第21 回トロント映画祭観客賞受賞、第44 回シッチェス・カタロニア国際映画祭ほか世界各国の映画祭を席巻、さらにはアクション描写の完成度の高さから全米公開され、続編の製作、そしてハリウッド・リメイクが決定。世界が熱狂したインドネシア発のノンストップ・ハイテンション・アクション「ザ・レイド」。

ギャレス・エヴァンス監督に聞いてみた。

$red Q. かなり計算されたアクションシーン、カメラワークですが、綿密な打ち合わせがされたんでしょうか? $

監督 振り付けを考えるのは基本的にイコ、ラマ、私で行います。まずは私がシーンの構想を練ります。どういうキャラ、展開、どういう敵なのかを考え、そのイメージを2人に伝えてその枠組みの中で、技、スタイルを取り入れていく。すると、ブロック、キック、投げなどについて、こうしたら良いと2人が提案してくれるんです。アクションシーンの展開も技、技、技という風にせずにそれなりのフロー、緩急ができるように工夫して振り付けしてもらっています。2人とは『ザ・タイガーキッド 旅立ちの鉄拳』の時から仕事しているので、本当にやりやすい。振り付けを熟知したうえでショットを決められる。ストーリーボードを作ってから、今度はそれに沿った映像のストーリーボードをハンディカムで作ります。それでこのカメラアングルでアクションを効果的に見せることができているかを確認します。最近のアクション映画は、アクションシーンをしっかり見せていないと思います。カメラをぶれさせたり、音でごまかすようなテクニックに頼りがちですが、そうではなく、80年代、90年代の香港アクションに立ち返ろうという試みで、『ザ・レイド』では全部見せることにこだわった手法になっています。アクションのイメージ+振り付けというよりも3人で練ったものにカメラを合わせるという手法です。




Q. ラマが4対1で戦うシーンの振り付けでは、全部ヤヤンさんが演じたんですか?

監督 もちろんヤヤンが演じています。その他にも実はドレッドの男の人と落ちていくシーンは、実はヤヤンがスタントを務めています。スタッフの中にドレッドの人がいて、その人がドレッドを切ってしまったのですが、そのドレッドを再利用してヤヤンにつけて演じていました。ドレッドをつけるのに3時間ぐらいかかりましたね。

Q.ハリウッドや日本の映画事情に比べるとインドネシアの映画製作に特徴などはありますか?

監督 もともとイギリスで映画を作りたいという気持ちはありましたが、ウェールズで製作する場合、自分たちで資金繰りもせねばならず、規模が小さくなってしまうので、思うようにいきませんでした。最近は変わりましたが、2006年頃はそういう状況でした。当時は普通に9時から17時で働いていたのですが、そっちの方に比重が傾いた時、今の奥さんがインドネシアでドキュメンタリーを作ることを勧めてくれて、そのドキュメンタリーを制作していく中でマーシャルアーツの面白さ、インドネシアの文化に触れ、イコにも出会い『タイガーキッド』を撮るに至りました。

Q. 影響を受けたアクション映画はありますか?

監督 マーシャルアーツで言えばジャッキー・チェン、ジェット・リー、サモハン・キンポー、トニー・ジャーでガンアクションではジョン・ウー、リンゴ・ラム、サム・ペキンパー、マイケル・マンの作品群です。マッド・ドッグというキャラクターはジョン・ウーの『ハードボイルド』でのナンバー2の役柄からインスパイアされたものなんですよ。

Q. 続篇『Berandal』はどのような内容になるのですか?

監督 ストーリー展開はキャラクターが増えて、人間関係も入り組んでいきます。ラマには奥さんがおり、子どもが生まれているのでその辺を描きます。1作目で名前しか出てこなかった悪徳警官レザーと信頼できる警官ブナワの2人が出てきます。物語はラマがブナワに出会うところから始まり、警部補のワヒュは逮捕されている状況です。ワヒュが残した証拠でビデオテープがあるのですが、そこには警官の汚職の証拠が記録されています。そんな中、殺されていく人、生き残る人がいるという内容です。残念ながらマッド・ドッグの出演はありません。ただ、ヤヤン自身は登場します。ホームレスのヒットマンという役どころになります。このヒットマンはマフィアのドンに仕えていて、ドンに命じられるまま人を殺していきます。それで奥さんと子どもの養育費を払っています。この役の武器はマチェーテなんです。ただこのマチェーテは標的を殺すことのみ使用します。例えば標的の周りに護衛がいてもその護衛は左手で倒し、標的だけをマチェーテの餌食にします。来年1月中旬から撮影開始を予定しています。

Q. 世界的なヒットを受けてどう感じていますか?

監督 この映画を作れたことを本当に誇らしく思っています。そして、バイオレンスな映画だったので広く受け入れられたことに驚いています。もともと作りたかった『Berandal』という映画が今回の作品がきっかけで作れるようになって嬉しいというのもありますし。ただ、ひとつ悩ましいことがあるとすれば、プレッシャーですね。最初は、ある意味何も考えずにパッと見せられましたが、今は期待値が上がってしまい、それ以上を求められてしまうので、それに応えつつではありますが『ザ・レイド』とはまた異なったものを作っていきたいですね。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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