若干11歳で『キャロルの初恋』の主演を務めたクララ・ラゴ。かわいらしい容姿に、黒い瞳から放たれる強いまなざしを持つ彼女は、映画初出演ながら主人公キャロルの役を見事獲得した。
 本作は、『時間切れの愛』でスペインのアカデミー賞であるゴヤ賞8部門受賞を達成したイマノル・ウリベ監督の最新作だ。内戦下のスペインを舞台に、疎開した小さな村で愛すべき人々に囲まれながら、自分の意思を貫き通す芯の強い女の子キャロル。男の子のような服装に髪型、時には乱暴な立ち振る舞いをするが、キャロルはとてもキュートな女の子という印象が残る。その理由はやはりクララ自身が持つチャーミングな魅力に他ならない。現在14歳となったクララに、作品のことのみならず、女優として今後どうありたいかまでをインタビューした。

$pink ☆『キャロルの初恋』は、2005年1月22日(土)よりシブヤ・シネマ・ソサエティにて新春ロードショー $



——映画初出演にして初主演が決まった時、どんな気持ちでしたか?
 始めはとても信じられなかったです。想像もしていなかったこのなので。家族はとても喜んでくれて、役が決まったその日は皆でレストランに行ってお祝いをしました。

——キャロル役はオーディションで選ばれた? 
一番初めは新聞で女の子を募集しているのを見かけたんです。でもそこに書いてあった条件が金髪に青い目、二ヶ国語をしゃべることとあったので、これはダメだと思って。でも、電話があってカメラテストをしないかと言われたので、相手役の男の子との絡みで試してみました。テスト自体はとてもいいと言われたんですが、私の顔や表情はとてもスペイン人なので(笑)、イメージにより近づくため髪を切るように言われました。

——そもそも女優になったきっかけは何でしょう? 
いろいろな経緯はあるんですが、一番初めは9歳のときで、ずっと女優にはなりたいと思っていたんです。両親が映画製作をしている知り合いがいるということでテストをしてもらいました。両親の友達に脚本家もいたので、関係者にオーディションをしてもらったり。そこで撮った写真などは宣材として有効に使って、小さな役をもらいながら…という感じです。

——キャロルの役作りはどんな風に? 
撮影当時は11才であまり深く考えなかったので(笑)、撮影現場に行って、そこで自然な形で自分にできることをやっていったという感じです。あまり頭で考える、ということはなかったですね。14歳の今やるとするなら色々考えると思うのですが。

——イマノル・ウリベ監督はどんな方でしたか?一緒に仕事をしたかったとのことですが。 
あまり映画監督と沢山仕事はしていないのですが…噂では、監督には多くを要求したり、ピリピリしていたり、とても厳しい人が多いと聞いていました。でも、ウリベ監督に関しては撮影中怒鳴り声を一度も聞いていないですし、とても優しくて柔らかい話し方をされていました。役者にストレスを与えないように、現場を楽しく、暖かい雰囲気にしてくれる方でした。

——魅力的な共演者が何人もいますが、撮影時のエピソードが何かあれば教えてください。 
 一番思い出すのはカットされた場面なんですが、教会に水兵さんのサイズの合わない小さな服を着て行って、からかう子供をひっぱたくというシーンがあったんです。力加減がわからなかったので弱く叩いていたら、「もっともっと」と言われて。3回目で思い切りほっぺたをはたいたら皆びっくりしていました。とっても悪いことをしたなあと今でも思い出します。でもなぜかそのシーンはカットされてしまいました(笑)。
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——クララさん自身、キャロルと似ている所はありますか? 
 キャロルはとても短い髪の毛ですごくお転婆な女の子と思いましたが、自分の中にいろんな感情を押し込めて、内に秘める女の子です。映画が進んでいくにつれて、おじいさんやトミーチェとの出会うことで、女性っぽい部分が出てくると思います。最初はドライな彼女が次第に心を開いていく。やわらかい優しい部分が出てきます。トミーチェと一緒にいる時はフェミニンな部分もあったり。男性的な頑固さだけでなく、とても柔らかい女性的な部分も備えていると思います。私と似ている部分は、最後の部分です(笑)。あんなに男の子っぽい部分は私にはなくて、柔らかいフェミニンな部分は似ているかなと。そして彼女の決心する所、こうするべきだ、こうしたいと言うことに関して突き進む所も似ていると思います。

——クララさんから見たキャロルとトミーチェの魅力を教えてください。
キャロルは、自分の思う所を貫こうとする所ですね。強さを持っている所。私の好きなシーンでトミーチェら男の子とケンカをする場面があるのですが、女の子だからこうしなきゃいけないというのを気にしない所が魅力だと思います。トミーチェもとても強い男の子です。おじさんに叩かれたりされながらも、心の中に男の子として、人間としての優しさもあって、そして自分に対して尊厳を持っていますから。

——実際にトミーチェのような男の子がいたら惹かれると思いますか? 
多分なんですが、実際にどんな人か会ってみないとわからないです(笑)。

——日本のタイトルは『キャロルの初恋』というのですが、よろしければクララさんの初恋エピソードを聞かせてください。 
 好きな人というのはいるけど、キャロルとトミーチェのように強い絆のある初恋というのはまだ自分のところにはやって来ていませんね。

——キャロルの体験は、今後彼女にどんな影響を与えると思いますか? 
 スペインで体験したことは、キャロルにとってとても大きなことだと思います。最初彼女は子供だったけれど、スペインで女性として大人になっていく。というのも、戦争、内戦、ファシズム、そして母親の死に彼女が一人で向かっていかなければならなかったからです。ニューヨークに帰ったところで、同じ女の子ではいられない。スペインでの生活がキャロルをとても成長させたと思います。

——日本に来のは初めてとのことですが、印象は? 
とてもワクワクしています。まず東京という場をもっと知りたいのと、浅草に行きたいと思っています。昨日連れて行ってもらったニンジャというレストランが、とても面白かったです。マグリッドにも日本食はあるんですが、今回“本当”の日本食というのを食べてみて、とっても好きだということに気付きました。日本にいる間は限りなく日本食を食べたいと思います(笑)。

——この映画を観た人はクララさんの今後の活躍を楽しみにされると思います。最後にこんな女優になりたいという目標があれば教えてください。 
 私のゴールは“良い女優”です。良い作品を選択していけるような女優になりたいですね。いつも一番に挙げるんですが、憧れの二コール・キッドマンは美しいだけでなくて、演技派でもあって、役を選びながら仕事をしている人です。その他、ミッシェル・ファイファー、スーザン・サランドンのような演技派の女優に私もなりたいと思ってます。

執筆者

山本絵美

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