登場人物の共通点は「めがね」。
そして、たそがれるのがうまいこと。

よくよく考えると、たそがれるっていうことは
1番贅沢な時間の使い方かもしれません。

1日の終わりに、自分のことをふっと振り返ってみる、
それって、結構大切なことかもしれない。

慌ただしく日々を過ごすことに疲れたら、
この5人がいる不思議な海辺に誘われてみませんか?

光石さん演じる民宿ハマダの主人、ユージ。
ゆったりした時の流れに身を任せ、感じたことやキャストの方たちとの
エピソードを語ってもらいました。




—めがねというタイトルにはあまり深い意味はないそうですね(笑)
光石研(以下、光石)
「そうみたいですね。実際使っためがねも、監督とスタイリストの方が自分たちに合ったものを選んでくれたので。その横で、おのおの自分が気に入ったものをかけたりはしてましたが。」

—私にとっては、光石さんが演じるユージさんが一番好きです!
光石「ありがとうございます(笑)」

—と言うのも、ユージさんの行動をよくみてると、地図がおおざっぱっだりするのに、自分の民宿にお客さんがたくさんくることは気にしていたりして…ちょっと性格が矛盾しているところに惹かれました(笑)。
監督から、ユージさんについてはどのような説明を受けました?
光石「映画の中には出てこないバックボーンをいただきました。ユージは、まず島の人ではなく、かといって大都会から来た人物でもない、ちゃんとした意志を持ってやってきた人だと書かれてありましたね。基本的な性格はおおざっぱだと思います。」

—ユージという人物に違和感が生まれることはありませんでしたか?
光石「自分とは全然違う性格ではあるんですが、自分にもユージのような一面はあると思います。」

—ユージにとっての大切な人は、もたいさん演じるサクラさんだと思うんですが、サクラさんについてはどんなことを思って演じられていたんですか?
光石「作品の中でふたりのことを市川さんがいろいろと話してるんですが、演じる上では、恋人や母親だとはまったく思わずに演じていました。たとえば、ごはんを食べる時に、ト書きに『ユージ、サクラを見る』と書かれてあった時は、もたいさんの目をしっかり見ていようとだけ考えていました。それが映画の中でどういった効果を生み出すかは、作品を観るお客さんにお任せします(笑)。」

—ユージさんのイメージといえば、とても印象に残っていることがあるんですが、ユージさんは腕時計をしていませんでしたね。民宿にも時計がある気配がまったくしませんでしたが…
光石「そうでしたね!」

—でも、朝起きて、メルシー体操をして、朝ごはんを食べて…としっかりした生活を過ごしていて、うらやましいなという感情を持ちました。これから観られる方もきっと、そういったところに魅力を感じられるか、と。
光石「実生活と比べると自分もうらやましいな、と感じますね。起床時間はめちゃくちゃで、仕事の日のごはんは、コンビニで買ったウィダーインゼリーだったりという生活なので。」

—登場する食事は、”食”は楽しむものだっていうことを思い出させてくれますね。
光石「本当にどれもおいしくて、『これが1番!』とは選べないくらいでした。僕はこの作品から、今までの人が当たり前にしてきたこと、つまり『ちゃんと朝起きてますか?食べてますか?体操してますか?』っていうことを問いかけられているという風に感じてます。かと言って、撮影から帰ってきてこっちの生活になじんでしまった部分があるので、エラそうなことは言えないんですが(笑)。」




—この映画に流れているものを感じて、気持ちをリフレッシュしてもらいたいですね。
光石「そうですね。こういった映画に携わらせていただいたからには、きっと体に何かが残っていると思うので、この映画のようにゆっくりおちついて、物事に取り組んでいきたいと気持ちを大事にしたいです。」

—ロケ先で苦労したことはありました?
「苦労しないように、東京で早起きをするようにしてました。僕と市川さんが遅れて現場に入ったので、他のことは先に入っていた先輩たち、小林さん・もたいさんに指南していただきました(笑)。」

—加瀬さんが現場に入ってすぐ、もたいさんがやぎと散歩しているのを見てなにかが崩れたとおっしゃっていたのですが、なにか島のエピソードでおどろいたことはありますか?
光石「僕やもりが苦手なんです。そしたら、寝泊まりしている部屋の壁に出て、ひとりで退治しなきゃいけなかったことですね。ごみ箱を壁にあてて、スライドさせて、外にほうり投げました。深夜だったので、まわりには迷惑だったと思います(笑)。」

—撮影中は起床時間も就寝時間も早かったとか。
光石「そうですね。6時か5時半には起きて、夜は9時に寝たり。」

—メルシー体操も朝早くに撮影したんですか?
「あれは午前中に撮影しました。子供たちを呼んで合わせて。島に入った日に、ビデオを見て練習しましたよ。」

—撮影は順調に?
光石「撮影が雨で中止になったりした時は、僕が車を借りてもたいさん・小林さんを乗せて、島にひとつしなかいスーパーに買い物にいったりしました。あとは、マンドリンの練習をしました。去年の12月にマンドリンを渡されて、実際弾いている曲だけは弾けるようにしました。」

—サウンドトラックにも収録されているそうですね!
光石「そうなんです!めちゃくちゃ嬉しいです(笑)!!使った音もそのまま使われているらしいので。」

—ここからは、もっと作品の魅力にせまっていきたいと思います!
『かもめ食堂』から引き継がれたような絶妙な空気感を生み出す荻上監督の魅力を教えてください。

光石「監督は照れ屋で人に伝えることにも、言葉を選んで話す方なんです。ぽつぽつとしか言葉はでてこないんですが、その言葉に誠意があって好感を持てました。女性特有の媚びる感じはなくて…映画もある意味ドライな仕上がりですよね。非常に好感を持てる監督ですよ。」

—5人でかき氷を食べながら、おのおのが前を見てたそがれているシーンは、自分的にはこの映画を象徴しているシーンだなと思いました。実際、光石さんはどんなことを考えていらっしゃったんですか?
光石「いや、特に深いことは考えてなかったですね。シンプルなことで、『あついな』とか『おいしいな』とか。ユージは、ハルナに”たそがれの天才”って言われてるですけど、ほとんど意識しないで演じてました。タエコさんに『たそがれるってなんですか?』って聞かれるんですが、曖昧に答えてますが本当にあんな感じなんです。ちゃんとした生活してれば、”たそがれ”って生まれると思います。言葉の意味合いだけじゃない、深い感じなんですよね。」

—言葉じゃ伝えられない、”たそがれ”は感じるものという感じなんですよね。
光石「きっとこの作品を江ノ島あたりで撮っていて、東京から通いながら現場に行っていたら、きっと満足の行く作品にはならなかったと思います。きっと監督もそれをわかっていて、島での撮影を敢行したのだと思いますし、演者も、切り替えをする必要もなく、本当に自然に演じられたんですよ。その空気がスクリーンからじんわりと漂っている作品になっていると思います。いろんな年齢層の人に観ていただいて、ひとりひとりに何かを感じていただけたらいいなと思います。」

執筆者

Kanako Hayashi

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