「ここでもみすゞさんが見てくれている気がします」(五十嵐監督) 『みすゞ』初日舞台挨拶開催される!
演劇・TV等様々な分野での競作も話題となった幻の天才童謡詩人・金子みすゞの生涯を映画化した五十嵐匠監督の『みすゞ』が、10月27日に初日を迎えた。上映劇場のうち銀座シネ・ラ・セットは、朝早くからの上映にも関わらず、多くの立ち見も含む観客がつめかける盛況だ。初回上映終了後にはヒロインみすゞを演じた田中美里さん、その夫信爾役の寺島進さん、みすゞの弟雅輔役の加瀬亮さん、そして五十嵐監督が映画にすっかり満足気な観客の歓迎の中、舞台に立ち初日舞台挨拶を行った。
この日はノースリーブにパンツ姿という、現代的な服装で登場した田中美里さん。撮影中からすごく可愛がっていた作品というだけあって、初日を迎えての気持ちもひとしおの御様子。「沢山観るたびに印象が変わる映画だと思いますので、いろいろな方を誘って見に来てください」と挨拶した。
この作品は全編を、金子みすゞの故郷である、山口県でロケが行われた。みすゞの夫信爾を演じた寺島進さんは、半年前に行われたそのロケ地の素晴らしさを、役者冥利につきる素晴らしい経験だったと振り返って語ったのに続き「理屈とかそういうものではなくて、心の中に感じていただけたらいいなと思います」と挨拶した。
みすゞの弟雅輔役を演じた加瀬亮さんだが、五十嵐監督とは『地雷を踏んだらサヨウナラ』でも一緒に仕事をされている。今回初めて大きな役で参加された作品について「戸惑うこともありましたが、素晴らしいスタッフに恵まれてやりとおすことができました。寺島さんがおっしゃったように、それぞれの方が何かを感じていただければ嬉しいです」と語った。
これまでも、カメラマンの沢田教一、一ノ瀬泰造と実在の人物を題材に扱ってきた五十嵐監督。実在の人物の作品を撮影している時は、必ずその人たちが撮影現場で見ているような気がしてしょうがないそうだ。「今、ご覧になっていただいた作品の中で、金子文英堂は実際に金子みすゞさんが働いていた場所にセットを作りました。セットのそこここには暗闇があったんですが、そこから田中さんや出演者の方々、そして僕らスタッフをみすゞさんが最後まで見つけてくれているような感じがしていました。今は銀座のシネ・ラセットですが、この劇場でもみすゞさんが見ていてくれるような気がします。詩集のような映画が作りたくて、こういう形で見ていただきましたが観る方それぞれのみすゞさんがいると思います。これから皆さんは、銀座の雑踏の中に帰られていくわけですが、この映画の詩、みすゞさんの詩のワン・フレーズでもうかんでいただければ嬉しいと思います」。
最後はもう一度田中さんが、「こうして皆さんと出会えたのも、私がみすゞさんと出逢えたように何かの縁だと思っていますので、自分の気持ちで観て、何かを感じて持って帰っていただければ嬉しいと思います。有難うございました」と開場にメッセージを告げ舞台挨拶は終了した。
なお、『みすゞ』は銀座シネ・ラ・セット、池袋新文芸座、甲府グランパーク東宝8にてロードショー公開中。今後も、11月3日から横浜西口名画座など全国順次公開が予定されている。
執筆者
宮田晴夫