18世紀後半に17歳という若さで、世界で最も裕福な公爵のひとり、デヴォンシャー家に嫁いだジョージアナ(キーラ・ナイトレイ)。
聡明で、情熱的な性格の彼女は輝くばかりの美しさを誇る公爵夫人として、英国中の人々に愛されたが、ただひとりだけ彼女を愛さない人物がいた。
それは夫のデヴォンシャー公爵(レイフ・ファインズ)である。
彼はジョージアナに男子の後継者を生むことだけを望み、自身は離婚歴のある女性と愛人関係となり、その屋敷では奇妙な3人の同居生活が続いた。やがて、ジョージアナにも情熱的な恋が訪れるが、それは公爵夫人として許されない関係だった……。

プライドが高く感情を表に出さないデヴォンシャー公爵を演じた、レイフ・ファインズに話を聞いた。


Q.今回の役のまず何に惹かれましたか?
公爵という役で、まず魅力を感じたのは、彼が感情を出さない抑圧された男だったこと、実際は物語が進むにつれ彼の感情も見えてくるけどね。
それから、彼が夫婦関係を築こうとする過程、最初は絶望的なほど不仲だった妻と最後には理解しあう過程が僕には感動的だった。
その相手がキーラなら演じたいと思うさ。

Q.公爵は冷たく感情がないと言いましたが観客を共感させるためにどういう役作りを?
彼に感情がないわけじゃない。当時の文化と言うべきか…
感情は出すべきと誰もが考える。
例えば政治家の演説でもそうだ。
あのヒラリーが泣けば人は驚く、“彼女にも感情が?”
当たり前さ。
公爵の時代では、“男は感情を見せるべからず”と思われていた。
男は決して気持ちを表に出さない。

男に必要なのは、礼儀正しさや快活さ、
文筆、乗馬、狩りの技術。
議会での演説能力などだった。
確かに公爵の場合は、極端なケースだったがね。
でも感情はあるんだ。
僕はそういう人は好きだ。
感情的に不器用な男たちには、なぜか憧れを感じるね。

Q.私も同感です。今回の衣装やロケは新たな経験に?
大きな経験だった。特に衣装の面でね。
歩き方、座り方、もたれ方に影響する。
そでにレースがたくさんあると、食べ方も変わる。
つまり当時の社会では、服によって自分の体を豪華に美しく飾り立てる文化だったんだ。
それを理解しないとね。

衣装担当のオコナーと協力し、服を着ていくのは楽しかった。
おかしいかもしれないが、白いスカーフが気に入ってた。
身が引き締まる感じがしてね。
ロケに使った屋敷はどれも、当時に建てられたものだ。
その空間にいるだけで、当時の人間になった気分だった。

Q.物語と現代との関連性は?
男と女、結婚人間関係について、性別を越えていかにお互いが歩み寄れるか、当時に作られた文化などは今では残っていないがね。
コミュニケーションの物語だね。

Q.キーラが言っていたのですが“当時からセレブの文化があったことに驚いた”と彼女自身の役もそれに深く関わっていますが
そうだね。
むしろ当時のほうがセレブらしさが求められた。
今の時代では人々はセレブの過激な行動を期待しているところがある。
それが刺激をくれるからだ。
それだからゴシップ番組が人気を集める。
そうすることでセレブの弱みを公(おおやけ)にしていくわけだ。
そういう時こそ礼儀や品位が問われてくるんだ。

当時のセレブ文化において重要視されたのは、
機知(ウィット)やスタイル…
身だしなみなどもそうだが、特に機知が一番大切だったと思う。
ユーモアのセンスや表現力、トータルな人間性こそがセレブの条件だった。

余裕があればファッションも大事な要素だ。
それも芸術だった。
歴代の王太子のなかに、ジョージ四世という人物がいた。
彼はアメリカ独立戦争の時代に王となった男で、その息子がしゃれ者だった。
衣食ともに派手な生活を送った。
だが良くも悪くも彼が文化の形成を担った。

ジョージアナは彼のことを“女のように着飾った”と。
少し過激ではあった。
だが彼は文化を育てた、自ら芸術や音楽、ファッションなどを楽しみ、発展させたのさ。

執筆者

Yasuhiro Togawa

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