人間の最後の時を決める死神を主人公にした映画『Sweet Rain 死神の精度』。
死神と聞いて多くの人が骸骨に黒いマント姿、手には大きな釜をかまえた姿を想像するだろう。しかし、本作の主人公である死神は一味違う。

人間界に現れるときはなぜかいつも雨という風変わりな死神・千葉を本作が6年ぶりの日本映画出演となる国際俳優の金城武が演じる。一見クールだが、どこかずれていてチャーミングな死神を、独特の空気で演じきっている。
共演には、小西真奈美、富司純子、光石研、石田卓也、奥田恵梨華、村上淳と豪華な顔ぶれが揃っている。
物語は、過去・現在・近未来の3つの時代が交差しながら展開されていく。

原作は、若い世代を中心に今最も熱い支持を集める作家、伊坂幸太郎の「死神の精度」(文藝春秋刊)。

今回長編監督デビューを果たしファンタジーとユーモアにあふれる独特な作風で今、日本映画界が注目する筧昌也監督にお話を伺った。

また本作は、2003年に前作『美女缶』が出品されグランプリを受賞したことで注目を集めた、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭において本年度の<招待部門>で上映された。





初長編作品を監督されて、今のお気持ちはいかがですか?

「別に特に緊張しているわけでも無いですが、初めての気持ちなのでなんとも言えないですね。昨年の10月に完成してからは、それ以上映画をいじることが出来なくなっていましたし、映画の完成後すぐにテレビドラマ(フジテレビ系 土曜ドラマ「ロス:タイム:ライフ」)の仕事を始めたりと忙しく過ごしていたので。公開されて、きっと街中で自分の映画の看板が目に入ってきたりしたらきっと実感が湧いてくるのだと思います。」

本作を製作するに当たり今までの映画制作と比べて特別な意気込みはありましたか?

「“自分に嘘をつかない。すべてに対して素直でいよう”と自分に言い聞かせて撮影には望みました。ベテランの監督はボキャブラリーがあるからその場で的確な事を指示が言えると思います。しかし自分にはまだ言葉が足りないなと思います。でも変に恥ずかしがらずに思ったことを素直に伝えるようにしました。その結果どうなるのか分かりませんでしたが、暗中模索していきながらやっていきました。役者の方の演技に対しても、思っていものと違っていたら違うと素直に言いましたし、逆に役者さんからもアドバイスを頂いたりしながら作りあげていきました。」

今までの撮影現場の雰囲気との違いありましたか?

「緊張感がありましたね。スタッフの熱意も感じました。やはり1800円を払って、お客さんに観て貰うためにはここまで考えていかないといけないのかと痛感しました。この映画を通して長編映画を撮ることに対しての考えがかなり変わりました。映像作品を作る上で良い経験が積めましたし、今やっているテレビドラマの現場でも上手く活かせていると感じています。」

現場では主演の金城さんと色々意見を交わしながら撮影をされていたと伺いましが実際の現場はどうでしたか?

「金城さんとは良く話はしました。ワンシーンづつ撮影に入る前は、必ず僕のイメージしている雰囲気を金城さんには伝えるようにしていました。すると良い意味で毎回僕のことを疑ってくれるのです。お互いの長所・短所を取り合いながら意見も出してくれましたし、金城さんは物事を俯瞰で見ているのでそういった意味では監督気質な方でしたね。」

脚本を読まれた段階で金城さんは役のイメージは掴まれていたのですか?

「いえ、初めて読んだときの感想では『この人は何をやっている人?』と言われました。(笑)この映画において死神はある種裁判官のようであり、人間界に降りてきては人間のふりをしている役なので、金城さんには「演技をしている演技」をしてもらわなければなりませんでした。感情の変化も無い役なので難しかったとは思います。でも、金城さんのように映画を俯瞰で観られる人だからこそ出来た役だと思います。」

映画を撮影されるとき衣装に関しては監督自ら絵を描きスタッフにイメージを伝えたとお聞きしたのですが

「そうですね。今回の衣装も自分で絵を書いて衣装さんに揃えてもらいました。ほぼイメージ通りです。スタイリストの伊賀大介君は同じ年でノリが似ていたという事で凄くやりやすかったです。」

執筆者

大野恵理

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