左右されることなく、内面に強さを秘めながらしっかり自分の人生を生きているからです。

Q:この映画は2万5千ドルという低予算で制作されたとのことですが、低予算で上手に映画を作る秘訣を教えて下さい。
アリソン・アンダース: 私とカートは、長いこと映画やテレビ作品を作リ続けてきたので、どのようにお金を使うかを知っています。キャスト、ロケーションを考え、良い音を録るためにやるべきことを守れば、多額のお金を使うことなく、素晴らしい作品を作れます。4000万ドルで作られた映画をテレビで見たら、とてもくだらない安物に見えました。ビッグ・スターが出ている映画でしたが、興行成績も悪かったので、きっと誰もが偽物を見分けることができたのだと確信しました。

Q:また、クエンティン・タランティーノ、ガス・ヴァン・サントやコーエン兄弟などの映画監督の協力や、クラウド・ファンディングも活用していますが、クラウド・ファンディングについてはどう思いますか?
アリソン・アンダース:クラウド・ファンディングは世界中で行われるべき方法だと思います。音楽、映画だけではなくアート、服飾など。全てのクリエイターの作品作りを支援するのは素晴らしいものだと思っています。日本の若いアーティストやプロデューサーの人たちもぜひ活用してください。

Q:この映画の主人公のブレットのようにうまくいかずに挫折を感じている人に監督からメッセージを下さい。
アリソン・ダンアース:若者は、誰もが狂おしいほどの恋に落ちるべきだし、激しく失恋するべきだし、それらの経験を全部音楽や映画にして、そしてまた誰かを愛して、愛して、愛していくべきです。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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