東京ファンタ、20周年。10月14日(木)から17日(日)、新宿ミラノ座にて、今年もオールナイトな映画祭がやってくる!!映画祭原点であるホラーやファンタジーはもちろん、お馴染みのアジアンムーブメント、ファンタの新しい顔になりそうな600秒。
 と、基本を踏まえつつ、それだけに留まらないのが今年のファンタである。スクリーンと連動したアトラクション劇場あり、ドキュメンタリーブームを捉えたドキュ・ファンタあり、新機軸が居並ぶ。「20周年といえば、今までやってきた精髄でまとめてしまうことも出来るじゃないですか」、チーフクリエイターのいとうせいこう氏は言う。「アトラクション劇場なんてやらないでしょう、普通(笑)。ドキュ・ファンタにしてもね。でも、そういう新しいことをどんどんやっていくことが来年、さ来年のファンタにつながっていく。この映画祭ならの面白さなんだと思いますよ」。というわけで、いとうせいこうチーフクリエイターに今年のファンタ、そのみどころを教えてもらった。

 #——東京ファンタも20周年を迎えますが、それに相応しく充実したラインナップです。ことに企画上映にはファンタらしいヒネリがあるというか…。
 まず、前夜祭でティム・バートンの「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」のデジタルリマスター版を上映するんですけど、劇場の中を、映画の画面に合わせたアトラクション風にしようって企画なんですよね。風が吹くのか、雪が降るのか、何ができるのかを探っている最中なんですけど、続けて、「地下幻燈劇画 少女椿」もアトラクションでやります。ギャスパー・ノエとかホドロフスキーが絶賛している日本の映画なんですけど18禁のものなんですよ。「ナイトメアー〜」に「〜少女椿」という対極の組み合わせで、しかもアトラクション。やっぱりファンタは20周年のくせにやっぱりおかしいな、どうにかしてるなって始まりですよね(笑)。

 ——前夜祭ではドキュメンタリー特集もありますね。
 そう、新しいジャンルなんでぜひ見て欲しいドキュ・ファンタ。ドキュメンタリーの風が吹いてきているという背景もあり、兼ねてからファンタのスタッフがやりたがっていたらしいということもあり。特に目玉は「シリアルキラー アイリーン」って連続殺人犯のドキュメンタリーでしょうね。「モンスター」でシャーリーズ・セロンが演じた女性の、ドキュメンタリーなんですけど、マイケル・ムーアも絶賛したらしいですね。これにロック界のドキュメンタリー「メイヤー・オブ・サンセット・ストリップ」、ポルノ界では超有名なロン・ジャーミーのドキュメンタリー「ポルノ☆スター ロン・ジャーミーの伝説」を組み合わせるっていう、ファンタらしさがなんともいえない(笑)。

 ——ブレイク真っ最中の韓流と、次に来そうなタイ映画の対決も見逃せませんが。
シュリのスタッフによる地下鉄スペクタルの「TUBE」とね、韓国版マトリックスといえる「リザレクション」を挟み、2日目の夜には四本立てのオールナイトをやるんですけど、韓国の大作に匹敵するパワーを持ってるんだよね、タイ映画って。
こういう映画だったらこういうことしないでしょ、っていうのにどんどん裏切っていく(笑)。そこはジャンルにこだわってパイが小さくなっていく映画界において、アンチテーゼになるんじゃないかな。アンチテーゼって普通、難しいものなんだけどタイの映画の場合はそうじゃなくてね、面白おかしいものなんだよね、もっと(笑)。
 で、ここで上映するのは「マッハ!」のアクション監督の新作「ボーン・トゥ・ファイト」と、タイの怪獣映画「ガルーダ」。ちょうど真夜中に「ガルーダ」はいいと思う(笑)。ユルーい感じで。人間の1、5倍くらいの怪獣が飛んだりして、大暴れしたりするんですけど(笑)。ちなみに「ガルーダ」って日本に来ますと「カルラ」と呼ばれている仏像にもなりまして、もともと神話上の神様なんですね。これ、役者の顔が結構インド系なんだよね、顔が。インド系美男美女もたくさん出てきますよ。

 ——同じタイ映画でも『映画秘宝スペシャル』枠の「ヘブンズ7」はインド系ではなく…。
そう、中国系とかベトナム系とか、違うんだよね。いろいろな顔が混ざってくるからタイ映画ってまた面白いんだろうね。で、この「ヘブンズ7」も超面白い。一応、アクションなんだけど、一応としか言えなくてね(笑)。アクションなのに…余計なとこにCG合成使ってたりだとか、やたらと笑いがはさまってくるとか。娯楽精神がタイ人はすごいですね。それがもう、あまりに熱く交わされるために、最初の一時間は、なんとなく筋フリが長いんですよね(笑)。でも、後半、動き出すと見せ場見せ場の連続になる。

 ——なるほど。さて、ファンタといえばホラーですが。
実写版「鉄人28号」のワールドプレミアの後、3日目の夜は「三大恐怖 プレミアムホラーナイト」を上映します。でもね、僕、実はホラーは苦手なんですよね(笑)。

 ——では、最終日のアニメ特集に行きましょう。「機動戦士Zガンダム −星を継ぐ者—」に続いて「東京ファンタまんがまつり外伝」の企画上映があります。
 まずはね、68年の深作欣二監督作品、オール外国人キャストの「ガンマー第3号 宇宙大作戦」だね。タランティーノがこのDVDにサインしてもらったらしい。実は昨日見たばっかりなんですけど、「エイリアン」ってこれパクッたんじゃないかって思うくらい。68年ですから、ロケットは糸で吊ったもので、怪獣はいかにも着ぐるみですよ(笑)。でも、楽しくみれたよね。僕、そっち系のオタク心は何にもないのに面白かったですよ。色使いは渋いしね。
 
——2本目の日本版「スパイダーマン」には観客へのお土産もあるとか。
はっきりまだ言えませんけど、「スパイダーマン」関係の、お土産がつく、と(笑)。この作品って今まで再上映できなかったんですけど、昔、これを見ていた人は
劇中のレオパルドってロボットを見たくて見ていたって作品。まぁ、多分、そういう関係のですね、お土産がつくかなと(笑)。

 ——さて、尺の長さは10分きっかり、「デジタルショートアワード 600秒」が二回目を迎えます。応募数も100を超える勢いだったそうですが。
 去年同様、「泣き」「笑い」「驚き」部門でね。映画祭での上映前には三菱地所の協力で一般に向けた無料上映会もやります。一般のお客さんに投票してもらって、その投票数はファンタでの上映に反映させます。
それと、今年からはシナリオ部門もスタートしたんだよね。これも100本以上の応募があったんですけど、ネットで公開してこれも一般投票を同時に行います。シナリオ部門も映画にしたら10分間になるものをってことなんですけど、グランプリ受賞のシナリオを翌年のファンタで映画作品にしてかけるとかね、そういうことも考えてるんです。まぁ、SFとかあんまりにもお金が掛かりそうなものはできないかもしれないけど(笑)。600秒のDVDなんかも将来的には出したいですし、日本だけじゃなくて他の国の監督に取ってもらったりね。この企画はいろんな方向に広げていきたいと思っています。
 

執筆者

寺島万里子

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