吉永小百合、笑福亭鶴瓶共演の『おとうと』が8/4にいよいよDVD&ブルーレイで発売になる。発売を前に本作のポスターイラスト、タイトルの題字を描いたイラストレーター松本春野のインタビューが届いた。

『寅さん』シリーズや『武士の一分』など数々のヒット作を世に送り出してきた山田洋次監督とは、幼い頃から家族ぐるみでの付き合いがあり、新作のたびに撮影現場の見学をさせてもらっていたという松本。

「『おとうと』の撮影の時期は失職中だったので、現場に入り浸って、そこで働く人たちをスケッチしたり、観察日記をつけていたんです。後日、その絵を観たプロデューサーから声をかけてもらった」ときっかけを話した。この抜擢には山田監督も驚いたようで彼女がイラストを描くことに「博打だね(笑)」と笑いながら言ったそうだ。


幼いころから親交のあった山田監督を「思想を持って人にも物事にも対峙する人。現場では妥協しないし、厳しいとは思うんですけど、映画を通して作っていきたい世界は、やさしくあたたかい世界。あと、正直な人で猪突猛進かな。普段はくだらない冗談を言ってはガハハと笑ったり、テレビに向かって怒ったり、とっても人間っぽい(笑)」と語る。

仕事に妥協を許さない監督を納得させるためには、口で説明するのではなく絵を描かないといけないと思い、何パターンもイラストを見せたという。
「姉弟というものの関係性が一番でるものを描きたい」と語る彼女は、「2人の歳の違う男の子と女の子っていうだけでは駄目で、お姉ちゃんは弟を大切に思っているし、弟は、お姉ちゃんといることで安心しているというのが一発でわかる絵というのは、お姉ちゃんと弟が手をつないでいる絵じゃないかなって。姉弟って普段ドラマチックに抱き合うこととかしないじゃないですか、でも体のどこかが触れ合っている、そんな絵がいいのではないかと思った」とイラストを描いた時に持っていたイメージを話してくれた。

『おとうと』に続き、京都にて公開中の山田監督最新作『京都太秦物語』(9/18東京・東劇にて公開)でもイラストを担当し、これからの山田組には欠かすことのできない存在になりつつある松本に今後の目標を聞くと、
「人を不快にさせるような仕事はしたくない。逆を言えば、私の仕事が、誰かの「今日も悪くない1日だったな」と思える要素の一つになっていったらうれしいです」と話した。

 『おとうと』は、女手一つで一人娘・小春を育ててきた姉・吟子と、大阪で何一つ成し遂げないまま歳を重ねてしまった弟・鉄郎との再会と別れを描く家族の物語。2010年ベルリン国際映画祭“ベルリナーレ・カメラ”を受賞した山田洋次監督が、かつて同賞を受賞した市川崑監督に捧げるオマージュとして、同名のタイトルをつけた作品でもある。『おとうと』は8月4日に発売する。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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