人気アニメシリーズ『機動警察パトレイバー」。その制作スタッフの一人で、実写映画『アヴァロン』ほか数々の話題作を手掛けている押井守が、久しぶりに短編ギャグアニメ『ミニパト』を制作。その製作発表会が、渋谷Bunkamura B1ミュージアム「ミーティングサロン」内にある第14回東京国際映画祭 記者会見場で、10月30日に行われた。

作品の内容は、『パトレイバー』の世界観、人物設定をモチーフに、時に毒もある「押井ギャグ」が炸裂したもの。一見、人形劇風なアナログ映像ながら、実は、背景からキャラクターまで全て高度な3DCGを駆使して描いたという、革新的なフルデジタルアニメーションだ。

神山健治や西尾鉄也ら若手スタッフと、小倉宏昌、川井憲次らお馴染みのオリジナルスタッフが再集結。プロダクションI.Gがアニメーション制作を担当するこの劇場アニメ『ミニパト』は、第14回東京国際映画祭・シネマプリズム特別プログラムでイベント上映された。その後、2002年春公開予定の劇場版『WXIII 機動警察パトレイバー』の併映作として、一話分が上映される。(話数は未定)



■コメント
押井守(脚本)
『ミニパト』は、イラストを見た通りの作品です。ただ、従来のチビキャラが出てくる作品とはちょっと違います。僕個人の『パトレイバー』への愛憎を込めて好きなようにやらせてもらったので、キャラクターはかわいいけれど、内容はちょっとキツイかもしれません(笑)。

脚本は全部自分で書きスタッフも手近なところで集め、最小限の人数で作ったこの作品は、大変だったけれど痛快な仕事でした。

しばらくの間、重い作品ばかりだったのでバカをやりたくなったんですよ。音楽の川井くんとも楽しい仕事がしたかったですし、いつかギャグ作品を一緒にやろうと話していたので、約束を果たせてうれしいですね。

この作品は難しく考えることはないです。バカで笑えて…それでいて、絵は全部3DCGと一見無駄なことをしています。全力投球じゃないと「バカ」はできませんからね(笑)。



神山健治(監督)
僕は、押井さんの作品が好きで、気がつけばこうして押井さんと一緒に監督としてしごとができたのがうれしいです。

作業はまず、人形劇風なシナリオで声を先に収録して、そこから3DCGを起こす作り方をしました。最初から手探り状態で作っていったので、話数が進むごとに慣れていって最終話の第3話では、みんなこの作り方に自信をもっていました(笑)。どんどん成熟していく過程を見ていくのも楽しいかもしれません。

制作作業は、今までのアニメの作り方とは違い人形劇を作る感じでした。大変でしたが、僕も『パトレイバー』が大好きなので、この作品にも『パトレイバー』への愛情を込め楽しみながら作った作品です。それが伝わればいいと思います。



西尾鉄也(キャラクターデザイン、作画)
この作品への関りは、この3人の中では僕が一番最初です。押井さんをスタッフに呼んだのは「誰か1人、オリジナルスタッフがいないとダメだろう」と思ったからで、押井さんは、最初は少し渋っていたようですけど作業が始まるとノッていて、こうして記者会見の壇上に上るまでになりました(笑)。

『人狼』もそうですが押井さんと仕事をすると、押井さんが少ししか仕事をしていなくても、表には『押井守』の名前が全面に出るので、今回はそれを逆手に取ろうと思いました。でも、音響プロデュースも担当したりと、押井さんは、今回の『ミニパト』の方が『人狼』のときより多く仕事をしていますね。

見どころは、今までみたことのないような作りの作品になっているところですね。まぁ「一発屋」みたいなノリの作品なので、「最新3DCGが…」とかそういう誇張したものではありません。見た後に「バカなものを作ったなぁ」という感じで楽しんでもらえればうれしいですね。

執筆者

TAISUKE SAITOU