今年度から大阪アジアン映画祭の【インディ・フォーラム部門】となったCO2(シネアスト・オーガニゼーション大阪)。アジア諸国の監督たちを招いて行うシンポジウム<アジアン・ミーティング>とリンクしたことで、どういった変化を目指しているのか。本格始動したワークショップの目的とは。そして、今年度の助成監督3名の実感とは?

3月10日から行われる【インディ・フォーラム部門】上映を目前に控え、CO2事務局長と上映ディレクター、助成監督たちに緊急インタビューを行った。



第2回:助成監督インタビュー
第8回CO2助成作品『治療休暇』梅澤和寛監督

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■せっかくの機会だからたくさんの人の意見を取り入れたいと思った
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——まずCO2に参加したきっかけを教えてください。

梅澤:学校で映像制作で短編を撮ってから、一旦やめて一般のバイトをしていました。
でもどこかで何かしたいという思いがあって、シナリオを書いてシナリオのコンテストに応募はしていたんですが、結局入選できずで。そんな時に久しぶりにCO2のホームページを見たら、また今年もやっているなと思って。
4年位前にCO2の運営スタッフだった時は事務局長の富岡さんがいない次期で、富岡さんとは全然面識がなかったので、新たに企画を見てもらえるかなと思って送りました。受かったらもう一度映画をやりたなと。

——CO2を知ったのは運営スタッフに入った時ですか。

梅澤:学校の同期の高木駿一が第4回CO2の助成監督になって『都会の夢』という作品を撮ったんですが、その時に助監督を頼まれて初めて知って、その後1年間運営スタッフをしていました。

——企画のどこが評価されたと思いますか。

梅澤:企画自体は、自分自身のコンプレクスを自分で認めて作品として完成させ観客に見てもらえたら、自分も先に進めるんじゃないかというところから始まっています。それが有難いことに助成作品として選ばれました。評価された点はよく分かりませんが、一次審査が終わってプレゼンがあったんですね。プレゼンしながら「この作品を撮りたい!」と思ったんです。富岡さんが、「CO2とは関係なくこの場所はいつでも貸せるよ」と言ってくださったので、「選ばれなくても撮ると思います」って答えました。それが良かったのかどうかは分かりませんが、僕自身がそう思えたのが良かったと思います。

——企画が通って脚本に入ってからはいかがでしたか?

梅澤:描きたいものと反対のものがないと際立たないと言われました。自分では敢えてやっていないんだと言う気持ちはありましたが、せっかくこういった機会をいただいたのでたくさんの人の意見を取り入れたいという気持ちも強かったので、結果的にどんどん変わっていきましたね。

——脚本が変わったことでいかがでしたか。

梅澤:今の形の方が正解でいいなぁと思います。始めに書いた企画を上手く移行できたかは分かりませんが、自分としては自分の企画に気持ちは置いたまま見せ方を変えるテクニックが欲しかったと思いました。

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■年配のスタッフとのやりとりがいい経験に
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——スタッフ集めはいかがでしたか。

梅澤:初めから決めていたのは高木と藤田白依。藤田は別の現場で制作をやっていたので頼みました。最初はその2人と僕でやろうとしてたんですね。僕も制作をやりながら脚本が書けると思っていたんですが見通しが甘くて、全然制作が出来なかったんですね。もう1人制作の田北祐哉を入れて4人でやりました。

技術スタッフは事務局に相談して、カメラマンは高木風太さん。元々『若きロッテちゃんの悩み』『bluebird』の高木さんのカメラが好きで、人物だけじゃなくトータルでいいんです。この作品は場所や人が変わってのシーンが多いので統一して撮ってくれる方がいいと思ったんです。照明は風太さんの紹介で秋山恵二郎さん。録音の宮井昇さんも事務局の紹介です。
クランクイン前からみんな年配の方がいいと思っていました。皆さん率直に意見を言ってくださるので、いい経験させてもらえました。

——アドバイスは素直に聞けましたか?

梅澤:それを超える提案をしたくてもできない自分が口惜しくて、「それにしましょうか!」となってしまうのが撮影中の葛藤でした。

——撮影中の苦労はどんなことがありましたか。

梅澤:時間が押していくのが苦労しましたね。撮影しながらいい提案をいただいて動きや台詞を変えたほうがいいとなったときに、僕が台詞を考えるのが遅かったり、なにかと時間がかかってしまいました。時間を有効に使えなかったのが大変でしたね。

——編集はいかがでしたか。

梅澤:編集は木村莉菜さんで2人でやりました。一人ではないという安心感もあり、できるだけ客観的に観るようにして進めました。

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■主演の二人と作り上げた主人公たち
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——役者さんはいかがでしたか。

梅澤:主役の月亭太遊さんと上岡郁さん、いいお二人でよかったです!一緒にキャラクターを考えて作り上げていきました。
特に太遊さんのキャラは、後半何も言わなくてもどんどん提案をしてくださって、助かりました。
上岡さんはいつも僕の目を真っ直ぐ見てくるので、試されていると言うか「それでいいのか、梅澤!」と言われているようで、馴れ合いにならなかったですね。いい距離を保ちながら撮影できたと思います。

——オーディションで選んだときの決め手は?

梅澤:上岡さんは演技が面白かったんです。初めの設定は子供っぽい男でしたが、上岡さんが演じて見せたときに長髪でチャラいんだけど声は甘えている男だったんです。分かった上で演技をしている感じが面白くて、キャラ設定を変えてもいいなと思いました。太遊さんは事務所の吉本興業で面接させていただいて、何回も色々なことをやっていただきましたが何の気負いもなくどんどんやってくれました。

——完成して、ご自分の課題はどんなところだと思いましたか。

梅澤:初めの企画の良し悪しが出来上がりにも影響するという点です。今回実感したのは、企画からシナリオを書いて撮影して、様々な変更をしていい方に転んだとしても、完成品には最初からあった問題点が浮かび上がってくるということなんです。ですから元の企画が課題だと思っています。

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■早く次の作品を撮ってみたくなった!
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——いよいよ大阪アジアン映画祭で上映ですが、どこを観てほしいですか。

梅澤:主人公2人が細かい行動を積み重ねながらゆっくり変わって行く様子です。特に太遊さんは前半脇役に見えると思いますが、段々存在感を増して主人公に見えてきます。
あとはロケ地も面白いんです。主人公たちが靴を買いに行く郊外にある靴の流通センター。制作が探してきてロケをさせていただいたんですが、シューズ愛ランドって言うお店です。アイランドの“アイ”が漢字の“愛”なのが気に入ってます(笑)。
あとは主人公が働く工場も面白いし、エキストラがエキストラでない感じで、台詞を楽しんで笑っていただけたらと思います。

——CO2のシステムについてはいかがでしたか。

梅澤:時間が短かった、それにつきますね。準備が9月からで12月から撮影。短かったですね。一番速く撮影に入ったんですが、延ばすとその後がずれ込んでいくのでそれをしなかったんです。あとはもっと予算があったら嬉しかったですね。思っていたよりかかったのは交通費でしたね。

——今後『治療休暇』の展開はどうお考えですか。

梅澤:今はまだ具体的には決まってなくて、東京でも上映したいと思っています。あとは色々なところに応募するのか、上映をメインに進めていくのか、にどのやり方が一番多く露出していけるのかをスタッフと相談しながら決めて行きたいと思っています。
次の作品を早く作りたい!という気持ちも強いです。1本撮って、消化不良の部分はありますので、自分なりに整理していきたいと思っています。

——現在はアルバイトしながら映画を撮っている状態ですが、今後お金も得つつ映像を撮っていくために考えていることはありますか。

梅澤:お金を掛けずにまず自分の作りたいものを追求して低予算の作品を作って、サンプル版のようにたくさん出来れば先に繋がっていくのではないかと考えています。

執筆者

デューイ松田

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