2013年2月21日(木)から25日(月)にかけて開催されるゆうばり国際ファンタスティック映画祭2013。2月22日(金)に初上映を予定しているのが石原貴洋監督の『大阪蛇道 -Snake of Violence-』だ。

この作品は、『大阪外道 / OSAKA VIOLENCE』で2012年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭・グランプリに輝いた石原監督がゆうばり国際ファンタスティック映画祭×スカパーの制作支援作品の第4弾として撮り上げたもの。

映画祭での公開に合わせ、BSスカパー!にて2月22日(金)PM10:00/ 2月25日(月)PM1:00/2月27日(水)深夜2:00と、3回に渡り放送を予定している。

キャストは『極道兵器-YAKUZA WEAPON-』の坂口拓、『それでも花は咲いていく』の仁科貴、『ふがいない僕は空を見た』の田畑智子という実力派の3人を主演に、山中アラタ、塩田時敏、鈴木太一、高見こころ、石原作品では常連の大宮将司、片倉わき、初代 彫政統、水野祐介、今村左悶らが結集。

現在鋭意仕上げ中の石原監督に完成間近の状況を伺った。














——今回はどういったストーリーになりましたか。

石原:10年前から温めていた企画なんですけど、“有能ヤクザ”と“無能ヤクザ”の話です。悪ガキの3人組がいつもつるんで遊んでいて、その3人が成長した姿がヤクザの坂口さんと仁科さん。田畑さんは仁科さんと結婚しているという設定。
若頭の坂口さんは、誤って東京ヤクザの組織トップの息子を殺害、関西ヤクザVS関東ヤクザの抗争が勃発しかけるんですが、和解金の2億円を用意するために政治家を惨殺していきます。
一方仁科さんは、捨て駒として凶悪犯を仕留める役に借り出される、といったストーリーです。

ゆうばりファンタで坂口さん、仁科さんと出会って「絶対この人だ!」と思いました。田畑さんは、関西弁ができて若いお母さんなんだけど貧乏長屋の雰囲気を出せる人ということでオファーしました。崔洋一監督の『血と骨』のイメージに近いかも。

——今回大変だったのはどんなところですか。

石原:キャラクターづくりに一番凝りましたね。今までの作品のキャラクターは「こんな奴居そう!」という妄想で創り上げたもので、あてがきした訳ではないんです。今回は坂口さんと一緒に、“このキャラクターはこんな見た目で、こんな行動を取るんじゃないか”と細かく詰めて話し合いました。

——坂口さんと共同作業のキャラ造形だったんですね。主役の方々はどんなキャラになりましたか?

石原:坂口さんは今までにないキャラクターになったと思います。しゃべれないキャラで顔も半分ケロイドに覆われている有能ヤクザ。特殊メイクは前回も参加してくださった仲谷進先生です。
仁科さんは、貧乏で下っ端・駄目ヤクザの役です。他のヤクザが「焼肉行くぞ」って出かけてしまい、留守番しながら独りでカップラーメン食べるんですけど、仁科さんの演技が面白すぎて僕が噴き出してNG出したなんてこともありました。
田畑さんは予めイメージを作って参加してくれました。ダンナには厳しく子供には優しい、いいお母さん像が出来上がりましたね。

——『ラストサムライ』でトム・クルーズと共演した、東映作品の斬られ役で知られる大ベテランの福本清三さんは、どういった流れで出演が決まったんでしょうか。

石原:仁科さんに紹介して頂きました。仁科さんのお父さん・川谷拓三さんが元々東映の役者さんだったのでそのご縁で。関西ヤクザの大親分を演じて頂きましたが、狙った通りの存在感が撮れましたね。怒鳴るシーンは飛びぬけて凄いものがあって、やはりお願いしてよかったと思いました。

——他の印象的なキャラクターについて教えてください。

石原:ゆうばりファンタのプログラミングディレクターの塩田時敏さんにも出て頂いて、関東ヤクザのボス役。香港マフィアみたいな雰囲気が出て意図通りでした。
『大阪外道』に出た人もキャラを変えて出演してもらいました。片倉わきさんはボスの愛人。前回はさわやかな女性を演じてもらいましたが真反対のどぎつくて、汚ない女です。前回ヤクザながら下町のヒーロー外道役だった大宮将司さんは、ケチなおっさんに成り下がってもらって(笑)。前回非道役だった初代 彫政統さんは、現職の彫師の役です。
『くそガキの告白』の鈴木太一監督には変態政治家役を演じてもらいましたが、最低なキャラになりましたね(笑)。子供には見せられない豪快な死に方も見所です。
それからぜひ本編で観ていただきたいんですが、田畑さんの子供時代を演じた松崎琉和(マツザキ ルカ)ちゃんと言う女の子が、今まで出てもらった子役の中で歴代一番!地元の大東市でオーディションして来てくれた素人で、もの凄く演技力の高い子でした。

——それは楽しみです!田畑さんと言えば小学生で主演したデビュー作の『お引越し』では相米監督が瑞々しい演技を引き出してはりましたね。

石原:琉和ちゃんの演技は、田畑さんの子供の頃のような感じが出ていると思いますよ。

——長編三作目にして演出の仕方は変わりましたか?

石原:変わってないけど車で言うとハイブリッド(笑)。プロの演技も素人の演技もごちゃ混ぜにして、でも同等に数字を上げてる感じですね。

——『大阪外道』では反省点が映像のクオリティと仰ってましたね。

石原:今回はそれもクリアできました。カメラマンは藤本啓太さん。林海象監督にお弟子さんを紹介して頂きました。僕の映画の特徴だった荒々しさを残しつつ、映像でしっかり見せるようになっています。今までは映像的に毛嫌いされていた部分もあると思いますが、色々な方に観てもらいやすい形に仕上がったと思います。

——公開の予定はどうなっていますか。

石原:まず『大阪蛇道』をゆうばりファンタで上映して海外の映画祭を回って公開。それから『大阪外道』を公開という流れで考えています。

——長編一作目の『バイオレンスPM』はすぐDVD化しましたが、やり方が変わりましたね。

石原:あせらない方がいいかと。『大阪蛇道』はネームバリューのある俳優さんが出ているので石原を知らない人にも観てもらって、その後『大阪外道』を観てもらった方が、どちらの作品にとってもいいと思っています。

——いよいよ2月22日、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でお披露目となりますが、最後に一言。

石原:新しい所に一歩踏み込んだ手ごたえがあります。遣り切った感は今までで一番です。ご期待ください!

執筆者

デューイ松田

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