『拍手するときに去れ』は、“犯罪のない社会作りキャンペーン”の一環で、「美人コピーライター殺人事件」での容疑者と検事が真っ向から対決する捜査過程が28時間ノンストップでテレビ中継されるといった物語。

検事役のチャ・スンウォンと、容疑者役のシン・ハギュンが繰り広げる、10分間のも及ぶ尋問シーンを迫力満点。

この奇想天外な本作は、チャン・ジン監督が韓国で自作した舞台がもとであり韓国では
観客動員250万人を突破するヒット作を映画化したのも。

2005年に公開された映画『トンマッコルへようこそ』では原案&脚本を担当し独自のウィットとユーモア溢れる才能で注目を集めた。今回はシネマート六本木で8月25日から10月12日まで開催中の韓流シネマ・フェスティバル2007ルネサンスでの上映とイベントに会わせての来日となった。

【演劇】と【映画】二つの異なったジャンルの中で自分の世界を表現し続け、すべての創作物は“おしゃべりから始まる”と自負しているチャン・ジン監督にお話を伺った。





—本作は、韓国で監督自信が自作された舞台が元となっていますが、映画化にいたった経緯を教えていただけますか?
「お芝居の初演の時からこの作品は映画に合うだろうなと思っていたので映画化しました。」

—殺人事件の捜査過程をTVで生中継するという奇抜なアイデアはどこから浮かんだのですか?
「捜査過程を生中継する設定は特に奇抜なアイディアだとは思っていません。最近は多くのメディアが出ていると思いますし、それくらいの事は充分にありえるのではないですかね。もしTVで殺人事件の捜査が生中継されていたら視聴者の立場に立った時に面白いと思うし観てみたいという気持ちがありますので・・・・
例えばTVを観ていて連続殺人犯が建物に潜んでいたら、その建物の中で何が起こっているのだろうとい興味が沸きますよね。それはある種のメディアに対する好奇心であり、私たちの生きている今の時代なのだと言えると思います。」

—検事役のチャ・スンウォンと容疑者役のシン・ハギュンの尋問のシーンは見ていてとても緊張感がありましたが、撮影現場の雰囲気はどうでしたか?
またお二人に対し何か特別な演技指導などは行いましたか?

「テキストが演劇で使用した物とまったく同じ物たったので大変長い呼吸で演じられる芝居となり凄く緊張感のある現場でした。何か特別な演技指導という事よりもエネルギーを一つ一つ積み重ねていかなければならない芝居だったので、リハーサルを何度も重ねました。まるで一つの芝居を作り上げていくような感じでリハーサルを重ねていきましたね。」

—監督という立場から本作における演劇と映画における演出の違いがあれば教えて下さい。
「映画と演劇それぞれが持つ特徴だったり長所が違いますよね。例えば演劇であれば、象徴的ものや過激で奇抜な演出が出来たり、想像力豊かに表現できます。その反面映画はよりリアリーティーを見せていく必要がありますし、もう少し叙事的であったり、精密な演出でいかなければいけなかったりします。本作ではストーリーテリングの展開には気を配りました。やはりストーリーテリングのところが重視される映画とステージが重視される演劇では良し悪しがあるのではないかと思いますので。」

—映画の製作していくうえで監督が心がけている事や信念などはありますか?
「今の所は私の本当に言いたいことや伝えたいことを作りたいように作っています。これからも大衆的なことを考えて作りたくないものを製作したり、興行を意識して製作するというようにはならないように作っていきたいですね。」

—映画のタイトルである「拍手する時に去れ」というフレーズはどういう風にして生まれたのですか?
「この言葉は韓国で小さいときから良く使われてきたフレーズなんです。待っていたところで出て何もこないから、拍手を貰っているうちに帰ってきなさいという意味です。他の作品のほとんどがタイトルが先に浮かんだものです。」

—監督の製作する作品はジャンルが様々ですが、今まで製作してきた作品にいえる共通したこだわりはありますか?
「脚本を書いてる時、特に意識はしていないんですけど一連してみるとどうやら私は人に対する関心が多いのだと感じますね。私はヒューマニストなんですよ。(笑)」

—今後の活動は?
「映画に関しては来年2本の作品が控えています。一作目は「天国」をテーマにした作品でもう一作は「朝鮮時代に宇宙船がやってくる」といったSF時代劇です。
また演劇の方は、再来年からこれまでやってきたすべての作品を再演します。3年間は持つのではないかと思ってます。」

執筆者

大野恵理

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=44909