12月2日、休日らしく若者を中心に多くの人々で賑わう東京渋谷のセンター街は、突如戦慄に見舞われた。「でけぇ〜!」「こわぁ〜い(笑)」の声があがる群集の中現れたのは、身の丈は2メートルをはるかに超え、凶悪そのものの白眼を光らせた怪獣王ゴジラだった!ゴジラは、HMV渋谷の階段を一歩一歩踏み砕きながら進むと中央付近でセンター街方面を振り返ると、逃げ惑う人々に放射熱線(冷たかったですけど−笑−)を繰り返し放射、渋谷の街は何度目かの廃墟と化したのだった。
 さてこの騒動は、ご存知HMVジャパンが11月3日より全店で開催中の、HMV“WE LOVE GODZILLA”キャンペーンの特別イベントとしてHMV渋谷にて行われた、ゴジラ・ストリート・パフォーマンス&トークイベント@HMV渋谷の一幕。12月15日より公開となる最新作『ゴジラ モスラ キングギドラ大怪獣総攻撃』に登場したゴジラが、本編中に登場するバラゴン役で東宝特撮映画史上初の女性スーツ・アクターとして熱演した太田理愛さんにエスコートされ、センター街でパフォーマンスを見せたのだ。実際、今作のゴジラの禍々しく光る白眼は凶悪そのもので、道行く人々が笑いながらあげるの「怖い」の声には、驚異の響きも含まれている。
 この後、HMV渋谷4FDVDフロアのイベントスペースで、新作ゴジラを監督した金子修介監督を筆頭に出演された宇崎竜童さん、葛山信吾さん、螢雪次郎さん、太田理愛さんそしてプロデューサーの富山省吾さんらが来場し、公開が待たれる新作ゴジラに関してのトーク・イベントが開催された。











 会場となったイベント・スペースでは、用意された整理券も瞬く間になくなる程に多くのファンが詰めかけている。しかも、通常この種のイベントでよく見受けられる男性の大きなお友達以上に、若い女性のファンが多かったのがちょっと勝手が違うムードだ。まず舞台には、本日の司会進行を務めるフジTVの笠井伸輔アナウンサーが登場。笠井アナは『ゴジラ2000−ミレニアム−』にも出演している怪獣好き。それ故か、高揚したご様子でこの日のゲストを舞台に呼び上げる。勿論、ド迫力のゴジラも一緒だ。ただ、舞台の大半を占拠してしまうようなその迫力故、フォトセッションの後は退場したゴジラ。変わってキャンペーンの一環として展示されていたゴジラ(こちらも迫力だ)が姿を見せ、トークの内容を見守ることになった。金子修介監督によるゲストの方の紹介&それぞれの挨拶に続き、貴重で楽しい裏話が披露されるトークが始まった。
 平成『ガメラ』シリーズをはじめエンターテイメント系の秀作群を続々と発表している金子監督だが、実は既に10年前に富山省吾Pに宛てた年賀状でも、ゴジラを撮りたいというラブ・コールを送っていた念願の企画。「去年の5月に富山Pから、金子さんの心に残るゴジラはどんなオファーですかとオファーを受け、色々悩んでそこからとても怖くて悪くて強いゴジラにしようと思いました」(金子監督)。「91年の時は、次回作は大河原孝夫監督に決まってしまっていて、その後金子監督のガメラをはさみ、大袈裟に言えば10年、短く言っても3年前には金子監督に決めていました」(富山P)。
 本作はグアム島沖で出現したゴジラが日本を襲撃、その時ヤマトの守り神である“護国三聖獣”バラゴン、モスラ、キングギドラが戦いを挑むという物語。そして本作で、“護国三聖獣”と共闘するのは自衛隊ではなく防衛軍だ。この設定は、どのようなことで決まったのだろう?「今回は自衛隊の協力が難しそうだというのがあったので、平和憲法のもとで設立された防衛軍をでっちあげたんです。撮影に関して言えば、自衛隊に協力をお願いした時は、新兵器を出すと「そんなものは、自衛隊にありません」とか(笑)、今回箱根の場面で出てくる「民間機は引っ込んでろ」みたいに、クリーンなイメージを損なう台詞は駄目とかの制限もあるんですが、そのあたりは突破できましたね」(金子監督)
 そんな防衛軍の立花准将立花を演じているのが宇崎竜童さん。怪獣映画はこれが初出演しかも演る前は、最初のゴジラが怖かったので、「大嫌い(笑)」だったそうだ。軍人らしくない軍人をやったら面白いのではという金子監督の意向で、今回の出演依頼がきたとのことだが、「訳わかんなかったですよ、演じている時はゴジラ見えないから。でも繋がったのを観たら感動したね」と、初めての経験での戸惑いと充実感を語る。「村井(国夫)さんとか大和田(伸也)さんなんかは軍人らしくて、ああいう風にやろうとするけど中々できないんだよ。帽子のかぶり方とか、かなり言われましたね。やっぱりつっぱりなのかな(笑)」。ご本人はそうおっしゃるものの、新山千春演じる娘とのドラマや、ゴジラとの戦いに赴く姿には泣けたとの評判も高く、これから観る方は要チェックだ。
 そして、防衛軍からもう一人、小早川中佐を演じているのがこの日の女性ファンの多くのお目当てだった葛山信吾さん。物語の中でキーとなる『護国聖獣伝記』を研究していた、若きエリート軍人役だ。葛山さんの撮影期間は5日間だったそうだが、やはり無線越しなどで相手の姿が見えない演技に不安もあったとか。「大変な自体が起きているのに、怪獣が出てきてワクワクしているというのを楽しくやらせてもらいました。僕が怪獣に名前をつけましょうという場面で、大和田さんに「おまえ楽しそうだな」と言われる所は、自分の中では真剣なんだけど、あの突っ込みは嬉しかったです」。また、金子監督はあまり喋らないという印象があったそうだが、最初にこのシーンでちょっと力み過ぎたかな?と思ったところ、それを指摘して貰えたので、ちゃんと見ていてくれていると安心したそうだ。







 「金子監督の別の怪獣映画の別の役と同一人物だと勘違いする人がいるといけないと思いまして、僕の役は別の自殺志願の男です(笑)」と、怪獣映画ファンなら納得し吹き出してしまう挨拶をされたのは、金子監督との仕事は本作が6本目となる螢雪次郎さん。勿論、別の怪獣映画とは平成ガメラシリーズのことだ。今回キングギドラの発見者を演じているわけだが、この場面は地下に落ちていってというシチェーションで、ここでは上からの撮影であったため、頭しか映らないのはやだなということで、落下シーンで必至に上を見上げ、しっかり顔を映したそうだ。これも劇場で要チェック。「元々バラゴンが登場する場面では、警察署の中にいるだけだったんですが、僕はバラゴンに会いたいし外に飛び出してもおかしくないよねと金子監督に直訴し、1シーン・ゲットしたんです」との螢さんの言葉は、様々な日本映画で印象的な役に登場していることの裏付けだ。
 そしてこの日の紅一点、その小柄で華奢な姿にも関わらず、バラゴンの中に入りゴジラに言葉通りボコボコにされる様を熱演したのが、太田理愛さんだ。「一番しんどかったのは、息と暑さですね。バラゴンの中に入っちゃうと、時間の感覚も無くなっちゃって、自分ではどのくらい入っていたか判らないです。でも映画を観て、そのしんどかった部分はなくなりました」と明るく答えた太田さん、本作では金子監督の「4足怪獣が膝をつくのはおかしい」という拘りにも見事に応えている。「太股パンパンになっちゃって。最後の死んじゃうところとかよく観て欲しいです」という太田さんだが、実は焼津港へのゴジラの上陸場面での漁業組合事務所に素顔で出演されている。それをチェックした上で、箱根の決戦を見るとまた感慨が一入だぞ。
 他にも多岐な内容にわたるトークに続いて行われたQ&Aも、「太田さん火傷はしなかった?」「葛山さんご自身の制服姿をどう思いましたか」「次回作も金子監督やられるんですか?」「オープニング直後のハリウッド版を意識した台詞は監督の思い?」(「あれはみんな思ってるでしょう」と解説付きで納得の答え)などなど、ミーハーなものから濃いものまで、熱心な質疑が行われ、映画祭などで既に観た方の満足感と、これから観ることを楽しみにしている方の期待感が会場中に漲っているのが感じられた。最後には、リモコン・ゴジラなどゴジラ関連グッズの抽選会も行われ、1時間あまりのトーク・イベントは盛況のうちに幕を閉じた。

 なお、『ゴジラ モスラ キングギドラ大怪獣総攻撃』は、12月15日より全国東宝系劇場でロードショー公開。また、HMV“WE LOVE GODZILLA”キャンペーンも、12月15日までHMV全店で引き続き開催中で、HMV渋谷及びHMV横浜ではゴジラも展示中。この機会をお見逃しなく。

執筆者

宮田晴夫

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