江國香織×辻仁成による世紀のベストセラー2冊を原作とし、そのその切なく胸に迫るストーリーを的確に映像化し、昨秋の公開時には記録的な大ヒットを記録した『冷静と情熱のあいだ』が6月にビデオ&DVD化される。特に19日発売のDVD版は、コメンタリー、メイキング等を収録した<Rosso>と、さらにコンテンツを充実させた2枚組限定版<Blu>の2ヴァージョンでの発売となり、作品をより深く楽しむための絶好のアイテムと言えそうだ。
 本DVDのコメンタリー収録が4月某日、都内のスタジオにて行われた。参加されたのは芽美役の篠原涼子さんと、本作が劇場用長編デビュー作となった中江功監督のお二人。収録前にお二人からうかがった、本作について、そしてDVDで一際映える美しい映像のポイント等を紹介しよう。
(インタビュー・撮影:飯塚克味)

$navy ☆DVD『冷静と情熱のあいだ』は、<Rosso>(税抜3,900)、期間限定生産版<Blu>(税抜4,700)の2商品で、2002年6月19日(水)リリース予定!(発売:フジテレビジョン・角川書店/販売:ポニー・キャニオン)$









Q.秋公開というヒット作が出にくい時期に、大ヒットを記録しましたがその要因はどういった部分にあると思いますか?
中江功監督——宣伝ですね。TVも噛んでましたので、かなりCMもうちましたし宣伝番組もあったので、かなり影響したと思います。
篠原涼子さん——でも宣伝してても見ないのってありますよね。私は映っているものとか雰囲気が興味を惹くから、自分が出ていなくても見に行ったかも。作品にカラーがありますよね。ほっとする部分もあるし…。
中江監督——あとベストセラーになった原作ということの期待感ですよね。読んで無くてもタイトルだけは知っていて、映像ではどうかな…という期待もあったと思います。

Q.映画は女性側と男性側それぞれの支店で描いた2冊の原作を纏められていますが、そのポイント、ご苦労された点を教えてください。
中江監督——取材で必ず聞かれることなんですが、二つを並べるには当然長すぎるし視点が違う話なので、更にそれを一つにまとめて2時間にするという構成が大変でした。エピソードの取捨選択とか、どう人物が不時着するかという、そこを絞っていくのが大変な作業でしたし、(男女)どっちから入るか、どうするかという脚本作りが一番大変でした。

Q.主人公それぞれのパートナーの描写に対するバランスがいいですよね。
中江監督——それぞれのパートナーをクローズアップすることもできたのですが、実際はかなり削って押さえました。メインのあおいと順正に目線が集中しないといけないので、それぞれのキャラの今を見せる為にはパートナーの環境も必要で、かといって添え物になってはいけない…バランスは難しかった。TVドラマだと(脇役が)もっとクローズアップされたり、劇的に別れたり、更にそれぞれにもう一シーンあったりしますが、あえてそこは削りました。

Q.篠原さんは芽美をどういうキャラとして受け止められましたか?
篠原さん——そうですね、可愛そうな人…。すごい共感したんですね。私はあおいよりも芽美派だと思います。一般の女の子も芽美に共感できると思ったんで心強かったです。本自体は読んだ時にグッと来たんで、本位も助けられたと思います。原作は『Rosso』の方が共感しました。

Q.一緒に出演された竹野内豊さん、ケリー・チャンさんについてお聞かせください。
篠原さん——二人とも自分とは全く違うものを持っているから、勉強になりました。ケリー・チャンには同性としての魅力を感じるので、そうしたものを盗めればいいなあと思って見ていました。












Q.中江監督はキャスティングに関していかがですか
中江監督——竹野内の順正はピッタリでしたね。ケリーのあおいは原作よりも強く感じられました。原作では線が細く、神経質っぽいはずっです。でも組み合わせは良かったと思うし、TVでは見られないカップリングなのでその点もよかった。椎名桔平、ユースケ・サンタマリア、篠原なんかもみんな自分で声をかけたので、現場はやりやすかったし、決めたとおりになったので。あと、イタリア人キャストもむこうでオーディションをやって選びました。キャストについては申し分ないです。ハズレがいないくらいといいたい。

Q.イタリアの撮影がひじょうに美しかったですが、撮影のポイントなどお話ください。
中江監督——順正が自転車で走っている風景なんか切り取っても、本当にキレイな絵になっていますし、ドームの絵なんかも決まっていて、絵ハガキポイントというのがあるんです。本当はそこからは撮りたくなかったんですが、やっぱりそこしかないんですね。『ハンニバル』もそこから撮っていて。だったら象徴的な画なのでストレートに撮りました。
そのかわり、他の実景なんかでは、ただ画を重ねると『世界遺産の旅』とか観光モノになってしまうので、完全に彼がそこに住んでいるということを表す為に、自転車で走ったり歩くということに絡めたりしました。

Q.空間の切り取り方に拘りが感じられて。
中江監督——撮影監督が、非常に広い画を大事にする人だったので、広い画はトコトン広く。切り取りについてはやはりカメラマンの腕ですね。大胆に広い画から入って、寄る時は寄る。事前に打ち合わせしていたし、実際にレンズも色々変えてみて、最終的にコレ!としたサイズもありました。
僕は1本目の映画ですが、カメラマンには色々相談に乗ってもらってよかったと思います。

Q.ズームレンズの使い方も印象的でしたね。
中江監督——自分は長いレンズを使って奥をボケさせる画があ好きなんですね。でもそうした画を重ねると、ワイドを使った時は画が浮いてしまうんです。だから単球のレンズを使って画のバランスもとるよう意識しました。

Q.音声は、DVDの方も2.0chと5.1chドルビーサラウンド(+本インタビュー後に収録されたコメンタリー)収録ですが、音の聞きどころは?
中江監督——ちゃんとしたスピーカーできけばすぐわかりますが、東京とフィレンツェでは街のノイズも違うし、音楽も70人ほどのフル・オーケストラなので、可能な限り収録時に近づけたので厚い弦の音とかも聞いてもらいたいですね。

Q.最後にDVDで作品を観られる人にメッセージをお願いします。
中江監督——いろいろなシーンの細かい音声解説をしているので、それを聞いてからまた見ると映画への理解が更に深まると思います。それを楽しんでいただきたいのと、TVのドラマの延長と思って劇場に行けなかった人も是非!ブラウン管を通してでも構いません。ちゃんとした映画になっています。
篠原さん——当たり前ですよ!改めて観る方も初めての方も、イタリアに行きたくなる、恋をしたくなる作品です。特典映像とかがすごく見応えがあるはずなので、是非見てください。見ないと…あっ!貴方の後ろにユーレイがいる!

執筆者

宮田晴夫

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