『あの日、欲望の大地で』(08)でヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞、『ウィンターズ・ボーン』(10)でゴールデングローブ、アカデミー主演女優賞ノミネート、『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』(11)のミステーク役で全身ブルーになって大熱演、全米で4 週連続No.1 の大ヒット作『ハンガー・ゲーム』(12)では主役を演じるなど、今、世界から最も熱い視線を浴びる若手女優ジェニファー・ローレンス。

本作では、彼女のボディを狙い、迫りくる究極の恐怖と戦慄!
想像を絶する悪夢が連鎖する予測不可能なスリリングな展開、そして想像を絶するクライマックスまで、“絶叫が止まらない”、そんな衝撃作について聞いてみた。

$red −−−Q:この作品のテーマについて話してもらえますか? $
  
ジェニファー・ローレンス
:ええ。私がとても引き付けられたのは、よく言われるように「直感を信じる」とか「内なる衝動に従う」ってことが表現されていた映画だからなの。本能的な衝動を抱えて生きるってどういうことなのか。その直感が間違っていたら、どんな恐ろしいことが起こるのか。危険を顧みようともせずに直感的に他人を信じてしまったら、その人自身も道を誤ってしまうかもしれない、という話なの。
  
$red −−−Q:ドラマが二転三転する場面がいくつもあります。あなたがもっとも魅かれたのはどの部分でしょう?脚本を読んだとき、どんな印象を持ちましたか? $
  
ジェニファー・ローレンス
:脚本を読んでると、それぞれの登場人物にひと筋縄ではいかないエピソードが沢山あって、エリッサはこの中の誰を信じるべきなんだろうって思ったわ。この青年はいかにも信じちゃいけない人物だってわかるもの。それなのにも関わらず、彼を信じようとする彼女を見守っているうちに、観ている方も、彼を信じようと思い始めるの。ところが、もともと怪しいと分かってる人物を信じるなんておかしいと、今度は彼女のことが信じられなくなってくる。物語が進むにつれて、いったい誰が正しいのかわからなくなってしまうの。この脚本の何が凄いかって、本当の意味で正常と言えるような人間は一人もいないというところなの。最後まで驚きの連続よ。





−−−Q:この映画のストーリーを簡単に説明すると?
  
ジェニファー・ローレンス
:ヒロインのエリッサは、母親と2人でシカゴから小さな町に引っ越してくるの。お隣の家にはある人物が住んでいて、エリッサは彼に親近感を抱くけれど、エリッサのママは娘を彼に近づけたがらない。誰もが口々に、あいつとは関わるなって言うんだけど、そんな彼に対して同情しているエリッサは、彼はただ誤解されてるだけだと信じる。それで、思い切って彼とある行動に出るの。

−−−Q:ライアンが忌み嫌われているのはなぜ?
    
ジェニファー・ローレンス
:彼の姉妹と両親は、過去に殺されてるの。家族の中で生存者は彼一人だけ。その殺人事件が起こった家に今でも住み続けてるなんて、みんなの目にはひどく不自然に映ったわけ。つまり、彼は人々の好奇の的でもあったのよ。
    
−−−Q:登場人物に説得力とリアリティを持たせることは、監督のマーク・トンデライの意図でもあった?
    
ジェニファー・ローレンス
:ええ。マークの演出も脚本も素晴らしいと思うのは、この作品が単に残酷なだけの血なまぐさいホラーとは別物だからよ。キャラクターの人間像がしっかり練り上げられていて、誰もが恐ろしさを体感できる映画なの。こんなに洗練された方法で観客を恐怖に陥れることもできるのね。
    
−−−Q:役作りに当たっては、心理学的なアプローチも試みたとか?

ジェニファー・ローレンス
:そうなの。この作品には色んな要素が詰め込まれている。興味を惹くキャラクター、観ている人の心に好感と嫌悪感を同時に与えるような人物が何人も登場する。どの人物にもたくさんのドラマが起こり、観ていると否応なく話の中へ引きずり込まれてしまうの。それと同時に、ストーリーそのものが持つ恐ろしい部分にも気づいていく。混乱してグルグルしてる頭の中で、自分は全てを正しく判断できているかどうか疑わしくなり、他の誰かに対して抱く直感すらも信じられなくなってくる、そういう恐怖を突きつけてくる作品なの。

  
−−−Q:撮影中はどんな毎日でした?体力的にもキツかったのでは?
  
ジェニファー・ローレンス
:ええ、時々はね。でも楽しんで取り組めた。本当に切羽詰まった感じの叫び声が求められていたから、やたらと声を絞り出すようなことはしなかった。
  
−−−Q:撮影現場は楽しかったですか?
  
ジェニファー・ローレンス
:そうね、今まで経験した作品とは全く違うものだったから。すばらしいスタッフに恵まれてたし、こういう種類の映画も初めてで、撮影はとっても楽しかった。すごく貴重な体験ができたわ。住み慣れた環境から飛び出して、未知の経験をすること。あらゆるジャンルに足を踏み入れること。それって、まさに映画の仕事をする醍醐味だもの。
  
−−−Q:ホラー映画を見るのは好きな方?
  
ジェニファー・ローレンス
:それが困ったことに大好きなの。テレビの恐怖ものも好き。厳密にはホラーって呼べないかもしれないけど、例えば「セレブリティ・ゴースト・ストーリーズ」なんか、観てるとゾクゾクするわ。本当は私みたいなタイプは、ホラー映画はあんまり観ない方がいいんだけど。想像力が刺激されすぎて、自分でも収集がつかなくなるの。見終わってからもしばらくの間は怖くって、叫び出しちゃったり、寝室とバスルームの間をウロウロしたり、誰かが後ろにいるような気がしちゃうから。だからホラー大好きにも関わらず、あえて観ないようにしてるわけ。観ればいつまでも影響されて、頭がどうかなっちゃいそうになるから。
  
−−−Q:この作品に参加したことは、あなたにとってどんな意義がありましたか?
  
ジェニファー・ローレンス
:本当にいい経験になった。どの作品も私にとっては貴重な経験だけど、マークみたいな信頼できる監督と組める時は特にそう思うの。この仕事をしていて最も重要だと思うことは、その人のために働きたいと思える相手、たとえばマークのような人と一緒に、何か大きなことに挑戦できるかどうか。彼は偉大な映画監督だし、ぜひ一緒に仕事がしたいと思ったの。信頼できる人と一緒なら、それが全く未知の分野であっても喜んで挑戦しようという気持ちになるのよ。
  
−−−Q:マークはどんな構想を練っていたんでしょう。あなたにこの役をオファーするとき、何と言ってきたのですか?
  
ジェニファー・ローレンス
:彼はこの作品を一つの挑戦として捉えていた。だからきっとリアルな作品になると思ったわ。安っぽいこけ脅しなんてどこにもない。そこにあるのは、私たち人間の中にある恐怖、自分自身のことすら信じられなくなるような恐ろしさなの。
  
−−−Q:エリザベス・シューの存在はどんな影響を?
  
ジェニファー・ローレンス
:素晴らしい人だった。彼女のおかげで撮影が楽しくなったわ。現場には私とマックス・シェリオット、そして監督のマークがいたから、そこに女性が加わったというのは本当に嬉しかった。彼女は陽気で才能豊かな人。それに、すごく鋭い質問をしてくるの。撮影の途中でも構わずに「待った」をかけるの。「ねえ、なぜここでこのセリフが出てくるのかしら」って。そして、「言われてみれば…」って、みんなで考えてみようという気持ちになるわけ。とにかく彼女は明るいし才能にあふれてるし、何といっても知的な女性よ。
  
−−−Q:実際に森の中で撮影したんですか?
  
ジェニファー・ローレンス
:ええ、森の中にある一軒家を使ったの。あれはなかなか不気味だったわ。
  
−−−Q:森の存在そのものが、ある重要な意味を持つというか…
  
ジェニファー・ローレンス
:そうよ。この森のせいで、絶えず忍び寄ってくる恐怖を感じるの。
  
−−−Q:観客の好奇心に訴えるのは楽しい?
  
ジェニファー・ローレンス
:ええ、すごく楽しいわ。私はどんな仕事でも楽しんでやれるけど、今回みたいに作り込まれた謎に満ちた映画は、特にエンジョイできるわ。
  
−−−Q:セットでの撮影中も、観客の反応を考えたりしますか?
  
ジェニファー・ローレンス
:そうすることが演技のプラスになる場合もあるから。お客さんに観てもらうために映画を作っているんだもの、彼らのことを考えながら演技するのは重要なことだわ。でもね、観る人を喜ばせようと奉仕することって、一歩間違えば作品をダメにしてしまう危険もはらんでいるの。つまり、うまくバランスを取ることが大事。何でもよく考えて取り組めば大丈夫、いつか問題は解決する。そうやって作られたものは、きっと観る人を引きつけて離さないはずよ。
  
−−−Q:この映画を観た人に、何を感じて欲しいですか?
  
ジェニファー・ローレンス
:背筋が凍るような恐怖と、ドキドキする気持ちを味わって欲しいわ。そして出来ることなら、ある人が何かをひらめいた時に、この映画が何かしらのヒントになってくれたらいいなと思う。映画って観た人の心に色んな作用を及ぼすものだから。ドキドキしながらこの映画を観て、登場人物やストーリーを好きになって欲しいし、恐怖でゾクゾクして欲しい。
  
−−−Q:ライアン役を見事に演じたマックスはどうでした?
  
ジェニファー・ローレンス
:マックスは本当に凄い俳優よ。まるでスイッチを切り替えるように、役と自分の間を自由に行き来できるの。見ていて驚いたんだけど、監督からスタートの声がかかった瞬間、それまでキラキラしてた瞳にフッと暗い闇がよぎって、全くの別人になってしまうの。目の前にいるのがマックスと同一人物とは思えなくなるほどよ。あれは本当に不思議だったし、背筋がゾッとしたわ。
  
−−−Q:もしもあなたがエリッサにアドバイスをするとしたら?
  
ジェニファー・ローレンス
:「エリッサ、確かにお隣のその彼は魅力的よ。謎めいてて、クールで、人とはちがうタイプよね。自分だけは彼の境遇を理解できるって思いたい気持ちもわかる。でも、彼の家には行ってはだめよ。自分の家で大人しくしていなさい。彼の地下室には足を踏み入れないで」。
  

執筆者

Yasuhiro Togawa

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